325 厚労省の第150回エイズ動向委員会が16日に開かれ、昨年(2017年)の年間速報値が発表されました。
新規HIV感染者報告数 992件
新規エイズ患者報告数 415件
計 1407件
あくまで速報値です。確定値は次の委員会(前回から半年に1回の開催となっています)で発表されるのでしょうが、感染者報告、患者報告とも測定値より少し増えます。したがって、本日発表された測定値をこれまでの確定値と比較してもあまり意味がないのかもしれませんが、一つの目安にはなります。
感染者報告数、患者報告数、合計数とも現時点では過去11位ということです。
そこで、2007年から2016年までの10年間の報告数(確定値)を調べてみると、最も報告数が少なかった年はそれぞれ以下のようになっていました。
新規HIV感染者報告数 1002件(2012年)
新規エイズ患者報告数 418件(2007年)
そして合計数は 1434件(2015年)
つまり、感染者報告が少なかった年、患者報告が少なかった年、報告の合計が少なかった年はそれぞれ異なりますが、昨年は(あくまで速報値の段階では)感染者報告も患者報告も報告の合計も過去11年で最も少なくなっています。
では、これをもって感染は減少傾向に転じたと考えていいのかどうか。HIV/エイズに対する社会的な関心が低下している中での報告の減少が、すんなり感染の減少傾向が始まったといえるのかどうか。難しいところです。
動向委員会の白阪琢磨委員長は「感触として減ってきたという印象はあるが、本当に減ってきているのかどうかはもうしばらく見ていかなければならない」と速断を避け、慎重な見方をとっています。
ここで、あれ?とお思いになった方もいらっしゃるでしょうね。委員長は岩本愛吉先生じゃなかったの・・・。実は今回から委員長が国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨先生に代わりました。
判断は慎重ですが、大阪HIV検査.jpというサイトで『いま HIVでは 死にません』という大胆なメッセージを発信しているHIV治療の専門医でもあります。
前任の岩本愛吉委員長は、エイズ対策の最前線の啓発拠点である新宿二丁目のコミュニティセンターなどで「ラブ吉先生」と親しみを込めて語られるほど、現場から信頼されている研究者でした。
わが国のHIV感染報告がこの10年あまりにわたって1500件前後という国際的に見ると信じがたいほど低いレベルで横ばいを維持できたのは、岩本委員長を中心とする動向委員会を含め、HIV/エイズ対策の現場に身を置く人たちが不屈の努力を続けてきた成果でもあります。
その後任に白阪先生という大胆かつ慎重な適材を得て、国内でHIV感染の流行の縮小が始まることを期待したい・・・ところではありますが、私の個人的感想としては、いまなお楽観はできないのではないかと思っています。