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第5部「スポーツとHIV」 スポーツコミュニティのためのHIV/エイズ教育ツールキット6

 少し時間があいてしまいましたが、国際オリンピック委員会IOC)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)によるHIV/エイズ教育のツールキットについて、紹介を続けます。今回は第5部「スポーツとHIV」です。第4部同様、かなり長いセクションですが一挙に掲載します。興味深い記述がどっさりあって、引用しようと思うと、まさしく枚挙にいとまがないという感じですね。

 『数多くのHIV陽性のチャンピオンがHIV啓発、およびHIVエイズに関連したスティグマと闘うために活動しています』

・ アーサー・アッシュ テニスチャンピオン、米国

・ グレッグ・ルガニス オリンピック水泳飛び込みで5つの金メダル、米国

・ マジック・ジョンソン NBA選手、五輪金メダリスト、米国

・ ロブ・マッコル アイスダンスペア、五輪銅メダリスト、カナダ

・ ロイ・シモンズ 元NYジャイアンツ選手、全米フットボールリーグ(NFL)、米国

・ ルディ・ガリンド フィギアスケートチャンピオン、米国

・ トミー・モリソン ヘビー級ボクサー、米国

 『他にもHIV啓発、HIVにまつわる偏見の解消、予防などのメッセージを積極的に呼びかけてきたスポーツ関係者はたくさんいます。たとえば』

・ ブリッタ・ハイドマン ドイツ、フェンシング五輪銅メダリスト

・ キャシー・フリーマン オーストラリア陸上トラック・フィールド五輪金メダリスト

・ ディケンベ・ムトンボ コンゴ民主共和国バスケットボール選手、UNDPユース特使

・ ドイツ4×400メートルリレーチーム:ジャナ・ニューバート、アンケ・フェラー、クロ―ディア・マルクス、クロ―ディア・ホフマン アテネ五輪

・ ゲオルゲ・ハジ ルーマニア最高のサッカー選手

・ フランク・フレデリックス ナミビア陸上トラック・フィールドで4つの銀メダリスト

・ ルイス・フィーゴ ポルトガルの国民的サッカースター

・ マシュー・ビンセント 英国、ボート選手、4つの五輪金メダリスト

・ ニコ・モチュボンとハイク・ヘンケル ドイツの走り高跳び金メダリスト

・ ロナルド ブラジルのサッカー選手、UNDP親善大使、世界エイズキャンペーン特別代表

・ ヤピン・デン 中国卓球スター、4つの五輪金メダリスト

・ キプチョゲ・ケイノ ケニア、陸上中距離で2つの五輪金メダリスト

・ ナワル・エル・ムタワキル モロッコ、400メートルハードル五輪金メダリスト

  『ツールキットには、これらのスポーツ選手のメッセージが掲載されています』

 誰がどんなメッセージを伝えているのか、ぜひ探してみてください。

 

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第5部 スポーツとHIV

 

5.1 HIVが運動に及ぼす影響、運動がHIVに及ぼす影響

 

 5.1.1 運動がHIVに及ぼす影響

 スポーツへの参加がHIV陽性者に好影響を与えることは広く認められています。適度の運動は免疫システムを強化し、HIVと闘えるように身体を整え、エイズの発症を遅らせるでしょう。90%以上のHIV陽性者が自分の感染について知らないことを考えると、コミュニティでスポーツを楽しみ、運動を推奨することは、自らのHIV陽性に気付いていない多くの人の免疫の力を高めることになります。

 

 運動はHIV陽性者が長期生存者になるためのゲームプランの一部です。毎日の運動はHIV陽性者にとって、循環器系の機能を高めるだけではありません。心理検査によると、スポーツは抑鬱や疲労、ストレス、怒りなどを減らし、活力を増やして、HIV陽性者の生活の質を改善する効果が明確に示されています。運動は病気ではなく、健康への関心を高めることになります。

 

 スポーツはまたHIV陽性者にとって極めて重要な社会参加と支援の場を提供しています。さらに、あまり活発ではないHIV陽性者とコミュニティの両方に対し、HIVに感染しても世界が終わってしまうわけではないということを示ものでもあります。

 

 スポーツはまた、ボランティア活動のような大切な価値を育てる場を提供することにもなります。スポーツにおけるボランティアは個人の時間を投資し、新たな価値を生み出すことで、連帯の力を表わすものです。こうしたボランティアの存在が示す献身やなにかに貢献したいという願いが、ボランティア自身やスポーツ、そして社会全体に利益をもたらすことになります。それがボランティアで活動することの価値です。

 

