HIVによる免疫機能障害の認定基準見直しを求め要望書 JaNP+、ぷれいす東京

 「日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」と「ぷれいす東京」の2つの特定非営利活動法人が7月13日、『ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の認定基準に関する要望書』を連名で厚労省に提出しました。コミュニティアクションでも紹介した原稿に少し手を加えてを再掲します。

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に関する医学研究の進歩を反映して、現在の抗HIV治療は、感染を確認したら直ちに治療を開始すべきだという考え方が世界の趨勢になっています。治療を続けることで、HIVに感染した人の健康状態を長く良好に保つことが期待でき、同時に体内のHIV量が大きく減って他の人に感染するリスクも極めて低くなるからです。
 一方で、わが国では1998年、薬害エイズ裁判の和解に基づく恒久対策の一環として、HIVに感染している人は感染経路を問わず免疫機能障害の認定対象となりました。
 ただし、当時は抗HIV治療について、治療開始時期をなるべく遅らせる考え方がとられていました。認定基準もそうした考えに基づいて策定され、そのまま現在に至っています。したがって、HIV感染が確認されても免疫の状態が良好な間は、自立支援医療(更生医療)による治療費負担の軽減が期待できず、それが治療開始の遅れを促す結果を招いているケースも少なくありません。
 また、予防対策の新たな選択肢である「予防としての治療」も有効に機能しなくなるおそれがあります。
 検査の普及と早期治療開始は国際的なHIV/エイズ対策の中心課題であり、わが国においても最重要ポイントといっていいでしょう。ただし、やみくもに検査をしようと呼びかけても、呼びかけるだけで何かが終わったよな気になってしまったら、それは対策とはいえません。
 検査を受け、感染が分かったときに、じゃあ、どうすればいいのというフォローアップがきちんとできていて、安心して治療を受けられる。そのための支援の仕組みが整っていることが、明示的に示され、検査を受けていない人にも伝わる。
 その意味での啓発・・・というか情報の伝達、つまり2017年度世界エイズデーの国内キャンペーンのテーマにもなっている情報やイメージのUPDATE! が必要です。 

f:id:miyatak:20170712202336j:plain

 そこまで分かっていながら、制度がそれを邪魔しているのでは整合性がとれません。ぷれいす東京とJaNP+という2つのNPOが提出した要望書の指摘は当然の内容というべきでしょうね。

 一方で、要望がないと動けないのが行政というものかもしれません。逆に頼みもしないことを勝手にさっさとやり始めるようになったら、それはそれで困った事態を招くこともありそうです。その中間領域にあって、現場をよく知り、実際に制度を使う立場から現状の矛盾点をきちんと指摘できるNPOの存在は貴重です。
 要望書は「国際基準では治療を開始すべきでありながら、障害認定による治療助成の利用が制限され、抗HIV薬の服薬が遅れている現状」を指摘し、「治療へのアクセスを難しくしている認定基準の見直し」を求めています。
 「JaNP+」および「ぷれいす東京」の公式サイトで要望書のPDF版を見ることができます。