世界マラリアデーイベント報告

 昨日(425日)は世界マラリアデーでした。どうして425日なのか。残念ながらよく知りません。ご存知の方はお教えください。

実はマラリアについてもあまり詳しく知っているわけではありません。エイズ結核と並ぶ世界三大感染症なのに、これではいけない・・・ということで、東京・千代田区上智大学で午後5時半から開かれた世界マラリアデーイベント『狂言蚊相撲」と日本のマラリア』に参加しました。

イベントの中心は能楽師狂言方で奈良観光大使でもある大蔵基誠さんの『蚊相撲』上演でした。主催は『ZEROマラリア2030キャンペーン』です。日本の伝統芸能であり、しかも現代的魅力にも満ちた狂言を通じてマラリアへの関心を高め、知識の普及をはかろうということでしょうね。

ZEROといっても2030年にマラリアという病気がまったくなくなるわけではなく、世界のマラリアの流行を現在の10分の1程度に抑える状態を目指しているようです。「2030年のエイズ終結」が、「公衆衛生上の脅威」ではなくなるレベルにまでHIV感染の流行を抑えるというのと同じことでしょうね。

大蔵さんの素晴らしく、またユーモアにあふれた狂言蚊相撲』の様子については主催者、関係者からも十分に情報発信がなされているので、そちらにお任せしましょう。

もちろん私も大いに楽しませていただきました。狂言っておもしろいねと改めて関心を持つきっかけにもなりました。

ただし、今回はマラリアの勉強が主目的だったので、個人的にはその前に登場された国立国際医療研究センター研究所熱帯医学・マラリア研究部の狩野繁之部長のミニレクチャーに注目しました。司会の方が「軽妙なトーク」と紹介されていましたが、お医者さんというのはなんというか、人材豊富ですね。

それなりの努力も重ねてこられたのだと思います。マラリアの感染経路など基礎知識から日本とのかかわりまで、クイズ形式を織り交ぜ、私のような「ほとんど知りません」層にもすっと納得できるお話でした。マラリアはトラに噛まれたら感染するか・・・。

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しないそうです。

主要な感染経路は蚊に刺されることですが、注射器や輸血でも感染することはあります・・・あまり知ったかぶりをしているとボロがでますね。

世界の91カ国地域で流行が広がり、21600万人が感染して、年間に445000人が亡くなっているそうです。以前は死者が年間100万人でしたから、対策の成果で大きく減少したわけですが、この調子ならどんどん減っていくぞと楽観視できる状態でもなさそうです。

昨年の死者はその前年と比べると、やや減少しています。ただし、地域別にみると最大の流行地域であるアフリカにおける死者が少し減り、それが世界全体の微減傾向にも反映しているということであって、他の地域ではアジア・大平洋地域も含め逆に微増の傾向にあるそうです。つまり現状は予定調和的に2030年のZEROマラリアに向かっているというわけではありません。

 日本国内でのマラリアはもうなくなっていますが、海外に旅行してマラリアにかかる人はいないわけではありません。また、歴史的に見ると、日本もかなりマラリアが流行していたことが分かります。狩野先生は源氏物語(若紫の巻)や平家物語平清盛マラリアで死亡した)、明月記、十六夜日記などからマラリア症例の記述を紹介されました。

室町時代狂言蚊相撲』もそうした文脈の中で位置づけることができます。

国内のマラリアは戦後、なくなったとはいえ、1983年には沖田浩之さんが「お前にマラリア」というレコードを出しています。流行が終結してもなお、知名度は高い。このことはグローバルな対策への理解を広げるうえで力になるかもしれません。

狂言蚊相撲』の上演前にはもう一つ、ZEROマラリア2018表彰式も行われました。今年の受賞者は落語『蚊相撲』の桂歌助師匠です。江戸時代の落語『蚊いくさ』に狂言蚊相撲』の要素も加え、演目にされています。

表彰式では、「マラリアとかけて」と謎解きのお題を出され、歌助師匠、う~んとしばしうなった後、「石川県出身者の盆と正月」と解かれました。

その心は・・・。

加賀帰省中(蚊が寄生虫)。さすがはプロですね。「ちゅう」は「中」か「虫」かどっちだろう。両方通りそうな気もします。お後がよろしいようで・・・。