 HIV陽性か陰性かは問題ではありません。勝利に向けたプレッシャーなどというものは一切、抜きにして、スポーツは一緒に楽しむことができます。スポーツは精神的にも肉体的にも、健康にいいものであり、あなたの気持ちを楽にし、自信を持つことができるようなものであるべきです。

 

 5.1.2 HIVが運動に及ぼす影響

 HIV陽性者にとっては、身体を動かすことは、たとえば競争の激しいチーム競技の選手や肉体誇示とは異なる意味をもつものです。HIV感染によって肉体が不安定になることもあります。いわゆる「健康」な人なら見過ごせるような小さな症状でも心配になります。「自分の身体がどうなっていくのか、どうすればいいのか」という疑問は、新たな意味を持ってくるのです。たまたま疲れた思うことも、異なる意味をもって受け止めなければならないかもしれません。

 

 抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者は新たな課題に直面することになります。服薬に伴う体調の変化や副作用にどう対応していくのか。運動の習慣によって副作用に好影響を与えることもできます。スポーツによって自分の身体に対する自信が生まれ、筋肉の衰え、脂肪の蓄積の変化、高コレステロール、代謝異常、骨粗鬆症などに対処することができます。スポーツはあなたに好影響をもたらします。

 

 いくつかの質問です。

・ あなたは何ができると思いますか?

・ グループで運動を行うのはどんな感じですか? 孤独感を解消できますか?

・ スポーツの後で気分はよくなりますか?

 

 「この瞬間のために、私は十分に準備をしてきました。ジャンプはできます。HIV関連の貧血による疲労で動きが落ちることもありません」

 ルディ・ガリンド 米国 フィギアスケートチャンピオン HIV陽性

 

5.1.2.1 HIVに伴う症状がないときは?

 たとえば、低い負荷で繰り返す筋力運動プログラムなどで筋肉をつけたり、サイクリング、ウォーキング、ジョギング、水泳、エアロビクスなどで持久力を養ったりするスポーツで身体的な効果が十分に得られます。

 

 ボクシングやテコンドーのような格闘技は出血に伴う感染のリスクがわずかながらあるかもしれないし、上記のような効果はあまり期待できないでしょう。

 

5.1.2.2 HIV感染に伴う症状が出ているときには?

 疲労の元にならないのなら、あなたが選んだスポーツをやめる理由はありません。上記の通常の運動が免疫システムにストレスを与えることもあるので、その点を考慮しながら、何をどこまでやるのかを最も適切に判断できるのは自分自身であう。もう一度、言えば、サイクリング、水泳、エアロビクスなどは望ましい効果をもたらしてくれるでしょう。軽い負荷をかける運動も価値があります。

 

 フットボールやバスケットボールなど激しくぶつかり合ったり、ある程度もみあったりするコンタクトスポーツや格闘技では、小さいながらもHIV感染のリスクがあるかもしれないし、あなたの負傷のリスクを増すことになるかもしれません。

 

 瞬間的な失神や脳トキソプラズマ症、けいれんといった神経系の症状があるときはスキューバダイビング、パラシューティング、モータースポーツなどは、症状を悪化させるおそれがあり、非常に危険です。

 

 5.1.2.3 HIV陽性者に有害なスポーツは

 すでに言及したものの他に、通常の動きを超えた極めて集中的なトレーニングでは、免疫システムの負荷が大きくなり、有害な影響が出るかもしれません。出血を伴うスポーツはHIVや肝炎ウイルスのように血液感染するウイルスの感染リスクが小さいけれどあります。

 

 5.1.2.4 一緒にスポーツをする人に自分の感染を伝える必要はあるのか

 そのようなことは求められていません。ただし、通常の範囲を超えた厳しいトレーニングが求められるような場合には、トレーナーやコーチに伝えておく方が、あなたにとってプラスになる場合もあります。あなたから打ち明けられた人には秘密を守る義務があります。選手にHIVのスクリーニング検査を行うことは正当化できません。

 

 5.1.2.5 HIV感染のリスクを最小化するにはどうすればいいのか

 皮膚の傷や感染、痛みなどがあれば、医師のアドバイスを受けてください。プレーを再開するのは治るまで待ちましょう。スポーツ中に出血が続くのなら、退場して直ちに治療を受けてください。そして、防水性のある布で葛口を覆ってください。繰り返しますが、プレーの再開はケガが完全に治ってからにしてください。

 

5.2 スポーツの場におけるHIV感染リスクの最小化

 スポーツにおけるHIV感染のリスクは小さなものです。ほとんどのHIV陽性の選手は、スポーツ以外の場所でHIVに感染しました。スポーツにかかわる人のすべてにも同じことが言えます。しかし、スポーツによる感染の可能性が小さいとしても、血液感染には適切なプレコーション(予防措置)をしておく必要があります。

