5つのCとインフォームドコンセント 『HIV検査サービスに関するWHO・UNAIDS声明』から エイズと社会ウェブ版295 

 

 エイズ&ソサエティ研究会議(JASA)の第126回フォーラムがいよいよ明日午後7時から、東京・四谷三丁目の『ねぎし内科診療所』で開かれます。今回テーマは検査普及の選択肢として期待される郵送検査をめぐる課題です。

90-90-90ターゲットとHIV郵送検査』

http://www.ca-aids.jp/event/171010_90-90-90.html

 

 関連資料としてAPI-Netに掲載されている『HIV検査サービスに関するWHOUNAIDS声明:新たな機会と継続的な課題』の日本語版も印刷して配布すべく準備を進めています。郵送検査も含めたHIV検査を実施するうえでの留意点を簡潔にまとめた資料です。PDF版はこちらで見ることができます。

 http://api-net.jfap.or.jp/

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 ということで、ちょっと予習ですが、このWHOUNAIDS声明をさらに要約して以下に説明しておきましょう。あくまで私の勉強用ですので、誤解している部分もあるかもしれません。あれ?と思った方は元のPDF版を照合してください。

 

 まずは、大前提としてHIV検査に対するWHOUNAIDSの考え方はこうなっています・・・というところから押さえておきましょう。

 

WHOUNAIDSは、公衆衛生の観点から、個人に対し義務的もしくは強制的な検査を行うことは支持しません。どんなかたちで提供されるにせよ、HIV検査は常に個人の選択を尊重し、倫理および人権の原則を守らなければなりません。公衆衛生戦略と人権の尊重は、互いに補強しあう関 係にあります。すべてのHIV検査サービスはWHOの「5つのC」を守る必要があることを、WHO UNAIDSは引き続き強調しています》

 

 じゃあ、5つのCってなんだということになりますね。最初のConsent(同意)の項では、以前からよく指摘されてきた「インフォームドコンセント」についての定義も示されています。

 

5つのC

1. Consent(同意) 

HIV検査の機会はすべての人に提供すべきだが、受けるかどうかを決めるのは個人の判断であるとして、「インフォームドコンセント」の必要性を強調している。

それでは、インフォームドコンセントとは何か(注:少し要約して引用)。

HIV 検査のプロセスとその結果、および結果が出た時に利用できるサービス、そしてどんな状況でも検査を断る権利があることなどについて説明を受け、それを理解したうえで検査を受けることに同意する』

また、『義務的または強制的な検査は、保健医療提供者、パートナー、家族、雇用主、法執行当局、その他の誰から強制されたものであれ、決して適切ではない』と明記している。

 

2. Confidentiality(秘密保護) 

検査結果および、受検者本人と検査提供者、カウンセラー、その他の保健医療従事者の間で話し合われたことが、受検者の同意なしに他のいかなる人にも開示されてはならない。

 

3. Counselling(カウンセリング)

 適切で信頼できる情報を検査前に提供し、検査後には当事者の事情と検査結果に即したカウンセリングが受けられるようにする。

 

4. Correct results(正確な検査結果) 

各地域の流行の特徴を踏まえて適切な検査戦略や確認方式を採用することも含め、WHOまたは各国の品質保証システムと保証基準に適合した方法で検査結果の正確を期す。検査を受けた人が後で結果を知りたくないと決めない限り、検査結果は直接、本人に伝える。

 

5. Connections(連携)

 HIV予防、治療、ケア、支援のサービスにつなげるための支援を行う。

 

 さらに新しい検査サービスアプローチとして、WHOが推奨する「自己検査」と「パートナー告知」についても説明があります。ここでは、このうち郵送検査にもかかわりがある自己検査について紹介しましょう。

 

1. HIV自己検査はWHOHIV検査の追加的な選択肢として推奨。

HIV自己検査は極めて受けやすく、男性やキーポピュレーションの人たち、10代の少年少女、若者(1524歳)など、自己検査以外ではなかなか検査を受けないと思われる人にも届く。

HIV自己検査は正確に行うことができ、リスク行動や社会的な悪影響、有害事象などを増やすことなく、検査への理解と検査回数を増やせる。

・コミュニティのシステムに支えられ、そうしたシステムに組み込んでいけば、HIV自己検査後に治療や予防サービスにうまくつなげられる。

  

 課題については、以下にかなりどっさりと挙げられています。郵送検査の普及を考えるうえでも参考になりそうですね。

 

   ■ HIV自己検査キットは常に、WHOあるいは他の国際機関、各国の監督官庁で承認されたものを使う。わかりやすく、的確な使用説明書を付けるべきであり、教育程度や読み書き能力、障害のレベルに応じて、実演説明や視聴覚教材などの補助ツールを活用できるようにしておく。

   ■ HIV自己検査で反応が出た(結果が陽性の)人にはすべて、コミュニティか保健医療施設でHIV検査の訓練を積んだ人による確認検査をさらに受ける必要があることを情報として明確に伝える。陽性が確認された人はHIV予防、治療、ケア、支援のサービスにつなげる。

   ■ HIV自己検査で反応が出なかった(結果が陰性の)人には、その結果の意味を考えてもらい、検査前3か月間にHIV感染の可能性がある機会がなければ、確認検査を受ける必要はないことを伝える。感染の機会が最近あった人には612週間後にもう一度、検査を受けるよう助言する。

■ 日常的に感染の可能性がある人、現在進行形で感染の高いリスクがある人には半年ごとに検査を受けるよう助言する。

   ■ HIV 自己検査を完了できなかった人、検査の結果を疑うか、理解できない人には、次に何をすべきか明確な情報を伝える。他のHIV検査サービスを受けられる場所と方法を伝え、コミュニティまたは保健医療施設で検査を受けることを勧める。

■ 抗レトロウイルス薬はウイルス量を抑え、HIV抗体の産生を減らす働きがあるので、抗レトロウイルス治療を受けている人はHIV検査の結果が偽陰性になることがある。

   ■ HIV 自己検査キットを使う人には検査前の情報提供と検査後のカウンセリングにより、医療サービスやコミュニティの支援グループへの連絡方法などを伝えられるようにしておく。

   ■ HIV自己検査も強制されて受けるようなことがあってはならない。

 

なお、強制的検査については『WHOUNAIDSが支持できるのは以下の場合に限られます』としています。

■ 輸血や血液製剤の原料となるすべての血液に対するHIV及び他の血液媒介感染症のスクリーニング検査

■ 人工授精や角膜移植、臓器移植など体液および体の一部を他の人に移行する手続きに先立って行うドナーへのスクリーニング検査