公開中の映画『BPM ビート・パー・ミニット』の日本語版字幕は特定非営利活動法人ぷれいす東京の生島嗣代表が監修を担当しています。実は私もつい最近、ぷれいす東京の公式サイトのお知らせ欄を見るまで気が付かなかったのですが、この人選は配給元のファインプレイではないかと思います。
社会に広がるスティグマや差別をどう克服するか。このことを抜きにしてHIV/エイズ対策を語ることはできないでしょう。『BPM ビート・パー・ミニット』という映画の主要テーマのひとつであり、実はその舞台となった1990年代前半のパリでも、2018年の日本でも基本的に事情は変わっていません。
もちろん治療の進歩やさまざまな啓発の努力によって、その困難の質や程度に違いはあるかもしれませんが、基本の部分でいまなお大きな課題であり続けていることに変わりはないと私は思います。
分野によってはむしろ、治療の進歩がもたらしたある種の安堵感のために、スティグマや差別を「かつてはあったこと」として、つまり、いまは(過去をいつまでも引きずっている人以外には)もうありませんよということにして、不問に付すかのような言動も最近は徐々に広がっている印象です。
ぷれいす東京のウェブサイトから映画に関する生島さんのコメントを一部紹介しましょう。
『本当にディテールがよくできている。HIV陽性者と陰性者の活動家同士の恋愛。学校現場での性教育のありかた。政府や企業と患者団体との距離感や関係性。エイズの出現によって社会が変えられてきたことは、実は沢山ある。それが感じられる映画。もちろん、全くかわっていないものもあります』
蛇足ながら付け加えれば、変わったのに、またもとに戻ってしまったものも、たぶん、あります。
生島さんは「専門医のご協力のもと」に監修にあたったそうです。もちろん、医療の専門的な知識に照らして誤りのない情報を伝えることは重要ですが、私はあえて、専門医が生島さんのご協力を得たのではなく、生島さんの監修に専門医が協力したという構図にこそファインプレイ賞を贈呈したい。
この映画は、第70回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞していますが、ぷれいす東京のサイトのお知らせ欄をみると、『アカデミー賞にノミネートされなかったため、上映館が限定されています。上映期間も動員によって短くなる可能性があります』ということです。
う~ん、なんだか。早めに観ておいた方がよさそうですね。
おっと、紹介が遅れました。ぷれいす東京のさいとはこちらです。
もう一つ、映画の公式サイトはこちら。
再び蛇足になりますが、私がこの映画を観たのは昨年11月23日夜、TOKYO AIDS WEEKS 2017(東京エイズウィークス)のオープニングイベントとして特別試写会が開かれた時でした。
(試写会上映後のトーク。左端が生島さん)
おそらくは本邦最速の試写会報告を翌24日未明のブログにアップしたのですが、内容は観客動員に資するものではなく、以後、映画についてコメントを求められる機会はありませんでした。したがって、今回のこのブログも、頼まれもせず、勝手に書いています(本来、ブログはそういうものだけど)。