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【世界エイズデー】治療と支援で流行終結を

 もうすぐ・・・ということで11月28日付け産経新聞に掲載された主張(社説)です。

 

世界エイズデー】 治療と支援で流行終結を

 12月1日の世界エイズデーは、世界で最も知名度の高い記念日といわれることがあった。だが、最近はその知名度が低下してきた。抗レトロウイルス治療という治療法が進歩し、エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した人が長く生きられるようになったからだ。

 最近の研究では、この治療法がHIV感染の予防にも高い効果があることが確認されている。

 抗レトロウイルス治療は、HIV陽性者(HIVに感染している人)の体内からウイルスを完全に除去することはできない。つまり完治は望めないのだが、服薬を続けていれば体内のウイルス量が大きく減り、他の人への感染リスクが極めて小さくなる。

 こうした医学的成果を踏まえ、日本を含む国連加盟193カ国は今年6月、国連総会で2030年に「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結」を目指す政治宣言を採択した。

 2030年の年間新規HIV感染件数を現在の10分の1の20万人以下に減らす。そうすればエイズの流行は「公衆衛生上の脅威ではなくなる」という考え方だ。

 国連の推計では現在、世界のHIV陽性者数(3670万人)のほぼ半数の1820万人が必要な治療を受けている。この5年で1000万人近く増えたという。

 だが、予防を治療だけに頼ることはできない。実際に最近5年間の成人の新規感染者数は、治療の普及にもかかわらず、年間190万人で横ばいのままだった。

 「予防としての治療」には落とし穴もある。感染リスクを下げるセーファーセックスなど他の予防策や、治療を受けながら生活を続けるための就労など、社会的な支援策の予防効果を軽視する結果になりかねない。

 日本はこの10年、年間の新規HIV感染者・エイズ患者報告数が1500件前後で推移し、国際的には極めて低い水準で、エイズ対策の成功国として評価されることも多い。だが、横ばいが減少に転じたわけではない。この点では世界と同じ課題を共有している。

 「予防としての治療」の実現には、その入り口でHIV検査の普及が不可欠だ。ただし、そのためには感染を心配する人が安心して検査を受けられるような「予防としての支援」の対策が必要なこともあわせて認識しておきたい。