 

 ほとんどの国がHIVに感染しているかどうかを開示する必要はないという方針を公式にとっています。スポーツに参加するからといって、HIVに感染していることを明らかにする義務はありません。ただし、レスリング、ボクシングといったスポーツへの参加を強くお勧めすることはできません。非開示の方針は、スポーツの場で負傷した場合、どんな人に対しても常に、その人がHIVに感染していることもあり得るという前提でユニバーサル・プリコーションを行うということでもあります。

 

 スポーツの場、とりわけ直接のコンタクトや出血が予想されるスポーツの場では、HIVや他の血液感染ウイルスの感染リスクを最小化するためにできることはたくさんあります。たとえば:

 

・ HIVの感染はマウスピースやガムガード、スネ当て、肩パッド、適切な靴やヘルメットなどスポーツ用の防具を着けていないと感染しやすくなるかもしれない。コーチや役員は競技の際にこれらの防具の使用を積極的に取り入れていく必要がある。

・ スポーツの現場で負傷の手当などにあたる人はB型肝炎の予防接種を受けるべきである。

・ 負傷の対応にあたる人は誰であれ、血液に関するユニバーサル・プリコーションを守ることが重要である。

・ 体表についた血液その他の体液は次亜鉛酸ナトリウム溶液できれいに拭く。

 

 体が直接ぶつかりあったり、出血が予想されたりするスポーツであってもHIVの感染の可能性はもともと低いのですが、以下はオーストラリア全国エイズ協議会(ANCA)とオーストラリア・スポーツ医学連盟(ASMF)が、その可能性をさらに下げるために推奨している原則です。

 

・ 選手の皮膚に傷があることが認められたら、責任者に直ちに報告し、応急処置を行う。

・ 皮膚の傷が見つかったら直ちに適切な消毒液で洗い、安全に保護できるようにする。

・ 出血を伴うケガは、その選手の出血が止まり、十分な水、および汚れていたら石鹸できれいに傷口を洗ってから、防水性のカバーで覆う処置が終わるまでは、退場していなければならない。

 

(囲み5) 出血時の対応

以下の方法は難しいものでも、費用がかかるものでもありません。すべての選手、コーチ、トレーナー、救急処置担当者が実行すべきである。この方法を知っておくことができるよう、更衣室や救急キットの近くに張り出しておいてください。

 

・ 出血時に最初に対応する人は常に防護用の手袋を着用して処置にあたる。

・ 皮膚が破れていたら、石鹸と水、またはアルコールベースの消毒液で洗う。汚れたタオルは再使用しない。

・ 服に血が着いていたら、傷の手当ての後できれいな服に着替える。ゴム製手袋を着けて扱い、消毒液につけてから、お湯を使って家庭用洗濯機で洗う。

・ 血液が皮膚に付いたら、傷やすりむけがあるかどうかに関わりなく、石鹸と水でよく洗う。汚れたタオルは再使用しない。

・ 血液が目に飛び散ったら、目を開いて水か生理食塩水で、やさしく、しかし入念に洗う。

・ 血液が口に入ったら、すぐにはき出し、水で数回ゆすぐ。

・ さらに感染が心配なときには、医大付属病院やHIV感染の管理に十分な経験があるクリニックの医師に相談する。

 

 

 「私はブライアン・ライトを見ていた。HIV陽性のフィギアスケートの振り付け師だ。彼はあの性格だから、私を笑わせ、彼がやりたいように快活に振る舞った。私には彼が明確な目的を持って純粋に取り組んでいることが分かった。彼は正しくも自ら望むことを行った。すべての人が彼の生き方から学ぶべきだと私は思った」

 ミシェル・クワン フィギアスケート世界チャンピオン5回獲得。ブライアン・ライトが1993年にエイズで死去する前に、最後の振り付けを受けた。

 

 

5.3  ロールモデルとしての運動選手

 スポーツ選手、とりわけ成功したスポーツ選手はロールモデル(お手本)です。一挙手一投足を見張られるようなことは誰も望みません。ただし、それを厭う人がいたとしても、ロールモデルであることに変わりはありません。周囲の人たちは彼らの行動のすべてを見ています。仲間やトレーナーや、もちろん一般の人たちもすべてが、成功したアスリートはどのように行動し、それぞれの状況にどう対応するのかを見ているのです。そのようなロールモデルが何を行い、何を語り、どう対応するのかということが、他の教育では伝えられないようなかたちで直接、若者に伝わっていきます。ロールモデルは若者にとって、自らの能力を発見し、認識し、さらに成長していくためのお手本です。エイズ対策に関して言えば、アスリートの声は予防とケアのメッセージを伝える大切な手段なのです。

