「101回目のプロポーズ」というTVドラマがむかし、ヒットしましたね。100回の大きな節目をなんとか迎え、やれやれと思うと同時に、101回目には新たな出発といいますか、これからも続けるぞという勇気のようなものもわいてきます。
特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行しているTOP-HAT Newsも昨年12月に発行第100号の節目を迎えました。やれやれ。バックナンバーはHATプロジェクトのブログでご覧いただけます。
最近は毎月発行なので、もう第101号の締切りが迫ってきました。焦るなあ。やれやれと思う暇もありません。それでもまあ、忙中閑ありと申しましょうか、一つ深呼吸をして、新企画をスタートさせました。同じく東京都の委託を受けてエイズ&ソサエティ研究会議が運営するHIV/エイズ総合情報サイト《TOP-HAT Forum 東京都HIV/AIDS談話室》の資料室欄でご覧ください。
http://www.tophat.jp/material/d.html
読んで字のごとしといいますか、疾きこと風のごとしといいますか、毎回の巻頭の記事だけ集めてみると、そこからエイズ対策の流れが案外、見えてくるのではないかという安易な発想に基づく企画です。でもね、安易なわりにけっこう役に立つのよ、これが・・・。
とりあえず
その1(2006年6月~11月)
その2(2007年2月~2008年9月)
その3(2008年11月~2009年9月)
の3回に分けて、第1号から第15号までをアップしました。見出しも紹介しておきましょう。
その1
・世界も東京も 第1号(2006年6月)
・中国の現状は? 第2号(2006年7月)
・エイズ動向委員会報告から何を読むか 第3号(2006年9月)
・第20回日本エイズ学会が東京で開かれます 第4号(2006年11月)
その2
・広がる危機 第5号(2007年2月)
・12月1日は世界エイズデー 今年で20回目です 第6号(2007年11月)
・世界のHIV陽性者数は3320万人 国連が新たなHIV/エイズ推計を発表 第7号(2008年1月)
・過去最高1448人 昨年の新規HIV感染者・エイズ患者報告速報値 第8号(2008年2月)
・アジアはどう闘うのか アジアエイズ委員会が報告書『アジアのエイズ再定義』 第9号(2008年8月)
・セプテンバーショック 第10号(2008年9月)
その3
・東京都がエイズ対策でパブリックコメント募集(第11号 2008年11月)
・金融危機の世界とHIV/エイズ対策(第12号 2009年1月)
・東京都エイズ専門家会議が「最終報告」(第13号2009年3月)
・新型インフルエンザ報道とエイズ対策(第14号 2009年5月)
・ケープタウン会議から(第15号 2009年7月)
第14号の2009年5月当時は、新型インフルエンザの流行が国内ではまだそれほど広がっていなかったのに社会的な不安は目一杯広がった時期でした。少し引用します。
《感染症に関して洪水のように報道があふれ出す「報道洪水期」には、時期も対象となる疾病も異なっているのに、どこか共通する気分が世の中に広がっていきます。端的に言えばそれは、感染した人の排除が強調され、病を得て困難に直面している人に対する想像力が著しく失われていく結果ではないでしょうか。恐怖と不安の感情に乗っかった(場合によっては、便乗した)ような報道がそれに拍車をかけます》
いまから30年前の1987年1月17日には、厚生省のエイズサーベイランス委員会(現厚労省エイズ動向委員会)で、わが国初の女性のエイズ症例が確認され、それがきっかけになって国内で「エイズパニック」と呼ばれる混乱がありました。社会部の厚生省担当記者としてその渦中にいた私には、あのとき『感染した人の排除が強調され、病を得て困難に直面している人に対する想像力が著しく失われていく』かたちの報道に終始してしまったという記憶があります。
忘れたい記憶ではありますが、新聞の記事は残っています。忘れるわけにはいかないでしょう。
同じようなことは、SARS報道や新型インフルエンザ報道やエボラ報道でも繰り返されてきました。それぞれの時期に焦点となる疾病は異なっていても、社会の対応は不思議なほど良く似ています。
個人的にはエイズ報道の経験の蓄積があったおかげで、SARSや新型インフルエンザやエボラでは、自分はあまりひどい報道はしなかったという自負も秘かにあります。
それでも、次に何かが起きたときには、どうなのか。
これまでの経験から得られた苦い教訓が生かされる対応でありたいとは思っていますが、なにせ世の中の動きに流されやすいタイプのおじさん層なので、実際にはそのときになってみないと分からない面もあります。その意味でも、落ち着いていられるときに記録や記憶を整理しておくことは大切ですね。皆さんもどうか、《「はじめに」で綴るエイズ対策史》をときどき覗いていただくよう、よろしくお願いします。