第1回UHC国際デーに寄せて エイズと社会ウェブ版359

 1212日は第1回ユニバーサル・ヘルス・カバレッジUHC)国際デーでした。20171212日に国連総会がこの日をUHC国際デーにするという決議を採択し、1年の準備期間を経て初の記念日を迎えたということです。

 国連の公式サイトには特設ページがあります。英文ですが、せっかくの機会なので、参考までに紹介しておきましょう。 

International Universal Health Coverage Day 12 December

 第1回のテーマは"Unite for Universal Health Coverage: Now is the Time for Collective Action."  日本語に訳すと「結束してユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現しよう:今こそ、力をあわせて行動する時だ」といったあたりでしょうか。もうちょっと直截にメッセージが伝わるような訳が用意されているかもしれませんね。ご存知の方がいらしたら教えてください。

 

 国連広報センターのサイトには、アントニオ・グテーレス事務総長のUHC国際デーに寄せるメッセージの日本語訳が掲載されています。『私たちがこの日を記念するのは、健康が基本的人権であり、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の達成に欠かせないからです』ということです。全文はこちらでご覧ください。

 

www.unic.or.jp

『すべての人が必要な医療を受けられる』というのは当然のことのようでいて、じゃあ、具体的にどうすればそれが実現できるのかというと、そう簡単なことではありません。

 

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 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトにもミシェル・シディベ事務局長のメッセージがプレス声明として掲載されています。  

www.unaids.org

 たぶんこちらは誰も日本語に訳す人がいないでしょうから、自分で仮訳を作りました。

 『世界の不平等はむしろ増しています。1%の富裕層が、世界の富の半分を独占しているのです。最貧国の平均寿命は、最も豊かな国々よりはるかに低く、貧困のために長く生きられず、未来も失われています。不平等は各国間だけでなく、一つ国のコミュニティの間にもあり、弱い立場に置かれていたり、排除されたり、偏見にさらされたりしている人たちが置き去りにされています』

 最近のニュースを見ていると、さまざまな分野のさまざまな出来事の中で、優秀な経営者は法外な報酬を得て当然みたいな指摘がときどき登場します。どうしてこういう世の中になっちゃったんだろうね・・・と貧しいおじさんは若干のひがみも込めて嘆いたりしたくなる日々ですが、本当に、どうしてこういうことになっちゃったんだろうね。

 今年の121日は世界エイズデー30周年でした。そして1212日が第1UHC国際デーということになると、どうしてもこの30年のエイズ対策の苦闘と成果に焦点を当てたくなります。UNAIDSの皆さんにも同様の気持ちがあるのでしょうね。プレス声明は次のように述べています。

 『世界的なHIVへの対応は、そのための方法を示してきました。しっかりした政治のリーダーシップ、コミュニティの関与、科学的なエビデンスを踏まえた対応によって、世界の流行の軌道を変えることができるのです。HIVの予防と治療のターゲットを締め切り通りに達成することが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成にも大きく貢献することになります。そして、その両方が持続可能な開発目標の実現に向けても大きな成果をもたらすことになります』

 HIV/エイズ対策の経験があったからこそ、UHCが実現すべき目標として語られるようになり、ひいてはSDGsの成否にも関わってくる。少々、強引な論理展開のようにも見えます。ま、SDGsUHCに乗り遅れてしまったら、HIV/エイズ対策も立ち行かない。背に腹はかえられないという事情も一部にはあるのでしょうね。

ただし、エイズ取材を30年以上続けてきた感想からいうと、この辺りは共感できます。苦し紛れの印象にならないように、もう少し、説得力を持って、しかもわかりやすく説明していただけると嬉しいですね。

以下、シディベ事務局長のプレス声明日本語仮訳です。

 

 

 

UNAIDSプレス声明

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジUHC)国際デーに寄せるメッセージ

 

