今年7月にオランダのアムステルダムで開かれる国際エイズ会議(AIDS2018)の公式サイトでプルーデンス・マベレ賞の創設が発表されました。昨年7月に死去した南アフリカの女性HIV陽性者、プルーデンス・マベレさんの業績をたたえ、新設された賞ですね。対象はマベレさんの価値と精神を受け継ぐ女性もしくは女性を自認する人となっています。
日本ではあまりなじみのない方なので、実は私も最初はPrudence Mabeleさんの日本語表記が分からず、メイベルさんかな?などと勝手に想像していました。調子に乗ってノーベル賞ならぬメイベル賞などと、くだらないダジャレまで言いはじめて、こうなると、おじさんに対する風当たりがことのほか強い時期だけに、またまたひんしゅくを買いそうですね(というか、書いた時点でもう買っているよ)。
マベレさんという表記は、2009年11月に発表された国連合同エイズ計画(UNAIDS)の年次報告書『OUTLOOK Report2010』の日本語仮訳PDF版で知りました。API-Netに掲載されています。
http://api-net.jfap.or.jp/status/pdf/outlook2010.pdf
この年のUNAIDSのレポートは、硬めの報告書と雑誌スタイルの一般向け報告書の2種類に分かれており、雑誌スタイルの方の表紙がマベレさんです。
中を見ると、18~21ページには『人生の1日。』というマベレさんの特集記事も掲載されています。そのごく一部ですが、日本語仮訳伴から紹介しておきましょう。
『自らがHIVに感染していることを公表した南アフリカで最初の黒人女性 ‒ 1990年に感染診断を受け、1992年にその事実を公表した。彼女がそうしたのは、HIVにまつわる沈黙 やスティグマにうんざりしたから。また、先例となり、他のHIV 陽性の女性にも自らが感染していることを公表し、そのことについて、愛する人々と話し合ったり、恥ずかしいと思うことなく、治 療を受け、充実した人生を送るよう働き掛けたかったから』
もちろん、カミングアウトするかどうかは、本人が自らの気持ちや立場を考え、慎重に判断するというのが大前提です。他の何かのためにするものではありません。それでも、自ら先例となる人の功績も、そしておそらくは試練も、決して小さなものではありません・・・私は多分その当事者ではないので、断言はできないけれど、小さなものではないと思います。
第1回プルーデンス・マベレ賞は現在、候補者の推薦を受け付け中で、締め切りは5月14日となっています。あまり時間がありませんが、ネットで推薦ができるようです。
『人生の1日。』の引用と一部重複してしまいますが、AIDS2018のサイトによると、マベレさんは1992年に、南アフリカの女性として最初にHIV陽性者であることを明らかにし、女性およびHIV陽性者の権利擁護運動を主導してきた著名なアクティビストです。抗レトロウイルス治療へのアクセスを求めて活動する治療行動キャンペーン(TAC)の創設メンバーであり、陽性女性ネットワークの創設者でもあります。
この賞はフォード財団とオープンソサエティ財団からの基金により、国際エイズ学会(IAS)と南アフリカ陽性女性ネットワークが協力して創設しました。授賞式は隔年開催の国際エイズ会議のハイレベルセッションで行われるということなので、2年に1度、選ばれるわけですね。
推薦基準は以下のようになっています。
・HIV、フェミニズム、ジェンダー、リプロダクティブ・ジャスティスに深くかか わってきた女性または女性を自認する人。
・地域は問わない。
・年齢制限はなく、新進の若いリーダーがとくに歓迎される。
・推薦は英語、フランス語またはスペイン語で行う
・マベレさんが体現してきた以下の価値にふさわしい人物
-革新性;メイベルさんが生涯を通して示した革新性にふさわしい創造的な活動
-忍耐力;実績を達成に示した不屈の努力
-社会正義;活動、私生活の両面でジェンダーおよび弱い立場の人たちの社会正義 の実現に寄与