泣いても、笑っても、くしゃみをして鼻水を垂らしても(きたないね)、2018年は残すところあと1日です。HIV/エイズ分野はどうだったのか、改めてこの1年を振り返ってみましょう。
お正月も寒さが厳しそうだけど、風邪ひくなよ! えっ、もうひいている? 暖かくしてよいお年を。
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第124号(2018年12月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 2018年を振り返る
2 この1年の主な出来事
3 『日本 UNAIDSの大切なパートナー』
4 助成対象事業を公募 エイズ予防財団
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1 はじめに 2018年を振り返る
残念ながら良い年とは言えなかった2018年もいよいよ押し迫ってきました。HIV/エイズ分野はどうだったのか、改めてこの1年を振り返ってみましょう。
感染症法に基づくエイズ予防指針が1月に改定されました。最初の指針は感染症法施行から半年後の1999年秋に告示され、2006、2012、そして今回の2018年と3回にわたる改定の際に議論が重ねられてきたこともあって、書かれていることはほぼ妥当な内容との評価があります。ただし、改定された指針に対しては毎回、施策実施へのモニタリングや評価が十分になされず、「絵に描いたモチに終わってしまった感がぬぐえない」という反省の声も聞かれてきました。
やるべきことは分かっているけれど、それをどう実行していくか。今回もまた改めてその課題に挑むことになります。
3月には内閣府の「HIV感染症・エイズに関する世論調査」の結果が公表されました。「エイズは死に至る病である」と思っている人が52.1%と半数以上を占めています。適切な治療の継続により他の人への感染のリスクがほぼなくなることを知っている人は3分の1でした。治療は進歩しても、国民の意識ないしは知識レベルには、それを反映した変化がなかなか見られません。こうした知識や認識のギャップをどう解消していくのか。依然としてこの点が大きな課題であることを調査結果は示しています。
7月にはオランダのアムステルダムで第22回国際エイズ会議(AIDS2018)が開かれました。この会議に向けて、国際エイズ学会(IAS)は4月に『AIDS IS (STILL) POLITICAL』(エイズはいまなお政治課題である)という年次書簡を公式サイトに掲載しました。7月には国連合同エイズ計画(UNAIDS)が『Miles To Go』(道はまだ遠い)という報告書を発表しています。
国際社会は「公衆衛生上の脅威としてのエイズ」の流行を2030年までに終結させることを共通目標にしていますが、その実現はそう簡単にはいきませんよということを世界が改めて認識しなおした年ということもできそうです。
世界のHIV/エイズ対策は抗レトロウイルス治療の普及に力を入れてきた結果、エイズ関連の死者数の減少には大きな成果を上げています。UNAIDSの最新推計では、2017年の死者数は100万人を下回りました。もちろん大変な数の人が亡くなっているということは依然、厳しく受け止める必要がありますが、それでも死者数は最も多かった時期に比べれば半数以下に減っています。
しかし、HIVの新規感染の方は治療の普及にも関わらず、期待通りに減少しているわけではなく、このままでは目標の達成は困難である。IASもUNAIDSもこうした現状認識を明確に示し、対策の一層の強化を呼びかけています。
8月の終わりには厚生労働省のエイズ動向委員会が2017年の国内における新規HIV感染者・エイズ患者報告の確定値を発表しました。
感染者・患者報告の合計が1400件を下回ったのは11年ぶりのことです。新規HIV感染者報告数も976件となり、11年ぶりで1000件を下回りました。
あくまで報告ベースの数字であることを踏まえつつも、日本のHIV/エイズの流行が横ばい状態からやや減少へと移行しつつあるのではないか。そんな期待を抱かせる推移ではあります。ただし、まだ誤差の範囲の増減とする見方もあります。今年の発生動向も含め、さらに詳細な分析が必要でしょう。
12月に大阪で開かれた第32回日本エイズ学会学術集会・総会では、U=Uをテーマにしたシンポジウムが注目され、会場は立ち見が出るほどでした。
最初のUはUndetectable(体内のHIV量が検査で検出できないほど少ないこと) 、2番目のUはUntransmittable(他の人に感染しないこと)の略です。
したがって、U=Uを訳すと「検出限界値以下=感染しない」、つまり抗レトロウイルス治療を受け、血液中のHIV量がウイルス量検査で検出できないほど低い状態を維持していれば、HIV陽性者から他の人に性行為で感染することはないというメッセージです。
