「小さなこと」の大きな意味(追加あり)

(追加)ロイターの日本語サイトにはこんな記事もありました。 

jp.reuters.com

「さまざまな意味で、スコットランド戦での日本の勝利は単にラグビーのためだけでなく、ひとつの国のためでもあった」「人間の温かさやファミリー精神が表れていた。この大会の中心にいる日本の人々は、各国のチームやファンを両手を広げて歓迎してくれた」(ビル・ボーモント会長)

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 ラグビーのワールドカップは19日(土)から決勝トーナメントが始まる。予選プールAを首位通過した日本代表は20日(日)に南アフリカ代表と対戦することになる。

 これからますます盛り上がろうという時期なのだが、どうも末端のラグビーファンに過ぎない老人は予選プール・ロスとでもいうのか、秋風がすっと吹き抜けていくような一抹の寂しさもついつい感じてしまう。

 9月20日(金)の開幕戦から10月13日(日)までの24日間、週のうち4日か5日は予選プールA~Dのいずれかの試合が、日本のどこかで行われ、その多くがテレビ中継もされた。TV画面を通してであっても、こんなに濃密に世界の最高レベルの試合を見ることができる機会は、少なくとも日本ではなかったのではないか。

 しかも、新聞の報道やテレビのニュース、そしてバラエティ番組でも各局がこぞってラグビーを取り上げた。日本代表の予想もしなかった(失礼!)快進撃のおかげでもあるが、体感的にいえば、試合は毎日、行われていたような印象である。台風19号で被災された方には申し訳ないが、それは末端のラグビーファンにとっては祝祭の日々のようでもあった。

 もちろん、W杯も台風の影響を大きく受けた。だが、それに屈することなく、むしろ逆に被災された方たちを勇気づけるような場面がラグビーを通じて伝えらている。

 予選プール最後の試合が中止になり、無念の涙を飲むチームもあった。それでも、釜石では中止当日の13日、カナダ代表の選手たちがボランティアで泥や砂を撤去する作業を手伝っている。

www.huffingtonpost.jp

 

 同じ13日の夜には、横浜国際競技場日産スタジアム)で日本対スコットランド戦が行われた。中止か実施か、判断は当日の昼前まで決まらなかった。実施できたのは「管理スタッフや警備員、ビールの売り子ら総勢約2000人が会場復旧に向け、尽力した」(日刊スポーツ)結果である。 

www.nikkansports.com

 

 『多くのスタッフが午前6時過ぎから仕事前に土砂の清掃や、大型スポンジを使って通路の雨水を吸うなどの作業をスムーズに行った』

 スコットランドの猛追をしのぎ、決勝トーナメント進出を決めた激闘の後、日本代表のマイケル・リーチ主将は『この試合を実現するために多くの方が努力してくれたことは分かっている。みんなに「ありがとう」』と語っている。

 ロックのトンプソン・ルーク選手は「ラグビーは小さいこと」と語り、被災した人たちに思いをはせた。

 「亡くなった人や、家にダメージを受けた人のためにも頑張る」

 失意の中でこの言葉に励まされた被災地の人たちも少なくなかったのではないか。試合をやめるのではなく、実施に最善を尽くし、勇気あるプレーで人の心を動かす。スポーツの力が極限の状況で示された試合だったのではないかと、いま改めて思う。

 プール戦が終わり、試合のない日が続くと、ファンとしてはどこかに虚脱感が漂う。だが、日本代表の選手たちは、そして、他の強豪7チームの選手たちも、いまはそんなロスとは無縁だろう。次の試合にどのようなゲームプランで臨み、そのためにどんな準備をするか。その一点に集中してトレーニングを重ねているに違いない。