気が付けば寒波・・・。熊本のエイズ学会も世界エイズデーも過ぎてしまいましたね。気ぜわしい年の瀬です。掲載が少々、遅れてしまいましたが、TOP-HAT News の第135号(2019年11月)を紹介します。巻頭では『available in Japanese(日本語訳もあります)』ということで、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の報告書やHIV/エイズ関係の英文資料を日本語に訳して紹介するプロジェクトを取り上げました。地道な作業ですが、最近はさまざまな場所で知識や情報のUPDATE!の必要性が指摘されています。
UNAIDSからも「これは使えるぞ」という好感触と強調関係を獲得できたようなので、これからも少しずつ翻訳による文献紹介機能の充実をはかりたいと思います。
2019年秋の日本列島は、ラグビーのW杯で大いに沸きました。あまり予想しなかったことですが、ダイバーシティの観点から、HIV/エイズに関する理解を広げる重要な機会にもなりました。プライドハウス東京2019のトークセッションには、ラグビーのウェールズ元代表で英テレビ局ITVのラグビー解説者でもあるギャレス・トーマス氏が登場しました。こちらのセッション報告『ラグビーレジェンド、カミングアウトを語る』もぜひお読みください。
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第135号(2019年11月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに available in Japanese(日本語訳もあります)
2 セクシュアリティ、HIV・・・ラグビーレジェンド、カミングアウトを語る
4 『ヤローページ新宿2019』を無料配布
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1 はじめに available in Japanese(日本語訳もあります)
世界のHIV/エイズの流行について、現時点で最も信頼度の高いデータが得られるのはおそらく、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が毎年7月に発表する年次報告書でしょう。その最新版である『Global AIDS Update2019』について、UNAIDSは公式サイトに特集ページも設けています。
報告書全文のPDF版がダウンロードできるほか、インタビュー動画やソーシャルメディア用素材、関連スライド集なども掲載されています。まさに情報の宝庫と言えそうですが、残念なことにすべて英語です。国連は英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語が公用語とされており、中でも英語による情報量が圧倒的に多い。
したがって、国連機関の一つであるUNAIDSの資料が英語中心で、日本語にはめったにお目にかかれない。ま、それもしょうがないかと思いつつサイトを見ていくと、報告書の主要なメッセージをコンパクトにまとめた『Key Message』という資料のところには、欄外に小さく『This document is also available in Japanese (courtesy of API-Net)』という表示があります。『API-Netの好意により、日本語でも読めます』ということですね。
https://www.unaids.org/en/resources/documents/2019/2019-global-aids-update_key-messages
ご存じの方も多いとは思いますが、一応、説明しておきましょう。API-Net(エイズ予防情報ネット)は厚労省の委託を受け、公益財団法人エイズ予防財団が運営しているHIV/エイズ分野の啓発・情報サイトです。
UNAIDSのサイトでThis document is also available in Japaneseの部分をクリックするとAPI-Netに掲載されている日本語版にリンクするようになっています。
さらにAPI-Netには、キーメッセージ以外にもGlobal AIDS Update2019の特集ページから以下の3つのパワーポイント(PPT)スライド集が日本語に訳して掲載されています。
・Core epidemiology slides(主な流行推計スライド)
・Introduction and summary(イントロダクションとサマリーから)
・Community Engagement(コミュニティの関与)
国境を越えたウイルスの移動に対応するには、国境を越えた情報の共有が必要になる。このことはエイズの流行の初期から、ことあるごとに指摘されてきました。
それでも、言葉の壁が立ちはだかり、共有はなかなか進んでいません。研究者同士なら「英語の文献ぐらい、そのまま読めば」ということになるのかもしれませんが、本当に情報を必要としているのは誰なのかということを考えてみてください。英文で「そのまま読めば」と言って解決できる問題ではないでしょう。
ニーズへの対応は、そのニーズに気づいた人が動き始めなければ進みません。API-Net掲載の日本語版作成にはエイズ&ソサエティ研究会議のメンバーも協力し、UNAIDSとエイズ予防財団との信頼関係が少しずつ(本当に少しずつ)生まれてくる中で、いわばUNAIDS公認の啓発資材として利用できるところまでこぎつけたのです。ささやかなベスト・プラクティス事例と言えるかもしれません。
PPTスライド集の日本語版は、シンポジウムや講演会、啓発イベントなどでも活用できそうですね。エイズ予防財団に「使います」と、ひと声かけておけば、そっくりそのまま使うことも、その中の何枚かを部分使用することもできるということです。
エイズ予防財団への連絡および問い合わせはこちらで。
http://www.jfap.or.jp/prg/sendmail/SendMail.aspx
2 セクシュアリティ、HIV・・・ラグビーレジェンド、カミングアウトを語る
ラグビーのウェールズ元代表で英テレビ局ITVのラグビー解説者でもあるギャレス・トーマス氏が、ラグビーW杯開催中の10月31日(木)夜、東京・神宮前のプライドハウス東京2019でトークセッションに参加しました。
トーマス氏はウェールズ代表として100試合に出場し、主将も務めた名選手。現役時代の2009年に男性同性愛者としての自らのセクシュアリティについてカミングアウトし、その後も2011年までトッププレーヤーとしてプレーを続けていました。
また、2019年9月にはツィターでHIVに感染していることを公表し、HIVやセクシャリティに関するスティグマと闘うために、積極的に発言を続けています。今回はW杯のTVコメンテーターとして来日したということです。トークセッションの模様はエイズ&ソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログでご覧ください。
https://asajp.at.webry.info/201911/article_2.html
日本エイズ学会の松下修三理事長が10月23日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで『HIV感染症・エイズ-予防・治療の新時代-』をテーマに記者会見を行いました。日本エイズ学会が6月に発表した『HIV感染を理由とした就業差別の廃絶に向けた声明』に関する背景説明やHIV感染の予防と治療に関する最新情報などを包括的に報告しています。
会見の様子は、日本記者クラブの公式サイトでYoutubeの動画も含め、紹介されています。
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35512/report
4 『ヤローページ新宿2019』を無料配布
東京・新宿二丁目を中心にした新宿のタウン情報とHIV検査をはじめとする性の健康情報を組み合わせた冊子『ヤローページ新宿2019』がコミュニティセンターaktaや新宿二丁目界隈のバーで無料配布されています。
厚労省委託事業『同性愛者等向けコミュニティセンターを活用した広報等一式』によりヤローページとしては3年ぶりに発行。6ページにわたる新宿広域マップや二丁目のバーなどのお店情報、HIV/エイズに関する検査・相談情報、専門医へのインタビューなど盛りだくさんな内容の40ページです。詳細はaktaの公式サイトをご覧ください。