Week3は「検査を受け、ウイルス量を抑える」 UNAIDS世界エイズデーキャンペーン

 世界エイズデー(12月1日)が近づいてきました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)のキャンペーン《Hands up for #HIVprevention》はWEEK9、WEEK8 ・・・とカウントダウン式に週替わりテーマが設定されていて、14日(月)からは WEEK3(TESTING VIRAL SUPPRESSION) に入りました。

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 いよいよT as P(予防としての治療)の核心ですね。「検査を受け、ウイルス量を抑える」と訳しました。ただし、これは中間が2つほど抜けています。

 「検査を受け自らの感染を知る」→「治療につながる」→「開始した治療を継続する」→「体内のHIV量が検出限界以下に抑えられる」という構図ですね。

 ウイルス抑制が果たされていれば、HIVに感染している人から他の人にウイルスが感染するリスクが大きく減少する。したがって検査の普及と治療の提供、継続が高い予防効果をもたらし、2030年には「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行」の終結が果たせる。

 そう図式通りには・・・といったことはこの際、言わないようにしましょう。治療が重要な予防の選択肢でもある。このこと自体に異論を差し挟む余地はありません。

 ただし、それだけですべてが解決するような単一の予防策はない。T as Pもあくまでコンビネーション予防を構成する予防策の中の有力な選択肢の一つという位置づけです。他の予防策は無視して治療提供だけで問題が解決できるなどと考えたら、手痛いしっぺ返しを食うことになるでしょう。

 また、期待する図式通りにいく、あるいは図式に近づくためには、何が必要か。この辺りのことを考えることも大切です。

 「T as P」には、HIV感染を心配する人が安心して検査を受けられるようになること、そしてHIVに感染した人が治療を続けながら働いたり、勉強したりといった社会生活を続けていけるようになること・・・といった社会条件の整備が不可欠になるからです。

 「T as P」に期待すると同時に、その前提条件となる「予防としての支援」(S as P=Support as Prevention)の重要性も改めて強調しておく必要があります。

 前置きが長くなりました。以下、UNAIDSキャンペーンサイトに掲載された《Testing viral suppression》の要約説明の日本語仮訳です。

 

www.unaids.org

検査を受け、ウイルス量を抑える 2016.11.14

 抗レトロウイルス治療を確実に続けることで、HIV陽性者の体内のウイルス量は検出限界以下に抑えることができます。他の人にHIVというウイルスが感染するリスクを大きく減らすことができるのです。一つのコミュニティで、HIV陽性者の大多数が抗レトロウイルス治療を受けていれば、そのコミュニティ内に予防効果が現れることになります。これまでのHIV予防手段の普及向上をはかると同時に、UNAIDSの90-90-90ターゲットを2020年までに実現することで、2030年のエイズ流行終結は現実になり得ます。90-90-90ターゲットとは、HIV陽性者の90%が自らのHIV感染を知り、そのうちの90%に治療のアクセスが確保され、さらに治療を受けている陽性者の90%がウイルスリ量を低く抑えられるようになることです。

 しかし、世界は90-90-90達成にはまだ大きなギャップを抱えています。2015年現在、自らの感染を知らないでいるHIV陽性者が約1190万人、抗レトロウイルス治療が必要なのに受けていない人が1270万人、ウイルス量が抑制されていないHIV陽性者は1300万人と推定されています。

 

 

Testing viral suppression

14 November 2016

 

Strong adherence to antiretroviral therapy suppresses viral load to undetectable levels within people living with HIV, greatly reducing the risk of transmitting the virus to others. When large proportions of people living with HIV within a community are on treatment, it has been shown to have a preventive effect within that community.  Achievement of UNAIDS 90–90–90 treatment target by 2020 alongside high coverage of primary HIV prevention interventions can make the end of the AIDS epidemic a reality by 2030. The 90-90-90 treatment target means that 90% of people living with HIV know their HIV status, 90% of people who know their HIV status are accessing treatment and 90% of people on treatment have suppressed viral loads.    

 

However, the global gap in achieving the 90-90-90 target in 2015 was around 11.9 million people living with HIV who did not know their HIV status, 12.7 million people in need of antiretroviral treatment and 13.0 million people living with HIV who were not virally suppressed.