『スティグマの本質に迫る』 エイズと社会ウェブ版375

 国際エイズ学会(IAS)の年次書簡2019『GETTING TO THE HEART OF STIGMA』の日本語仮訳を作成しました。API-Net(エイズ予防情報ネット)にPDF版が掲載されています。
 http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20190308

 日本語のタイトルは『スティグマの本質に迫る』です。

 参考までに紹介させていただくと、昨年(2018年)の書簡は『エイズは(いまなお)政治的課題である』でした。こちらもAPI-Netで日本語仮訳が読めます。

 2019年のテーマはその『政治性』を踏まえ、課題をより明確化させるためにスティグマに焦点を当てたということなんでしょうね、きっと。
 英語の原文がIASの公式サイトに発表されたのはバレンタインデーの2月14日でした。チョコではなく、『スティグマがある限り「エイズの終わり」は訪れません』というメッセージをしっかり手渡したいということでしょうか。テイストはかなりビター系です。こちらも紹介しておきましょう。写真も豊富に使われているので日本語仮訳と照合しながらご覧ください。 

www.iasociety.org

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 日本ではまだ、スティグマという言葉の知名度はあまり高くありません。国際的にはどうでしょうか。書簡では『HIVの流行が始まったころから、スティグマと差別は混同して受け止められる傾向がありました。しかし、この両者は互いに関係してはいるものの、同じものではありません』として、スティグマとは何か、誰がその対象とされるのかといったことから説明しています。
 締めくくりの『最も基本的な人としての価値すら軽視されようとしているかに見えるこの危険に満ちた時期において、HIVコミュニティは世界に異なる道筋を示さなければならないのです』という文章は、米国のトランプ政権の存在をかなり意識しているのでしょうか。危険に満ちているのは何もトランプさんだけじゃないけれど、なにかと目立つタイプの人ではあります。
 2020年には、東京オリンピックパラリンピックの直前にサンフランシスコ・オークランドで第23回国際エイズ会議(AIDS2020)の開催が予定されています。米国で共和党民主党の党大会が開かれ、それぞれの正副大統領候補が固まるのもこの時期です。AIDS2020は常にも増して波乱含み、かつ興味深い会議になりそうですね。
 どさくさに紛れて宣伝するようで恐縮ですが、日本エイズ学会誌(2019年2月号)に『HIVとオリンピック・パラリンピック』という一文を掲載していただきました。ネットで読めるようになるのはもう少し先のようですが、紙の学会誌を手にする機会がございましたら、ぜひご一読いただき、感想でもお聞かせ願えれば幸いです。