U=Uについては、HIV陽性者に対するスティグマや差別をなくす有効なメッセージとして国際的に広くキャンペーンが展開されており、日本でも2019年にはU=Uキャンペーンをめぐる議論や活動が活発化しそうです。期待される効果や課題についてはTOP-HAT Newsでも今後、活動の推移を見ながら報告していきたいと考えています。
2 この1年の主な出来事
【1月】
18日 エイズ予防指針改正
【2月】
国内でPrEP研究スタート
https://asajp.at.webry.info/201803/article_1.html
HIV Check再始動
https://asajp.at.webry.info/201804/article_1.html
21日 UNAIDSのミシェル・シディベ事務局長が、ねぎし内科診療所を訪問
https://asajp.at.webry.info/201804/article_1.html
【3月】
12日 内閣府が「HIV感染症・エイズに関する世論調査」の結果を発表
https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/h29/h29-hiv.pdf
https://asajp.at.webry.info/201804/article_1.html
国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨エイズ先端医療開発センター長がエイズ動向委員会の委員長に
http://miyatak.hatenablog.com/entry/2018/03/16/215315
【4月】
国際エイズ学会(IAS)年次書簡『エイズはいまなお政治課題である』
http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20180510
【5月】
WHOの新事務局長にエチオピアのテドロス元外相
https://asajp.at.webry.info/201705/article_2.html
【6月】
5日 米国政府のHIV/エイズ啓発サイトAIDS.govがHIV.govに名称変更
https://asajp.at.webry.info/201706/article_3.html
【7月】
23~27日 アムステルダムで第22回国際エイズ会議、UNAIDSが報告書で『道はまだ遠い』と警告
https://asajp.at.webry.info/201807/article_4.html
2018年世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマが『UPDATE! エイズ治療のこと HIV検査のこと』に決定
【8月】
エイズ動向委員会が2017年の年間報告確定値を発表、 11年ぶりに1400件を下回る
http://api-net.jfap.or.jp/status/index.html
【9月】
26日 ニューヨークで国連総会結核ハイレベル会合
https://asajp.at.webry.info/201809/article_5.html
30日、第8回AIDS文化フォーラムin京都、開催は2日間の予定だったが、台風24号の影響により2日目は中止。
【10月】
AAAが2020年7月で活動終了へ
【11月】
自らの感染を知っているHIV陽性者は75% UNAIDSが報告書
https://asajp.at.webry.info/201811/article_3.html
【12月】
U=Uを議論 大阪で第32回日本エイズ学会学術集会・総会
ameblo.jp
3 『日本 UNAIDSの大切なパートナー』
国連合同エイズ計画(UNAIDS)が日本向けファクトシート『JAPAN A valued Partner of UNAIDS(日本 UNAIDSの大切なパートナー)』を作成しました。公益財団法人エイズ予防財団が翻訳に協力し、日本語版も用意されています。
HIV/エイズ総合情報サイト Community Action on AIDS(コミュニティアクション)に紹介記事と日本語PDF版が掲載されています。
http://www.ca-aids.jp/features/218_partner.html
4 助成対象事業を公募 エイズ予防財団
公益財団法人エイズ予防財団が来年度の助成対象事業を公募しています。申請書の提出締め切りは平成31年1月21日(月)17時。助成対象は次の2分野です。
(2)エイズ予防に関する啓発普及事業
公募要項はエイズ予防財団の公式サイトでご覧ください。
http://www.jfap.or.jp/business/02_josei.html