過去11位が意味するもの エイズ動向委員会報告2017年確定値 エイズと社会ウェブ版347

 

 半年に一度のエイズ動向委員会が27日、厚労省で開かれ、昨年(2017年)の新規HIV感染者・エイズ患者報告の確定値がまとまりました。

 

新規HIV感染者報告数  976 件(過去 11 位)

新規エイズ患者報告数   413 件(過去 11 位)

計           1389 件(過去 11 位)

 

 新規HIV感染者報告とエイズ患者報告の合計が1400件以下になったのは2006年の1358件(406件、952件)以来11年ぶりです。新規HIV感染者報告が1000件の大台を割ったのも11年ぶりでした。

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 グラフをご覧いただければ分かるように2006年まで右肩上がりで増加を続けていた報告数が、翌2007年に1500件に達して以降、横ばい傾向に転じています。その横ばいがさらに減少へと移っていくのかどうか。これがこの10年、報告面から見た日本の予防対策の課題だったのですが、最近の推移は減少傾向への移行をうかがわせるものでもあります。

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 2007年は報告全体に占めるエイズ患者報告の割合も30%を下回りました。

 同時に報告された2018年上半期の報告数も減少の傾向を示しています。そちらの数字はAPI-Netの『日本の状況=エイズ動向委員会報告』でご覧ください。

 http://api-net.jfap.or.jp/status/index.html

 20188月の委員長コメントをクリックすると報告数が分かります。

 この結果を「だからエイズはもういいんじゃないの」という楽観論に結びつけるのは危険だと私は思います。とくに若い年齢層の男性および女性にHIV/エイズに関する十分な情報が届いていないこと、性的少数者への理解を広げようとする動きとHIV/エイズという課題への対応とが必ずしも連動した動きになっていないこと、政治的な課題としての認識が希薄になりつつあることなどは、先行きに対する不安要因ではないかと個人的には感じています。実際に支援や予防啓発の活動に携わっている人たちの現場感覚も反映させた疫学の専門家による分析を待ちたいところです。