HIVと加齢 日本の場合は エイズと社会ウェブ版364

 アメリカのHIV陽性者の高齢化について昨日、お伝えしましたが、日本はどんな状況なのでしょうか。推測の助けになるようなデータがないかと思って探してみたら、ありました。平成292017)年エイズ発生動向年報(11日~1231日)の「資料」として、《表6-1 年齢階級別年次推移(HIV感染者、エイズ患者)》が、API-Netエイズ情報ネット)に掲載されています。

api-net.jfap.or.jp

 毎年のエイズ動向委員会報告を5歳刻みの年齢階層別に分類した一覧表です。あくまで新規のHIV感染者、エイズ患者報告の集計ですから、そのものずばりというわけにはいきませんが、直近の2017年集計、および各年の報告をすべて足した合計数が参考になりそうです。

 以下は統計には全くの素人であるおじさんが、数字を見て漠然と思い描いた感想に過ぎないので、厳密な分析には程遠いものです。この点はお断りしておかなければなりませんが、大まかな感じはつかめるかもしれません。

 まず2017年の年間報告数を見てみましょう。新規HIV感染者報告とエイズ患者報告に分かれています。

 新規HIV感染者報告は、年間の総数が976件、このうち50歳以上は116件(11.9%)です。エイズ患者報告の方は、総数が413件、50歳以上は113件(27.4%)。

 したがって、新規HIV感染者報告とエイズ患者報告の合計は1389件、うち50歳以上が229件(16.5%)を占めていることになります。

 米疾病管理予防センター(CDC)のHIVサーベイランス報告では2016年の新規感染報告に占める50歳以上の割合は17%でした。もちろん流行の程度も社会的条件も異なるので、同列には論じられませんが、比率はほぼ同じです。

 次にこれまでの動向委員会報告の合計を見てみます。

 HIV感染者報告は19896件です。このうち50歳以上は2390件(12%)。エイズ患者報告の方は総数が8936件で、50歳以上は2548件(28.5%)でした。

 つまり、新規HIV感染者報告とエイズ患者報告の累計は28832件。このうち50歳以上は4938件(17,1%)となります。2017年の年間報告の割合とあまり変わりません。少し乱暴な推測かも知れませんが、新しくHIVに感染していることが分かる人のうち50歳以上が占める割合は、以前からずっと十数%で大きくは変わっていないということなのかもしれません。

 米国ではHIV陽性者全体のうち50歳以上が47%(ほぼ半数)を占めていました。

 一方、日本のデータはあくまでそれぞれの年に感染が分かった人の数なので、数字が示す意味合いは大きく異なります。治療の進歩により、HIVに感染してから長く生きていける人が増えているからです。例えば、10年前に40代でHIV感染が判明した人の多くはいまも生活を続け、社会的にも活躍しています。15年前に30代半ばで感染が判明した人も、あるいは20年前に30歳で感染した人も恐らくそうでしょう。この人たちもみな現在は50歳以上になっています。

 数字の裏付けはまったくなしの個人的な感想ですが、私がかつて若いHIV陽性者として取材でお話をうかがったり、たまたま知り合ったりした人たちも、いまは50代、あるいはもうすぐ50歳という人が多くなっています。

 したがって、体感的には、日本もまた、HIV陽性者の半数近くは50歳以上ということもあり得るのではないか、そんな印象も受けます。流行動向の分析にあたる専門家にも、詳細な検討をお願いしたいところですね。