コンビネーション予防と3世代HIVアウトリーチ エイズと社会ウェブ版415

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)スライド集の続きです。『HIV予防のコンビネーションアプローチ』には22枚のスライドが紹介されています。

 https://www.unaids.org/en/resources/documents/2019/GAUD2019_prevention

 赤線で『This document is also available in Japanese』と表示され、その部分をクリックするとAPI-Netの日本語版にリンクします。

 

 スライド集に取り上げられているコンビネーションアプローチの「予防防サービス」は、コンドームと潤滑剤、コンドーム使用と安全なセックスに関する相談、性感染症の検査、注射器・注射針の滅菌、メサドン治療、PrEP、自発的男性器包皮切除といったところでしょうか。ほかにも行動変容のための働きかけとか、情報や知識の提供とか、性教育とか、感染の拡大要因となる法律の撤廃とか、いろいろありそうですが、スライド集では、measurableといいますか、なんといいましょうか・・・即物的な手段に焦点が当てられているようです。

 また、情報の普及手段として『3世代のHIVアウトリーチを結集』という1枚もあります。

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3.0:オンライン・マーケティングと広告によるソーシャルプロファイリング

2.0:バーチャルスポットやソーシャルネットワークによるアウトリーチ

1.0:実際の場所やソーシャルネットワークによる直接のコミュニケーション

 

下から上へ、階層的な並べ方をされると、世の中もう1.0じゃないでしょう、3.0の時代ですよ・・・といわれているような感じがしないこともありません。実際にそういわんばかりの態度に接することもよくあります。

 ただし、ここで重要なのは「結集」です。どっちが上で、どっちが下かという問題ではありません。個人的には世の中のIT化の流れにひそかに反感を持っていないこともない私のようなものには、3.0などは相当、危うい印象も受けますが、使えるものは使って、効果の最大化をはかろうということなんでしょうね。

 スライド右側の上下の矢印をみると、1.0から3.0に移行するにしたがって、伝わる範囲は広がりますが、変化を促す力は直接のコミュニケーションの方が大きいということで、ここでもコンビネーションが重視されています。

 

 参考までに、Global AIDS Update 2019から、この図が載っている39ページの文章も日本語に訳してみました(サイバースペース関連の記述は39ページから43ページまで延々と続いていますが、翻訳は最初のページだけにとどめておきました。悪しからず)。

 

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プログラムをサイバースペースに(GAU2019 P39から)

https://www.unaids.org/en/resources/documents/2019/2019-global-AIDS-update

 

 HIV感染の高いリスクにさらされている人が、健康を保つために必要な情報とサービスを得られなければ、エイズ流行の終結は考えられません。

 基本的な情報を得る場合でも、こうしたサービスは通常、対面で行うことが前提になっています。しかし、キーポピュレーションに属する人の場合、会うことで嘲笑されたり、迫害されたり、場合によっては逮捕されたりするリスクがあるので、サービス利用を避ける傾向があります。若者に対しては、多くの国で、性と生殖に関する健康サービスおよびHIV予防と検査のサービスを利用する際の承認年齢規制があります。これらの難しい状況に対応したアウトリーチ・サービスもあることはありますが、サービスを必要とするすべての人に行きわたるだけの規模を確保できることはめったにありません。

 サイバースペース上の高度化したソーシャルメディア・プラットフォームを活用することで、こうした障害を回避する機会も次第に増えています。何百万、何千万もの人が毎日、オンラインに接続し、集まっています。社会的なつながりを持ち、情報を探し、経験や意見を共有し、セクシャルパートナーとも出会っているのです。

 2019年前半の段階では、世界の人口の約57%がインターネットを利用しています。ソーシャルメディアのユーザーは約35万人で、そのほとんどすべての人が、携帯電話でソーシャルメディアにアクセスしています。インターネットのヘビーユーザーが多いのは東南アジアで、インドネシア、フィリピン、タイでは2018年現在、1日平均8時間以上インターネットに接続しています。

  

 

TAKING HIV PROGRAMMES INTO CYBERSPACE

 

Ending the AIDS epidemic is unthinkable if people who are at high risk of HIV infection are not getting the information and services they need to stay healthy. 

Those services typically involve face-to-face contact, even for acquiring basic information. But when such encounters carry a risk of ridicule, harassment or even arrest, people belonging to key populations tend to avoid them. Young people in many countries face age-of-consent restrictions on services for sexual and reproductive health and HIV prevention and testing. Outreach services can navigate these difficult environments, but they are rarely provided at the scale required to reach everyone in need. 

Increasingly sophisticated social media platforms offer new opportunities to use cyberspace to sidestep some of those hindrances. Many hundreds of millions of people connect and congregate online each day—socializing, searching for information, sharing experiences and opinions, and meeting sexual partners.

 In early 2019, about 57% of the global population was connected to the Internet, and there were approximately 3.5 billion social media users, almost all of whom accessed social media on their mobile phones (1–3). Some of the heaviest Internet users are in South-East Asia: people in Indonesia, the Philippines and Thailand spent an average of more than eight hours a day online in 2018 (2).