第2回エイズ・性感染症に関する小委員会報告2 発生の予防及びまん延の防止(前置き的感想)

 あらかじめ言い訳です。すいません。説明がだらだらと長くなるのは、すきっと理解できていないからでしょうね、きっと。1月23日に厚生労働省で開かれた第2回エイズ性感染症に関する小委員会の報告の続きです。要領を得ない感想を書き連ねた文章で恐縮ですが、せっかく傍聴したので感想も含めて記録に残しておきたいということで、ご容赦ください。

 

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 「医療の提供」に続き、エイズ予防指針に関しては、発生の予防及びまん延の防止①(普及啓発及び教育)、発生の予防及びまん延の防止②(検査・相談体制)、発生の予防及びまん延の防止③(その他)の検討に入りました。

 性感染症予防指針の方はすっきり「発生の予防及びまん延の防止」だけです。

 どうしてエイズ予防指針だけ①、②、③といったまわりくどいことになっているかいうと、感染症法では「特定感染症予防指針」の項目立てというのが決まっているから、9項目のうちのいくつかがこうなっちゃったようです。

 小委員会で事務局(厚労省)から、法律で決まっていますので・・・といった趣旨の説明があり、え、そうなの?と実は私もあわて感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)を調べてみたら、第11条にこう書かれています。

 

(特定感染症予防指針)

第十一条  厚生労働大臣は、感染症のうち、特に総合的に予防のための施策を推進する必要があるものとして厚生労働省令で定めるものについて、当該感染症に係る原因の究明、発生の予防及びまん延の防止、医療の提供、研究開発の推進、国際的な連携その他当該感染症に応じた予防の総合的な推進を図るための指針(次項において「特定感染症予防指針」という。)を作成し、公表するものとする。

 

 つまり、予防指針の項目立ては、「原因の究明」「発生の予防及びまん延の防止」「医療の提供」「研究開発の推進」「国際的な連携」というのが法で定められた基本形なのですね。もちろん、「その他当該感染症に応じた」対応は可能なので、エイズ予防指針は9項目立て、性感染症予防指針は6項目立てになっているという経緯でしょうか。

 したがって、エイズ予防指針と性感染症予防指針の両方を同じ委員会で検討すると、項目に①②といったナンバーをふって議論の足並みをそろえていくような工夫も必要になのかもしれません。事務局のご苦労がしのばれます。

 ③が(その他)になっているのは「PrEP」という新たな予防の選択肢が登場し、国際的には「PrEP」普及ムードが、がしがし(個人的にはこの語感です)高まっているのに見てみないふりをするわけにもいかない。医療的管理の届かないところで、勝手に始めてしまう人が増えるのも困るので、どこまで導入できるのか、導入するとしたらどんなかたちかといった研究ぐらいはスタートさせましょうということになるのではないか。これはあくまで、私の憶測レベルの推測です。

 感染症を取り巻く環境は、様々な要因によってダイナミックに変化するからこそ、5年に1度ぐらいは全体の方向性を再検討し、細部の微調整や場合によってはそれなりの大修正も必要になります。

 とくにHIV/エイズに関しては現在、「2030年のエイズ流行終結をめざす」という国際的な掛け声は勇ましいものの、世界全体の新規感染は年間200万件前後というかなり高いレベルで横ばいの状態のまま過去5年間、推移してきました。治療の普及を進めれば新規感染は減少していくといった期待通りの成果には、少なくとも直近5年間では結びつかなかったということです。

 その中で日本はどうなのかというと、実は国際的に見ると、希有といっていいほど感染の拡大が低く抑えられている国です。ただし、それでもなお新規HIV感染者・エイズ患者報告はこの10年間、毎年1500件前後で推移しています。

 逆に言えば、10年前に何とか拡大傾向に歯止めをかけ、報告ベースで横ばいの状態を維持してきたということでもあるのですが、明確に流行が縮小軌道に転じたとも言い切れません。そんな微妙な結果(成果といいたいけれど、結果かな)をどう評価し、次につなげていくのか。

 つまり、現行予防指針のもとでのこの5年間は対策がうまくいっていたのか、いないのか、評価は微妙に分かれるといいますか、現場でもなかなか評価しがたい分岐点状態が続いています。環境がもう少し整っていれば、もっとできたのにという思いは強い。ただし、この厳しい環境となけなしの資金の中で、よくやってきたよといいたい思いもまたNPO関係の皆さんの間では強いのではないか。T as Pといったって、それがなければ成立しません。少々、傍観者的な立場から見てきた印象では、そう感じています。

 そうした道半ば感覚の中で、今回の見直しが国際的な動向もウォッチングしていきつつ、国内では何が必要なのかを見極めていく、あるいは布石を打っていくことになるのかどうか。しかも、社会的には「最近はあまり話題にならないし、もう終わったんじゃないの」と言われることもあるほど対策への関心が低い中で、それは可能なのか。その最大の焦点となるのが「発生の予防及びまん延の防止」①②③ということなのではないか・・・あっと、行数稼ぎというか(稼いでもなんにもならないけど)、またまた脱線して独りよがりの感想に終始しているうちに夜も更けてきました。

 PrEPももちろんそうですが、ほかにも「発生の予防及びまん延の防止」①②③には、OPT-OUT検査、90-90-90など注目したい新たな論点がたくさんあり、傍聴席に座っているとついつい手を上げて口をはさみたくなってしまうので、その気持ちをぐっとこらえ黙って聞いているのもけっこう大変でした・・・ということで、そのあたりは次回。下手なワイドショーの演出みたいに引っ張って申し訳ありません。