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恐怖と感染性と検出限界以下について GNP+

最近はすっかり世界のHIV感染予防対策の中心となった感がある「予防としての治療」(T as P)について、世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)が2月8日付けで公式サイトのニュース欄に見解を発表しています。声明と受け止めてよさそうですね。

On Fear, Infectiousness & Undetectability

http://www.gnpplus.net/on-fear-infectiousness-undetectability/

 

 その日本語仮訳です。あまり知らなかったのですが、米国ではU=U(Undetectable= Untransmittable)キャンペーンというのがあって、これには著名なエイズアクティビストも数多く参加しています。治療によって体内のHIV量が検出限界以下に下がれば、感染のリスクも、ないと言える状態にまで下げられる。この点を強調するキャンペーンです。

 そのためには検査の普及、治療の早期開始というのがT as Pの骨格、そして感染していない人にも目配りし、予防目的で抗レトロウイルス薬を提供するのがPrEP(曝露前予防服薬)です。

 U=Uキャンペーンのサイトを見ると、米国の名だたるエイズ関係団体が賛同しているようなので、私などは、あちゃ~、アメリカはこういうことになっちゃっているのか、と改めて驚くとともに、GNP+の声明もそのキャンペーンに賛意を示すものかと思ったら、どうも違いますね。最初の内は外交辞令といいますか、一応、ちょっと持ち上げていますが、後の方はだんだんきびしくなってきます。「口先だけのマーケティングは別にして」などとかなり激しい表現も出てきますね。

 《口先だけのマーケティングは別にして、HIV陽性者が必要とし、望んでいるのは、陽性を病気のベクター(媒介者)と見なすようなレトリック(すなわち、私たちはあなたが病気を広げないようにするため、あなたたちとともに働きます)が復活することではない。そうではなく、私たちの健康と安全と幸福を第一に考え、性パートナーとしても、同僚としても、仲間または友人としてもHIV感染を理由に恐怖の対象とされるいわれはないということを再確認するメッセージなのだ。治療を受けているかどうか、あるいは検出限界以下かどうかということに関わりなくである》

 個人的には、U=Uキャンペーンよりもこちらの方が共感できるような印象ですが、《陽性を病気のベクター(媒介者)と見なすようなレトリック(すなわち、私たちはあなたが病気を広げないようにするため、あなたたちとともに働きます)》といった指摘を前にすると、少々たじろぎます。お前もそうじゃないのと言われると、そうかもしれないと思ってしまうような・・・。

 そうしたことも含め、なにかと考えさせられる声明なので、ご関心がお有りの方はお読みください。U=Uキャンペーンももっと調べて見る必要がありそうですが、それは時間があればまた。

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 恐怖と感染性と検出限界以下について

    GNP+ 2017年2月8日

 

 抗レトロウイルス治療(ART)を受け、少なくとも6カ月はウイルス量が検出限界以下の(そして、他の性感染症にはかかっていない)HIV陽性者なら、HIV感染の可能性は無視できるほど低いということが、10年前にはまだ証明されていなかった。

 HIV治療と予防に関する医科学研究の大きな進歩により、いまはもう違う:予防としての治療や曝露前予防服薬(PrEP)を含め、HIV感染予防における抗レトロウイルス治療の必要性と有効性は繰り返し、はっきりと示されている。

 Prevention Access Campaign(予防アクセスキャンペーン)がスポンサーになり、多数の米国著名エイズアクティビストが参加して発足したU=UキャンペーンはUndetectable(検出限界以下)とUntransmittable(感染の可能性がない)という単語の頭文字をとって最近のこうした進歩を強調している。キャンペーンはHIV予防としての治療の効果について広く社会的理解を得ることを目指すものだ。キャンペーンはまた、HIV陽性者に対すでにスティグマと差別に一段と拍車をかけるようなHIV感染にまつわる嘘を一掃することも期待している。体内のHIV量が検出限界以下に抑えられているHIV陽性者の感染性に関する誤った情報のために、そしてHIV陽性者の非感染性を示すエビデンスを知らないために、HIV陽性者を犯罪者として扱う国が数多く存在し、不当な法の適用がなされてもいる。