 

 HIVエイズに関連した差別のパラドクスの一つは、この流行が医学上の問題にとどまるものではなく、具体的な人が登場することによって初めて解消されていくということです。HIVエイズにまつわる偏見をなくすための最も有効な戦略の一つは、誰かが「私はHIV陽性です」とはっきり言うことなのです。HIV陽性のスポーツマン、スポーツウーマンが参加することは、それ自体がすでにHIVノーマライズし(注:等身大のものとして受け止め)、若者に対しても年配者に対しても、ロールモデルが存在することを示すという点で、極めて価値の高い行動であると言うことができます。

 

 HIV陽性であるかどうかにかかわりなく、HIV啓発に参加するアスリートはその名前を社会貢献に役立てているという意味でボランティア精神の生きた実例なのです。スポーツの世界に目を向ければ、さまざまな分野で未開発の膨大なボランティア資源が存在していることに気が付くでしょう。

 

 「私スケートが好きです。何もせずに家に閉じこもっているわけにはいきません。外に出ることで気分も晴れます」

 ルディ・ガリンド HIV陽性のフィギアスケートチャンピオン 米国

 

 数多くのHIV陽性のチャンピオンがHIV啓発、およびHIVエイズに関連したスティグマと闘うために活動しています。

・ アーサー・アッシュ テニスチャンピオン、米国

・ グレッグ・ルガニス オリンピック水泳飛び込みで5つの金メダル、米国

・ マジック・ジョンソン NBA選手、五輪金メダリスト、米国

・ ロブ・マッコル アイスダンスペア、五輪銅メダリスト、カナダ

・ ロイ・シモンズ 元NYジャイアンツ選手、全米フットボールリーグ(NFL)、米国

・ ルディ・ガリンド フィギアスケートチャンピオン、米国

・ トミー・モリソン ヘビー級ボクサー、米国

 

 「マジック・ジョンソンの発表は、エイズが白人だけの病気ではなく、ゲイの病気でもないということを示しました。それは非常に重要なことでした。人間として、アフリカ系アメリカ人として、HIV陽性者として、彼は注目すべきロールモデルになりました」

 フィル・ウィルソン ロサンゼルスのアフリカ系アメリカ人エイズ政策研修研究所創設者、米国

 

 他にもHIV啓発、HIVにまつわる偏見の解消、予防などのメッセージを積極的に呼びかけてきたスポーツ関係者はたくさんいます。たとえば、

・ ブリッタ・ハイドマン ドイツ、フェンシング五輪銅メダリスト

・ キャシー・フリーマン オーストラリア陸上トラック・フィールド五輪金メダリスト

・ ディケンベ・ムトンボ コンゴ民主共和国バスケットボール選手、UNDPユース特使

・ ドイツ4×400メートルリレーチーム:ジャナ・ニューバート、アンケ・フェラー、クロ―ディア・マルクス、クロ―ディア・ホフマン アテネ五輪

・ ゲオルゲ・ハジ ルーマニア最高のサッカー選手

・ フランク・フレデリックス ナミビア陸上トラック・フィールドで4つの銀メダリスト

・ ルイス・フィーゴ ポルトガルの国民的サッカースター

・ マシュー・ビンセント 英国、ボート選手、4つの五輪金メダリスト

・ ニコ・モチュボンとハイク・ヘンケル ドイツの走り高跳び金メダリスト

・ ロナルド ブラジルのサッカー選手、UNDP親善大使、世界エイズキャンペーン特別代表

・ ヤピン・デン 中国卓球スター、4つの五輪金メダリスト

・ キプチョゲ・ケイノ ケニア、陸上中距離で2つの五輪金メダリスト

・ ナワル・エル・ムタワキル モロッコ、400メートルハードル五輪金メダリスト

 

 ツールキットには、これらのスポーツ選手のメッセージが掲載されています。

 

 

5.4 HIV陽性の選手に対し、コーチや選手はどう接するか

 HIV陽性者は何かの病気に苦しんでいるわけではなく、HIVに陽性だというだけです。HIV陽性者の参加を阻む最大の障壁が感染ではなく、周囲の人の態度であるということもしばしばあります。HIV陽性であることが大きな孤立感を深めることもあるのです。

 

 選手やコーチやスポーツ指導者は、HIV陽性者を守る必要があります。他の人と同じようにチームの一員として迎え、尊重し、称えてください。

 

