レガシーも波乱も満載 アムステルダムでAIDS2018開幕 エイズと社会ウェブ版340

 一日遅れになってしまいましたが、723日(月)、オランダのアムステルダムで第22回国際エイズ会議(AIDS2018)が開幕しました。27日(金)まで5日間の会議です。公式サイトを見ると、開会式やプレナリー(全体会議)など主要プログラムはYou tubeの動画で見ることができるようになっています。

 http://www.aids2018.org/Live

 

  わざわざ会場に行かなくても、ある程度の様子はつかめる。これは大いに助かりますね。

 ただし、動画はすべて英語で、しかも日本語字幕が付いているわけではなく(当たり前か)、ものぐさのおじさんとしては、だいたいこんなことを言っているようだぞといったくらいにしか理解(というか推測)できないのがちょっとつらいところ。ま、会場にいても同じことではあるのだけど。

 とりあえずOpening & closing sessions ところをクリックして開会式の中継を見てみよう・・・と思ったら、何と2時間1651秒もありますね。それでも開会式としては短い方かな。

 全部観るだけの根気がないので、かなり大幅に飛ばし飛ばし、つまみ食いして観ました。アムステルダムの国際エイズ会議は1992年の第8回に続いて2回目です。開会式はその第8回会議の映像から始まります。

 前回は実はボストンで開催される予定だったのですが、米国のブッシュ政権(父親の方)がHIV陽性者の入国規制を撤廃しなかったので、会議の組織委員長だったジョナサン・マン博士が会議直前になって急遽、「米国では開けない」と会場をアムステルダムに変更しています。

 映像では前回会議におけるそのジョナサン・マン博士の姿が映し出され、エリザベス・テイラーさんのスピーチも流されました。お二人とももう亡くなられていますが、アムステルダムで開く会議の、そしてHIV/エイズとの闘いの、レガシーとして敬意を表したのでしょうね。当時のメモリアルキルトの展示やACT UPのデモの様子も流されています。さまざまなかたちのアクティビズムがあった(し、いまもある)。そのことに対する敬意もまた示されました。

 ああ、行きたかったなあ、でもお金がないしなあ・・・愚痴はさておき。今回の開会式では、エリザベス・テイラーのお孫さん3人が登壇し、エリザベス・テイラー人権賞の受賞者を発表しました。参考までに紹介しておくと、開会式の司会はオマー・シャリフJr.です。名優オマー・シャリフのお孫さんであり、自らも俳優で、著名なゲイアクティビストということです。

 2時間を超える開会式では、さまざまな立場の方のスピーチやパフォーマンスがありましたが、すいません、それは省略します。最後のスピーチを行ったのは国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長でした。

 なんだか、しっくりこない構成です。これはきっと最後に回さなければならない事情があるのだろうなあと思ったら、案の定、スピーチの途中で客席から女性グループの強烈な抗議の声があがりました。UNAIDSの幹部によるセクハラ疑惑への対応がおかしい、もみ消しをはかったのではないかということで、事務局長の退任を求める内容ですね。かなり長い抗議であり、しかも壇上のスクリーンにはこの間、『 私たちはAIDS2018におけるアクティビズムを歓迎する。HIVエイズに対する闘いの不可欠の原則として表現の自由を支持する』といった文字が映し出されてもいました。

 シディベ事務局長は壇上でじっと黙ったままその抗議を聞き、女性グループが立ち去ると再び演説を続けました。HIV/エイズへの対応はいま極めて困難な事態に直面しており、分裂している時ではないといった内容です。

 これは私のまったくの想像ですが、動画を見た限りでは、シディベ氏の演説中に抗議を行うことは認めましょう。シディベさんもその間は黙って聞いていてください・・・みたいな話が組織委員会も含め、開会式の前にあったのではないかと思います。繰り返しますが単なる想像です。今回もまた、アムステルダムは波乱含みの会議なのかもしれませんね。