『高速対応 2030年のエイズ流行終結に向けた10の約束』の日本語仮訳PDF版 第2回エイズ・性感染症に関する小委員会報告番外編

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)のパンフレット『高速対応 2030年のエイズ流行終結に向けた10の約束』の日本語仮訳PDF版がAPI-Net(エイズ情報ネット)にアップされました。昨年6月の「エイズ終結に向けた国連総会ハイレベル会合」で採択された政治宣言の約束を10項目にぎゅっと圧縮した超要約版です。

 http://api-net.jfap.or.jp/status/pdf/10promises.pdf

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 PDF版画像をこのサイトでアップする方法が分からないので、表紙は英語版で我慢して下さい。悪しからず。

 

 2030年のエイズ流行終結(実は「公衆衛生上の脅威としての流行の終結」なんだけど、まるめて言うときはこうなっちゃいます)は持続可能な開発目標(SDGs)にも含まれているHIV/エイズ分野の大目標であり、ハイレベル会合の政治宣言では、2030年の目標達成の前提としてまず、2020年までの「高速対応」が必要です・・・ということが全加盟国の共通認識となりました。その「高速対応」実現に必要な数々の約束の圧縮版である10項目をさらに圧縮して項目だけここに紹介しておきましょう。

 

1  抗レトロウイルス治療の普及(90-90-90)

HIV母子感染をなくす

3  コンビネーション予防(PrEPを含む)

ジェンダーの不平等の解消

5  少女、若い女性のHIV感染予防とリプロダクティブヘルス・ライツ

HIVに配慮した社会保障

7  コミュニティ主導のサービス(30%)

8  投資拡大(年間260億ドル)

9  社会的、法的権利の保障

10 ユニバーサルヘルスカバレッジエイズの孤立からの脱却

 

高速対応の目標(2020年)、とりわけ90-90-90目標が実現した暁には、世界のHIV/エイズの流行は以下のようになります。

 年間の新規HIV感染者数50万人以下

 エイズ関連の死者50万人以下

 HIV関連のスティグマと差別をなくす

 

 さらに、2030年の「エイズ流行終結」(しつこいようだけど、公衆衛生上の脅威としての流行終結)とはどんな状態かというと、90-90-90をさらにグレードアップして95-95-95を目指しています。その95-95-95が実現すると、世界のHIV/エイズの流行は以下のようになります。

 年間の新規HIV感染者数20万人以下

 エイズ関連の死者20万人以下

 HIV関連のスティグマと差別をなくす

 

 私の怪しげな計算では実は、この目標を日本の人口に換算すると、新規感染もエイズ関連の死者も年間3000人弱となり、3番目の「HIV関連のスティグマと差別をなくす」を除けば、日本は今後、国際社会が目指す(そして、おそらく達成は困難であろうと思われる)ポスト95-95-95の世界という未体験ゾーンでHIV/エイズ対策を進めていかなければなりません。正直言って、これはかなり厳しいタスクです。

 目先の成果を急ぐ余り、カスケード戦略の数字を振りかざして「検査普及にはどうすればいいか」という議論が、(必要な議論ではありますが)変な方向にねじれていくと、かなり危うい主張がまかり通ってしまう懸念もなしとはしません。曲がりなりにも、何とか、やっとの思いで実現されてきた成果ですら、その成功の土台を破壊されかねない状態です。

 医学の進歩と全国の医療従事者の献身、そして、コミュニティセンターやNPO、陽性者グループを中心にした社会的な文脈の中での努力は本来、対立するものではなく、相互に補完する関係を認めあい、尊重しあってこそ、それぞれの成果の最大化と相乗効果が期待できるというものでしょう。コンビネーション予防の真意もおそらくそこにあります。

 ということで、お節介なようですがひと言、ふた言、三言・・・くどいね。詳しくはまた、エイズ性感染症に関する小委員会報告の中で、90-90-90の紹介とあわせて説明したいと思っています。ますますくどいけれど悪しからず。