スポーツの場においてHIV感染が起きたことが確認できるような報告は一件もありません。したがって、HIV陽性者に対し、単にHIVに感染していることを理由にスポーツへの参加を禁じるような一般的規制はありません、HIV陽性者がスポーツに参加できるかどうかは、他の人と同じように、健康状態に応じて判断されることになるでしょう。

・ スポーツの場におけるHIV感染のリスクは非常に小さいということを思い出してください。選手がHIVに感染しているかどうかを他の人が知る必要はありません。出血を伴うケガや皮膚感染があるときには、血液を扱う際のユニバーサル・プリコーションを実践してください。そうすればHIVも含め、血液感染は防ぐことができます。

・ 選手はプレー中のケガに気を付け、負傷があったらコーチやトレーナーに知らせてください。同時に、コーチや役員、他の選手も出血を伴うケガには引き続き注意しておく必要があります。

・ 出血した選手は退場し、血液のユニバーサル・プリコーションに基づいて手当てを受けるべきです。手当が終わり、傷口が安全な状態に保たれない限り、復帰を認めるべきではありません。

・ 誰がHIV陽性者なのかという点に関しては、秘密保持が必要です。コーチ、選手を含め、HIV陽性であることを本人が秘密にしておくと判断したら、いかなる場合でも、本人が公表を選んだ時以外には、その判断が尊重されなければなりません。

 

 HIVに陽性であったり、エイズを発症したりしている選手がいる可能性はあり、すでにそれを明らかにしているケースもあります。HIV陽性であることや、父母のいずれかをエイズで失ったことを知られたくないと思う人も沢山いるでしょう。あるいはオープンに話したいという人もいるでしょう。こうしたスポーツの愛好者がクラブにより支えられ、クラブの一員であると思えるような環境、尊重されていると感じられる環境を整えることが大切です。「どうすればHIV陽性の選手、エイズの流行に影響を受けた選手をサポートすることができるか」ということをコーチも選手も、学んでおく必要があります。

 

 コーチや指導者には以下のようなことが求められています。

・ HIV陽性者に対する偏見を助長するような冗談を言うなど、選手に身につけてほしいと思われる習慣に反するような行為を検証する。

・ HIV陽性の選手を含むすべてのアスリートに栄養と休養について話をする。出血があったときのユニバーサル・プリコーションを確認する。

・ HIV陽性者、HIVに影響を受けている人を含め、必要な権利を尊重し、守る。

 

 「HIVは差別をしません。人が差別するのです」

 

 選手として、スポーツ関係者として私たちには以下のことが必要です。

・ 真の友だちになる。HIVに感染しても、友だちは友だちです。スポーツを楽しんだり、手をつないだり、一緒に働いたりといったことでHIVに感染することはありません。

・ 人を受け入れる。HIV陽性者は、かわいそうだと思ってほしいのではなく、支援を求めています。スポーツの場でも、それ以外の場所でも、自らの力で他の人と同じことができるよう機会を求めているのです。

・ 自分自身が知識を得る。HIVに対しては不安を持つこともあります。だからこそ、知識を得てください。そうすれば、HIV陽性者を恐れる理由など何もないことが分かるでしょう。ルールを守ってください。

・ 恐れない。HIV陽性者を恐れる必要はありません。もし、あなたがHIVに感染していたら、どのように扱ってほしいのか。それと同じように接してください。

・ コーチの指示にしたがう。実際に出血を伴うケガが発生したときには、コーチの指示に従ってください。

 

HIV陽性者の参加を助けるためにできること

・ 若者がHIV関連の偏見と闘うことができるようHIV陽性者やHIVの流行に影響を受けている人とともに活動する。

・ スポーツプログラムやスポーツ活動の場で、HIV陽性者、HIVの流行に影響を受けているスポーツマン、スポーツウーマンにリソースパーソンとして加わってもらう。

 

 「差別は人がその可能性を切り開いていくことを妨げます。HIV陽性者を差別しないでください」

 キャシー・フリーマン オーストラリア、陸上トラック、フィールド五輪金メダリスト

 

 

囲み6:HIV陽性の選手に対し、コーチや選手はどう接したらいいのか

・ HIV陽性の選手はすべてのスポーツ競技への参加が認められるべきである。

・ HIV陽性の選手には、他の人への感染リスクについてよく知っておくことができるよう情報が得られるようにすべきである。

・ 秘密保持に関するHIV陽性の選手の権利は尊重されなければならない。HIVのルーティン検査は行うべきではない。

・ 競争力を向上させるための薬物注射を禁止する規制は強化すべきである。

・ 性行為によるHIV感染のリスクについて、すべての選手がカウンセリングを受けられるようにすべきである。