エイズキルト・オンラインが始動 エイズと社会ウェブ版272

 年間のHIV新規感染がいまも拡大を続けている地域の一つである東欧・中央アジア地域で、メモリアルキルトをデジタル化して紹介する新たなプロジェクトが発足しました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに掲載されたお知らせの日本語仮訳です。

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 プロジェクトの公式サイトは、こちらをご覧ください。

aidsquiltonline.org

 

 UNAIDSのファクトシートを見ると東欧・中央アジア地域のHIV陽性者は2015年末現在の推計で150万人。2015年の年間新規HIV感染者は19万人で、これが2010年と比べると57%も増えているということです。 

 2015年のエイズ関連の死者は年間4万7000人で、こちらも2010年と比べると22%増。一方、HIV陽性者に対する治療のカバー率は21%ということで、新規感染の予防も、感染した人への治療の拡大も急務です。

 したがって、対策の強化は強調しても強調し足りないほど大切ですが、同時にこうした状況下で予防の重要性だけが強調されると、それはそれで困った事態を招きかねません。感染している人たちへの差別や偏見がかえって強まり、感染している人たちが直面する困難に対する社会的な想像力が失われてしまう懸念もあるからです。

 対策のあり方、メッセージの伝え方は、極めて微妙であり、予防、治療、支援の必要性を過不足なく伝えるという意味でも新プロジェクトの存在は重要です。メモリアルキルトのデジタルアーカイブが充実していくといいですね。

 また、HIV/エイズにまつわる差別や偏見と闘ってきたアクティビストたち(もちろんHIV陽性者も含まれています)への追悼は、エイズ対策史を把握する貴重な情報源でもあるのではないかと思います。

 以下、UNAIDSサイトのお知らせの日本語仮訳です。

 

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エイズキルト・オンライン 国際キャンドルライト・メモリアルデーに始動 2017.6.8

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2017/june/20170608_aids-quilt-online

 

 東欧・中央アジア市民社会グループが国際エイズ・キャンドルライト・メモリアルデーの5月21日、エイズキルト・オンラインを開設した。エイズキルト・オンラインはエイズ関連の疾病で亡くなった人、およびHIVとの闘いに取り組んできたアクティビストをネット上で追悼している。

 このサイトはUNAIDSの支援で創設され、小さな個人用テキストを使ってデジタルキルトを創れるようになっている。また、ギャラリーページでは実物キルトの画像を見ることもできる。

 エイズキルト・オンラインは、エイズ関連の疾病で亡くなった人を忘れないという思いから1987年に米国のサンフランシスコで創設されたネームズプロジェクト財団の伝統を引き継ぐものだ。亡くなった近親者の思い出にブランケットを編むという伝統が、エイズメモリアルキルトを生むもとになっている。亡くなった人の人生を象徴する様々な布や思い出の品が縫い合わせられたキルトは、エイズ対策の造形的なシンボルの一つとなった。何百万というキルトが亡くなった人の友人や恋人、家族らによって編まれている。

 

コメント

 「このプロジェクトによって、がHIVの流行に対する社会の関心を高め、およびHIV陽性者の治療、ケア、支援へのアクセス拡大の必要性が認識されるようになることを期待しています。また、エイズに関連したあらゆるかたちの差別をなくすことを呼びかける緊急警報になってほしいと思います」 ステップ財団、イゴール・プシェリン議長

 

 「このプロジェクトはいまはもういない人を忘れないことを誓い、そしてエイズ流行終結に向けて新たな世代が力を合わせて取り組むことを目指すものです」

 ヴィネイ・サラダナUNAIDS東欧中央アジア地域支援チーム・ディレクター

 

 

 

AIDS Quilt Online launched on International Candlelight Memorial Day

08 June 2017

 

AIDS Quilt Online was launched on International AIDS Candlelight Memorial Day, 21 May, by civil society in eastern Europe and central Asia. An online memorial, AIDS Quilt Online pays tribute to people who have died of AIDS-related illnesses as well as to the activists who have dedicated their lives to the response to HIV

 

The site, which is supported by UNAIDS, provides an opportunity to create a digital quilt, accompanied by a small personal text. The fragments are collected into one large digital canvas. People can also share pictures of real woven quilts on a quilt gallery page.

 

AIDS Quilt Online continues the tradition of the NAMES Project Foundation, created in San Francisco, United States of America, in 1987 to remember people who have died from AIDS-related illnesses. The tradition of sewing blankets in memory of someone close was transformed into the AIDS Memorial Quilt. Stitched from a multitude of fragments, each symbolizing a person’s shortened life, the quilt became one of the iconic symbols of the AIDS response. Tens of thousands of memorial panels were sewn by friends, loved ones and family members.

 

Quotes

 

“We hope that such projects can draw public attention to the HIV epidemic, to the need of extended access to treatment, care and support for people living with HIV, as well as to the urgent call to stop any form of discrimination related to AIDS.”

Igor Pchelin Chairman, Steps Foundation

 

 “This project is a reminder of everyone who's not with us today as well as hope for a new generation as we combine our efforts to end the AIDS epidemic.”

 

Vinay P. Saldanha Director, UNAIDS Regional Support Team for Eastern Europe and Central Asia