 良質の科学と強力なエビデンスに支えられているとはいえ、U=Uキャンペーンのメッセージに対しては泣き所を突かれるような懸念を感じているアクティビストもいる。キャンペーンは恐怖を広げることになり、HIV陽性者をもともと(いまは抑えられているが)病気のベクター(媒介者)としてしか見ないような規範的な考え方を追い散らすのではなく、むしろ強化するのではないかと考えるからだ。

 もっとはっきり言えば、「私たちを恐れないでほしい、受け入れてほしい。なぜならば私たちからはもう感染しないのだから」という啓発のメッセージは、すべてのHIV陽性者の解放に力を与えるような言説にはならないからだ。

 過去36年間、世界中のHIV陽性者およびキーポピュレーションのコミュニティは、恐怖とスティグマと差別に正面から取り組み、闘ってきた。自らの存在を明らかにし、圧制に抗い、人権と平等と正義を求め、力を集めることでその闘いを続けてきた。世界中の何百万というHIV陽性者が、ウイルス量とかかわりなく、受け入れられることを求め、私たちを取り巻く恐怖と闘ってきたのだ。治療を受けていようと、いまいと、私たちは性パートナーとして恐怖の対象とされる存在ではない。

 自分のウイルス量を知ることのできない状態にあるコミュニティのメンバーからも、キャンペーンは懸念を持たれている。世界中の何百万というHIV陽性者が検出限界以下のウイルス量を切望しながら、治療へのアクセスがなかったり、治療の中断をしばしば余儀なくされたり、ウイルス量を検査することができなかったり、執拗なスティグマや差別や暴力に苦しめられていたりといった理由で、その状態を実現できていない。U=Uキャンペーンは、よくて見当外れ、悪くすれば、世界中の大半のHIV陽性者が直面する社会的、政治的、経済的現実を蔑視するようなキャンペーンになってしまうだろう。

 口先だけのマーケティングは別にして、HIV陽性者が必要とし、望んでいるのは、陽性を病気のベクター(媒介者)と見なすようなレトリック(すなわち、私たちはあなたが病気を広げないようにするため、あなたたちとともに働きます)が復活することではない。そうではなく、私たちの健康と安全と幸福を第一に考え、性パートナーとしても、同僚としても、仲間または友人としてもHIV感染を理由に恐怖の対象とされるいわれはないということを再確認するメッセージなのだ。治療を受けているかどうか、あるいは検出限界以下かどうかということに関わりなくである。

 HIV陽性者は予防としての治療キャンペーンを必要としている。何よりもまずあなたが生きるために必要であり、他の感染症にかかるのを防ぐことができ、そしてイエス、あなたの治療によってHIV予防の利益も受けられる。だから治療を受けようというメッセージを大胆かつ明確に広げる必要があるのだ。

 GNP+は恐怖を持つことなくHIV陽性者を受け入れるメッセージを支持する。HIVの流行を止め、すべての人の健康と安全と幸福を守ることを本当に実現しようとするなら、エビデンスに基づく保健対策と人権政策、HIV陽性者に向けられ、陽性者が経験してきた恐怖やスティグマ、差別、暴力をなくすためのプログラムとその実践が不可欠になる。

 GNP+は各地域や国におけるHIV陽性者のネットワーク組織のネットワークとして1986年に編成された。現場のHIV陽性者の声とニーズを世界につないでいる。また、HIV陽性者のネットワーク、および若者を含むより広いキーポピュレーションのコミュニティや人びとの能力向上にも取り組んでいる。GNP+はHIV陽性者のための包括的な治療、ケア、支援のプログラムとサービスを求めるアドボカシー活動と協力して、スティグマ、差別、人権侵害に取り組んでいる。

 

 

 

On Fear, Infectiousness & Undetectability

 

Ten years ago the notion that a person living with HIV (PLHIV) on antiretroviral therapy (ART) with an undetectable viral load for at least six months (without any other sexually transmitted infections) had reduced the possibility of HIV transmission to negligible levels, was unproven.

