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推計通りなら日本の現状は80-90-90 エイズと社会ウェブ版 264

 国内でHIVに感染している人のうち、自らの感染を知らないでいる人は約5800人。厚労省研究班のこんな推計が昨日、NHKニュースで紹介されました。

www3.nhk.or.jp

厚生労働省によりますと、保健所や医療機関などでHIVの感染が確認された日本人は、去年までにおよそ2万2971人に上っています。
 これに対し研究班は、感染の広がり方や過去のデータなどを詳しく分析して、実際に感染している日本人は、去年末の時点でおよそ2万8300人に上るという初めての推計をまとめました》

 厚労省では一昨日、エイズ動向委員会が開催されているので、そこでデータが共有されたのかもしれませんね。動向委員会関係の方がいらしたら教えてください。

 西浦先生の研究班は研究者が一人という極めて小ぶりの研究体制ですが、山椒は小粒)でぴりり辛いといいますか。研究班の目的は、厚労省エイズ動向委員会のこれまでの報告数の推移など、現時点で利用可能なデータをもとに実際の感染動向(報告でなく)を把握するための数学的な推計モデルを作ることであり、推計値はその副産物ととらえた方がいいかもしれません。
 したがって、この数字はあくまでもそうした研究の中で示された推計であるという前提条件付きで受け止める必要があります。それでも、具体的に何人という数字が出てくると一人歩きを始める。とくにマスメディアではその可能性が高くなります。
 そうしたことを踏まえ、私も(柄にもなく)慎重になっていますが、まあ、だいたい現実に近い推計なのではないかとは思っています。
 数学的なモデルの当否といったことは分かりません。推計のプロセスもさっぱり、あるいはきっぱりと言っていいほど理解できていません。それでもなお、妥当かなあと思うのは以下の理由からです。
 1 これまで国内のHIV/エイズの流行を取材して得た感触との乖離が小さい。
 2 国内のHIV感染推計に関しては、他にも別の手法で研究、分析を重ねてきた研究班があり、その結論もほぼ同じ推計数になっている。
 3 拠点病院の研究班の調査データからも同じような推計数と考えられる。

 私自身が自分で根拠を示せるわけではまったくないのですが、現状について言及するときには推定で5800人前後といったかたちでちゃっかり研究成果を拝借したいと思っています。
 この推計については昨日、感想としてFacebookにも書きました。内容は似たり寄ったりですが、現在およびこれからのHIV/エイズ対策の何を重視すべきかといったことにも少し言及しています。FB上だと「前に書いたけどあれ、どこだったのかなあ・・・」と探すときに大変なので、以下、当ブログにも再掲しておきます。

 HIV感染に気づいていない人が国内でどのくらい暮らしているのか。最近は複数の研究者がそれぞれの手法で推計を行い、おおむね似たような推計値になっている印象を個人的には受けています。
 緻密な分析の当否について、私にはまったく分からないのですが、国内でHIVに感染している人の2割くらいが自らの感染に気づいていないといったところでしょうか。
 逆に言えば感染している人の8割は検査を受けているということですから、UNAIDSの90-90-90ターゲットに関していえば、日本はすでに 80-90-90 の域にまで達しているということになります。検査や治療、支援に携わる多くの人たちの努力の成果というべきでしょう。
 この状態が維持できれば、HIVの新規感染は少しずつ減少に向かうことになるのでしょうね。
 ただし、現状を見ると、この状態の継続というのは社会的にかなり困難というか厳しい環境であるようにも感じられます。
 もう一度、支援の重要性を認識し、それが安心して検査や治療を受けられる社会的な環境を形成し、持続させる大きな力になることを強調していく必要があるのではないでしょうか。