メルマガ東京都エイズ通信の第117号が配信されました。
http://archives.mag2.com/0001002629/
- 平成29年1月2日から平成29年5月28日までの感染者報告数(東京都)
※( )は昨年同時期の報告数
HIV感染者 147件 (142件)
AIDS患者 36件 ( 39件)
合計 183件 (181件)
HIV感染者数、AIDS患者数ともに昨年同時期と同程度のペースで報告されています。
微妙ですね。報告ベースで横ばいの状態が続いています。実際の感染件数は分かりませんが、報告の横ばい傾向が何年も続いているので、感染の動向もそれほど掛け離れたものではないという印象を受けています。
昨年7月にダーバンの国際エイズ会議で英国のヘンリー王子が指摘した「自己満足のリスク」が高まりやすい時期ではないかと個人的には感じています。したがって、予防、治療、ケア、支援に地道な努力を続けている現場の皆さんを励ますような社会的エールがいまこそ大切だなあと思う時期でもあります。
明日6月1日からの1週間は厚生労働省とエイズ予防財団が主唱するHIV検査普及週間、そして6月の1カ月間は東京都のHIV/検査・相談月間です。
体の中でHIVが増えるのを妨げる治療薬が次々に開発され、その成果に基づいて感染の可能性がある人はできるだけ早く検査を受け、感染が分かったら治療を開始することが推奨されるようになりました。
HIV/エイズ研究の大きな進歩です。そうすることで感染した人は自分自身が長く生きていくことが期待できるようになったし、他の人への感染のリスクも大きく低下することが確認されています。
この成果が新たな予防ツールとしてのT as P(予防としての治療)の基本的考え方です。7月にパリで開かれる国際エイズ学会(IAS)の会議の演題をさらっと斜め読みしていたら、「ABCにDを加える」といったタイトルも見受けられました。
AはAbstinence(禁欲)
BはBe faithful(貞節)
CはCondome(コンドーム)
で予防対策のABCなどと呼ばれています。治療が予防にも有効と言うことで、これにDrug(薬)も加えて、ABCDにしようと言うことでしょうか。あくまでタイトルから私が勝手に想像しているだけなので、講演の内容は分かりません。それでも、うまいこと言うなと、ついつい感心してしまいました。
ただし、ここであえて強調しておきたいのは、ABCよりはXYZに近い「S」、つまりSupportの重要性です。T as Pが成立するためには、まず感染を心配する人が検査を受けやすい状態、安心して検査や治療を受けられる環境を整えることが必要です。
T as Pの社会的な成立条件はどんなものなのか。このあたりはいま、T AS Pを何年か強調してみて新たに浮上している世界的な共通課題であり、同時にそれぞれの国、それぞれの社会が、自らの流行の状態や社会のあり方を踏まえながら個別に考えていくべき古くからの課題でもあります。
ということで、個人的にはT as Pの前提として、S as P(予防としての支援)、英語で言えばSupport as Preventionの再評価が必要ではないかと考えています。
感染した人、感染を心配する人、あるいは感染した人や感染を心配する人を支える人に対する社会的支援の枠組みを改めて考えてみる必要があるということですね。アルファベットの順番から言ったって、Tの前はSでしょう・・・などと、だぼらを吹いてもしょうがないけれど、けっこう真剣です。