国際エイズ学会(IAS)の年次書簡『AIDS IS (STILL) POLITICL エイズは(いまなお)政治的課題である』については4月2日の当ブログでも紹介しましたが、TOP-HAT Newsの第117号(2018年5月号)の発行に際し、改めて巻頭で取り上げました。
国際的なHIV/エイズ対策の動向と日本の現状とは、かなり異なっている側面と、それでも課題は驚くほど共通しているねと思う面の両方があります。
『AIDS IS (STILL) POLITICL』はその共通する面に言及しています。日本のHIV/エイズ対策に携わる方、関心がある方、そして実はあまり関心がないんだよね~という方にも、ぜひ読んでいただきたい書簡です。
英文-の書簡ですが、公益財団法人エイズ予防財団が翻訳に協力し、日本語仮訳も作成されています。エイズ予防情報ネット(API-Net)に仮訳PDF版が載っているので、そちらもぜひお読みください。
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第117号(2018年5月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 『エイズは(いまなお)政治的課題である』
2 グローバルファンドのピーター・サンズ新事務局長が来日
3 HIV検査普及週間 6月1日から
4 演題募集中 第32回日本エイズ学会学術集会・総会
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1 はじめに 『エイズは(いまなお)政治的課題である』
国際エイズ学会(IAS)の2018年版年次書簡が発表されました。タイトルは『AIDS IS (STILL) POLITICAL』。日本語に訳せば『エイズは(いまなお)政治的課題である』といったところでしょうか。
書簡はまず昨年(2017年)7月にパリで開かれた第9回HIV科学に関するIAS会議(IAS2017)の2つの報告を紹介しています。
『世界で最も陽性率が高い国、スワジランドでのHIVの新規感染が、わずか6年でほぼ半減したとの科学データの発表には、同会議に参加した6000人の仲間たちと同様、私たちも驚かされました』
『東ヨーロッパの中所得国でHIV感染が爆発的に広がっていることが報告され、2010年と比べると新規感染は60%も増えているとのこと』
HIV感染の予防をめぐる劇的な成果と爆発的な感染の拡大。世界のHIV/エイズ対策はいま、2つのまったく異なるストーリーの進行を目の当たりにしています。えっ? 世界は2030年のエイズ流行終結という大目標に向かって粛々と進んでいたのではなかったのか。この違いは何なのでしょうか。
IASの年次書簡を読むと、真っ先に『理由はひとつ:政治』という小見出しが掲げられています。
『資金の限られている国々でも、国として強い意思をもって取り組み、国際的な支援が充実していれば、流行を公衆衛生上の脅威となり得る状況を回避することができます。エイズに取り組む政治的意思が確固たるものであれば、科学の成果を対策に直結させることができるのです』
しかし、2018年の世界の現実は、必ずしもそうなってはいません。
『多くの場合、イデオロギーが先行して、肝心のHIV(公衆衛生全般)対策が遅れています』
治療が大きく前進し、『目覚ましい科学の進歩が、HIVとの闘いを大きく変えてきました』と書簡は指摘しています。何が、どう変わったのでしょうか、そして、その変化は「エイズ終結」の見通しを裏付けるものなのでしょうか。
『HIVをめぐる議論は、活動家主導の危機への対応から、より専門技術的、生物医学的なものへと移り、政治的な側面はあいまいにされていったのです。しかし、いま、この正念場において ― 「エイズ終結」の議論が世界の多くの場所で現実から遊離しつつある中で ― 私たちは不愉快かもしれない議論にも踏み込んでいく必要があります』
書簡は英文ですが、公益財団法人エイズ予防財団が翻訳に協力して日本語仮訳も作成されています。
・予防が遅れているのはなぜなのか?
・南部・東部アフリカ以外の低・中所得国に対しドナー国はどのようにHIV対策への支援を行うべきなのか?
・HIVコミュニティとして、流行に対処する他分野のアプローチを取り込むことができるのか?
こうした「不愉快かもしれない議論」はおそらく、日本の現状を分析するうえでも必要です。治療の進歩は、それだけで予定調和的に「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結」を約束するものではありません。エイズ対策はまさしくいま、正念場を迎えています。エイズ予防情報ネット(API-Net)で日本語仮訳のPDF版がダウンロードできるので、ご覧ください。
http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html
2 グローバルファンドのピーター・サンズ新事務局長が来日
今年3月に就任した世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)のピーター・サンズ事務局長が4月23、24日に日本を訪れました。サンズ氏は就任前の2月にも来日していますが、事務局長としては今回が初来日。東京・築地の聖路加国際大学で開かれた24日のシンポジウム「エイズ流行の終息を目指して」など、世界の三大感染症であるエイズ・結核・マラリア対策および国際保健分野の様々な会合に出席して、日本の貢献に謝意を表すとともに、引き続き協力を求めました。
サンズ氏は銀行家の出身で、「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行」を2030年までに終結に導くという大目標については「必要なツールはすでにあります。後は実行するかどうかの意思にかかっています」と語り、必要な資金の確保と政治的課題として対応することの重要性を強調しまた。
来日中の諸会合におけるサンズ氏の主要メッセージは、グローバルファンド日本委員会(FGFJ)の公式サイトに紹介されています。
3 HIV検査普及週間 6月1日から
世界エイズデー(12月1日)の対角にあたる6月1日(金)からの1週間は、HIV検査普及週間です。厚生労働省と公益財団法人エイズ予防財団の主唱で2006年から全国キャンペーンが展開されています。詳細はAPI-Net(エイズ予防情報ネット)のHIV普及週間特設ページをご覧ください。
東京都はこの1週間を含む6月の1カ月間を東京都HIV検査・相談月間としています。
4 演題募集中 第32回日本エイズ学会学術集会・総会
12月2日(日)~4日(火)に開かれる第32回日本エイズ学会学術集会・総会の演題募集が5月8日(火)に始まりました。募集期間は6月28日(木)正午までです。
今年のエイズ学会は『ゼロを目指して 今、できること Toward “Zero”- What I can do.』をテーマに大阪で開かれます。会場は大阪市北区中之島の大阪国際会議場と大阪市中央公会堂です。
詳細は公式サイトの演題募集ページをご覧ください。
https://www.c-linkage.co.jp/aids32/abstracts.html