 健康はすべての人にかかわる問題です。世界はアルマアタ宣言ですべての人に健康をと呼びかけて以来、40年以上にわたって、質の高い保健医療サービスへのアクセスを手ごろな価格で確保できるようにするため闘ってきました。

 長い道のりを経て、保健医療へのアクセス改善をはかり、質を高めてきた結果、世界の平均寿命は62歳から72歳にのびています。それでも平等な成果とはいえません。今日でも、世界人口の半数は、必要不可欠な保健医療サービスを十分に得られずにいます。費用が負担できなかったり、不適切だったり、特定の集団には利用できないようになっていたり、そもそも利用できない状態だったりするためです。

 世界の不平等はむしろ増しています。1%の富裕層が、世界の富の半分を独占しているのです。最貧国の平均寿命は、最も豊かな国々よりはるかに低く、貧困のために長く生きられず、未来も失われています。不平等は各国間だけでなく、一つ国のコミュニティの間にもあり、弱い立場に置かれていたり、排除されたり、偏見にさらされたりしている人たちが置き去りにされています。

 真にユニバーサルという意味でのユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するには、平等で、包摂性が高く、社会正義を実現できるような成果が必要です。人を中心に考え、人権に基づくアプローチとコミュニティ主導のサービス提供が必要だということです。同時に法改正や政策変更、スティグマと差別、ジェンダー不平等の解消など健康状態に大きな影響を及ぼす社会的要因に取り組むことも必要です。

 世界的なHIVへの対応は、そのための方法を示してきました。しっかりした政治のリーダーシップ、コミュニティの関与、科学的なエビデンスを踏まえた対応によって、世界の流行の軌道を変えることができるのです。HIVの予防と治療のターゲットを締め切り通りに達成することが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成にも大きく貢献することになります。そして、その両方が持続可能な開発目標の実現に向けても大きな成果をもたらすことになります。

 今年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジUHC)国際デーのテーマ『結束してユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現しよう:今こそ、力をあわせて行動する時だ』を踏まえ、すべての人にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ運動に加わることを呼びかけます。結束があれば、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジをすべての人に確保することは現実になるのです。

 20181212日 UNAIDS事務局長、ミシェル・シディベ

 

 

 

Message on the occasion of Universal Health Coverage Day

Health is everyone’s concern. The world has been striving for access to quality and affordable health services since the Declaration of Alma-Ata, which called for health for all more than 40 years ago.

We have come a long way since then—improvements in access to, and the quality of, health-care services have increased life expectancy globally from 62 to 72 years. Yet progress is far from equal. Today, more than half of the world’s population do not have full access to essential health services, because they are unaffordable, inadequate, inaccessible for certain groups or simply unavailable.

There is increasing inequity around the world, with the richest 1% of the population now owning half of the world’s wealth. Life expectancy in the poorest countries of the world is appreciably lower than in the wealthiest, and living in areas blighted by poverty can mean a shorter life span and a lost future. The disparity is observed between countries and between different communities within countries, with the most vulnerable, marginalized and stigmatized being left behind.

Making progress towards universal health coverage that is truly universal means making progress towards equity, inclusion and social justice. It means a people-centred, human rights-based approach and community-led service delivery, as well as a recognition of the need to address the social determinants of health, including necessary reforms of laws and policies and removing stigma and discrimination and gender inequity.

The global response to HIV has illustrated the critical measures—decisive political leadership and commitment, community engagement and a response informed by scientific evidence—that can change the course of a global epidemic.

Reaching time-bound HIV prevention and treatment targets will make an important contribution to achieving the universal health coverage targets, and together will significantly accelerate progress towards realizing the Sustainable Development Goals.

In recognition of the theme of this year’s Universal Health Coverage Day, “Unite for universal health coverage: now is the time for collective action”, I call on everyone to embrace and contribute to the universal health coverage movement. United, we can make universal health coverage a reality for all.

12 December 2018

Michel Sidibé

Executive Director of UNAIDS

 

http://www.un.org/en/events/universal-health-coverage/