郵送検査をどう考えるか 第4回エイズ・性感染症に関する小委員会の傍聴記その2 

 4月11日の第4回エイズ性感染症に関する小委員会の傍聴記の続きです。厚労省の公式サイトには、エイズおよび性感染症のそれぞれの予防指針改正案について、資料として当日、配布された「たたき台」がアップされました。 
 『検査・相談体制』の項を見ると、『郵送検査』に関する記述が新たに加えられています。
 『近年、郵送検査の利用数が拡大しているが、郵送検査のみでは、HIVへの感染の有無が確定するものではないため、国は、郵送検査の実施後、医療機関等への受診に確実につなげる方法等について検討する必要がある』

 委員会後の報道でも、この点がとくに取り上げられています。たとえば《HIVの郵送検査、10年で3倍超 顔合わせず可能》(朝日新聞
 http://www.asahi.com/articles/ASK4C5JPWK4CULBJ00M.html
 《保健所などで実施されるエイズウイルス(HIV)検査の利用件数が伸び悩むなか、民間企業の郵送検査の利用件数が、10年間で3倍超に増えたことがわかった。保健所職員らと顔を合わせずに検査できることなどが理由とみられる》
 《厚生労働省は11日、有識者でつくる小委員会で、エイズの予防や蔓延防止のための指針に、郵送検査を盛り込む方針を示した》

 今回は少し個人的な感想を含め、その郵送検査について取り上げます。
 郵送検査はさまざまな疾病に対してすでに実用化されており、HIV/エイズ対策の中でも、「なかなか検査を受ける機会のない人」「検査に踏み切れないでいる人」に向けた検査普及の選択肢として期待されています。需要も増えています。これはその通りだと思います。
 一方で、予防指針ではこれまで、あたかも存在しないかのごとく記述が避けられてきました。取り上げにくい事情というのもあったのですが、改正案のたたき台では、HIV検査の普及を進める際の選択肢の一つとしてその存在を認め、課題に対応する姿勢を示しました。この方が施策としてははるかに現実的だし、有効だと思います。
 そうしたことを認めた上での話なのですが、たたき台にも、先ほどの記事にも触れられていなかったので、ここではあえて「取り上げにくい事情」の一つを取り上げます。
 それは、検査を受ける本人が自ら血液サンプルを郵送し、検査結果が直接、きちんと本人に届けられているか、という問題です。

 『自発的な意思決定に基づいて検査を受け、その検査結果は直接、本人に伝えられる』

 それはHIV検査をめぐる極めて本質的な課題でもあるからです。この点はどうなのか、きちんと対応できているのかどうか。個人的にはその疑問に対する答えがうまく見つけられず、いつも「このままでいいのだろうか」という壁に突き当たってしまいます。
 他の人の血液サンプルを一つの組織ないしはグループが集め、それをまとめて郵送検査を行っている会社に送る。検査の結果は本人ではなく、そのグループを統括する立場の人または組織にまとめて返され、本人よりも前にその結果を知ることができる。
 そうしたことが検査件数の拡大の背景にあるとすれば、残念ですが推奨はできません。
 一方で、現実を直視すれば、すでにかなりの規模で普及、拡大している検査の選択肢をないものとすることもできない相談です。検査を受ける人にとっての『顔を合わせないで可能』という心理的利便性も無視はできません。

 課題解決のための努力はすでに、郵送検査会社も含め、エイズ対策担当者や研究者の間で進められてはいますが、なかなか議論うるぐるとまわってしまい検討が進んでいないようにも見受けられます。何とかしたいという意思は存在しているだけにその努力が実を結ばない現状は残念でもあります。
 突き放した言い方で恐縮ですが、名実共に信頼度を高め、検査普及の有力な選択肢の一つとして位置づけられることを期待しています。