MenStar Coalition(メンスター連合)発足 ハリー王子とエルトン・ジョン卿が発表 エイズと社会ウェブ版341

 アムステルダムで開催中の第22回国際エイズ会議(AIDS2018)で7月24日、新たなHIV感染予防プロジェクトとしてMenStar Coalition(メンスター連合)が発足したことが明らかにされました。
 英国のハリー王子(日本国内ではヘンリー王子と呼ばれることもあります)とロック歌手のエルトン・ジョン卿が24日朝のプレナリーセッション(全体会議)『Breaking Barriers of Inequity in the HIV response』で発表しています。

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 AIDS2018の公式サイトの動画を見ると、24日のプレナリーの最後にお二人のスペシャルプレゼンテーションが行われ、そこで発表したようですね。この日のプレナリーのライブ動画は1時間45分もあり、それぞれに興味深い発表が続いているので、お時間に余裕がある方は全部見られた方がいいと思いますが、なかなかそれも大変でしょうね。ここでこっそりお教えしておくと、1時間19分あたりからハリー王子、その後でエルトン・ジョン卿のスピーチがあり、さらにプロジェクト参加団体のそうそうたるメンバーが壇上に並んで記念撮影みたいなお披露目もあります。

 

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(写真はUNITAIDのFacebookから)


 ・・・ということで、例によって、それにしても英語なのでつらいなあ・・・と思っていたら、ユニットエイド(UNITAID)国内広報の担当者から『ユニットエイドよりアムステルダム開催の国際エイズ会議で発表された新たなパートナーシップ結成のお知らせです』というプレスリリースの日本語訳が送られてきました。参考までに英文リリースはこちら

 『グローバルパートナーらがメンスター連合(MenStar Coalition)立ち上げ。当初の予算12億ドルを約束』という見出しです。これは助かります。
 『立ち上げメンバーは、エルトン・ジョンエイズ基金、米国大統領緊急エイズ救援計画(PEPFAR)、ユニットエイド、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)、チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団(CIFF)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ギリアド・サイエンシズ』ということで『男性対象のHIV診断・治療拡大のためとして、初期の投入資金は12億ドル超を予定』しているそうです。
 『HIV感染サイクルを断ち切るため鍵となる男性、地域的にはサブサハラ・アフリカ、に力を入れて対処』し、公衆衛生上の脅威としてのエイズの流行終結を目指しています。
 スペシャルプレゼンテーションでは、エルトン・ジョン卿も米国のデボラ・バークス大使(地球規模エイズ調整官)から聞いた話として同趣旨のことを語っていましたが、サハラ以南のアフリカの流行国のデータを見ると、『24歳から35歳を中心とする男性のHIV検査・治療を受ける割合が低く、彼ら自身の健康が危ぶまれるだけでなく、少女や若い女性たちの間にHIV感染が広がっています』とリリースは指摘しています。
 したがって、アフリカの流行国でよく指摘される感染のサイクル(年長の男性から若い女性への性感染→HIVに感染した若い女性が10年ぐらい経過した後で同年代の男性との間で成立する性感染→年長の男性から若い女性への性感染)を断ち切るには男性への支援に力を入れる必要がある。男性がHIV検査を受けやすくなる環境を整え、HIV治療につなげる革新的な手法を工夫していこうというのがプロジェクトの趣旨のようです。

 じゃあ、どうしたらいいのということで、プレスリリースには次のように書かれています。
 『具体的には、男性に特化してのデータ分析とより適切な人間中心デザイン、細かい問題点に配慮した需要創出、ターゲットマーケティングHIV自己検査などの革新、サプライソリューション…といったアプローチが盛り込まれています。また主要HIV関連商品・サービスが増加する消費者需要に追いつくよう、十分な供給を確保します』
 プレナリーのスペシャルプレゼンテーションではハリー王子とエルトン・ジョン卿のお二人のスピーチのあとで、プロモーション動画も紹介されているので、よかったらそちらもご覧ください。
 せっかくだから、もうちょっとユニットエイドのリリースを紹介しておきましょう。
 『メンスターは、パブリックセクターのHIVサービス供与キャパシティとプライベートセクターによる消費者動向に基づいたマーケティング的視点を一つにまとめ、HIV検査と治療をできるだけ多くの男性に受けさせる努力をバックアップします。メンスターの最初のイニシアティブとしては、ケニアの広告代理店等と提携し、エルトン・ジョンエイズ基金、CIFF、ユニットエイドの後援による若い男性対象のHIV自己検査キャンペーンを2019年に実施する予定です。また、現存する診療所に男性専用コーナーの設置、診療時間の延長、コミュニティレベルでもっと男性対策に力を入れるなど、男性対象のHIVサービス提供に限定した戦略をサポートしていきます』
 UNAIDSの最新報告書も指摘しているようにHIV予防はいま極めて困難な状況にありますが、そうした中でいろいろな人がいろいろな場所で動いてもいます。アフリカでもそうなのでしょうし、やや文脈から飛躍して言えば、日本でもそうです。希望を失う必要はありません。
 ハリー王子とエルトン・ジョン卿は2年前にダーバンで開かれた第21回国際エイズ会議で若者とのセッションに参加し、それ以来、いま何が求められているのか、いろいろな人との会話を重ね、若い男性を巻き込むプログラムが必要だと考えるようになったそうです。エルトン・ジョン卿は『状況の半分に対応しないままで解決策を見出すことはできない。流行を終結に導くには男性がその解決策のパーツになる必要がある』とプレナリーで語っています。
 著名人による華々しい打ち上げ花火は、それはそれで必要だと思いますが、そこに至る継続性をこそ重視したい。その意味でもスペシャルなプレゼンテーションだったのでしょうね。