 

Not anymore, major research advances in biomedical HIV treatment and prevention science; continuously and conclusively demonstrate the increased need for and power of antiretroviral medication in the prevention of HIV – including treatment as prevention and PrEP.

 

Capitalizing on these recent developments, the U=U (Undetectable = Untransmittable) campaign, sponsored by the Prevention Access Campaign and founded by a number of prominent HIV activists from the U.S., is aiming to spread much needed public awareness about the effectiveness of treatment as prevention of HIV. The campaign also hopes to dispel falsehoods about the transmission of HIV that exacerbates existing stigma and discrimination faced by PLHIV. Misinformation about the infectiousness of PLHIV with undetectable viral load, and/or lack of knowledge of the evidence that shows the un-infectiousness of PLHIV also contributes to the overly broad and inappropriate application of criminal law against people living with HIV in many countries.

 

While backed by good science and strong evidence, concerns with the messaging of the U=U campaign has really hit a nerve with some activists who feel that it traffics in the currency of fear, and builds-on rather than dispels normative assumptions about the bodies and identities of PLHIV as nothing more than primary (albeit, controlled for now) vectors of disease.

 

To put it more bluntly, the public message of “don’t fear us, accept us, because some of us aren’t infectious anymore,” may not be an empowering liberation discourse for all PLHIV.

 

Over the last 36 years, people living with HIV, and key population communities around the world, have been addressing and challenging fear, stigma and discrimination head-on. We have done this by unveiling our identities, resisting oppression and collectivizing our intersectional struggle for human rights, equality and justice. Millions of people living with HIV around the world are demanding acceptance and challenging those afraid of us, irrespective of our viral load. We are not to be feared of as sexual partners, whether or not we are on treatment.

 

The campaign has also raised concern among community members who live in contexts where knowing one’s viral load is not an option. For the millions of PLHIV around the world who are unable to achieve the coveted status of undetectability, due to a lack of access to medication, frequent treatment interruptions, the unavailability of viral load testing, and/or pervasive and debilitating levels of stigma, discrimination and violence, the U=U campaign is, at best, irrelevant and, at worst, myopically dismissive of the social, political and economic realities that most PLHIV around the world face.

 

Slick marketing aside, what PLHIV need and want is not a revival of the rhetoric of PLHIV as vectors of disease (i.e. we work with you so that you don’t spread the disease). Rather what PLHIV need and want is validation that first and foremost our health, safety and wellbeing is prioritized and messages that reaffirm that we are not to be feared as a sexual partner, colleague, peer or friend due to our HIV-positive status, whether or not we are on treatment or undetectable.

 

PLHIV need treatment as prevention campaigns that boldly and unequivocally advance the messages that first and foremost take your treatment because YOUR life matters the most, you can protect yourself from other infectious diseases and yes you can also enjoy HIV prevention benefits from treatment.

 

GNP+ supports the message of acceptance of PLHIV without fear. A meaningful commitment towards stemming the HIV epidemic and securing the health, safety and wellbeing of all cannot be met without the promotion of evidenced based health and human rights policies, programmes and practices that aims to eliminate the ongoing fear, stigma, discrimination and violence directed towards, and experienced by, PLHIV.

 

Incorporated in 1986, GNP+ is a network of networks and members that engages with people living with HIV regionally and nationally. We channel the voices and needs of people living with HIV on the ground to the global level. We also work to identify and address the capacity building needs of networks of people living with HIV and people who are part of broader key population identities and communities, including young people. GNP+ addresses stigma, discrimination and human rights violations in tandem with advocacy for greater access to comprehensive and integrated treatment, care and support programmes and services for all people living with HIV.