IOCとUNAIDSによるHIV/エイズ教育ツールキットの第3部は、ツールキット本体ともいうべき第4部から第7部までの内容を短くまとめた紹介です。あれ・・・ということは、いままではずっと前置きだったの? と少々、ずっこけてしまうような感じにもなりますが、あれこれとたくさん前置きを述べ立てたくなるほど力を入れてつくられたという好意的な見方もできそうです。前置き部分は前置き部分で、それぞれに重要な内容を含んでいました。
第3部は短いセクションですが、キット全体の構成を把握するうえで、ぜひお読みください。英文はこちらで。
https://stillmed.olympic.org/Documents/Olympism_in_action/HIV_and_Aids/IOC-UNAIDS-MANUAL-EN.pdf
第3部 このツールキットの内容は?
このツールキットは、各国の国内オリンピック委員会(NOC)、スポーツクラブ、協会、マネージャー、役員、職員、コーチ、トレーナー、選手が、HIVとエイズを取り巻く多数の複雑な問題に対処していけるよう、実際の役に立つアドバイスを提供するものです。HIV予防、およびケアと治療の両方に焦点をあてています。たとえば、HIV予防に関する情報提供と同時に、HIV陽性者が安心して働いたり、治療を受けたりできる環境の整備も目指しています。
第4部 知っておく必要があること ではHIVとエイズの定義、感染経路、予防法、検査、ケア・治療などに関して、誰もが知っておく必要がある基本的なHIVとエイズの情報が提供されています。科学用語を使いつつ、分かりやすい言葉で、どのような問題に文化的な配慮が必要なのかということも説明しています。
第5部 スポーツとHIV では、運動がHIVに与える影響、HIVが運動に与える影響に焦点をあてています。出血時の対応を含め、スポーツの現場でHIV感染のリスクを減らすにはどうしたらいいのか;ロールモデルとしてのスポーツマン、スポーツウーマン、とりわけHIV陽性のアスリートの役割;コーチや選手はHIV陽性のアスリートにどう対応するかなどです。
第6部 スポーツ組織のHIVとエイズへの対応 では、雇用者としてのNOCやスポーツクラブ、協会、および働く人たちのHIV感染を防ぐこと、差別をせず、助け合えるような環境を整えるためのスポーツ組織の役割などを取り上げています。職場におけるHIV対策を策定するための基本的事項が関連資料とともに示されています。HIV感染に関する知識の提供やコンドーム使用、自発的な(秘密の守られる)カウンセリングと検査、偏見と差別、助け合える環境作りといったHIVとエイズに関する一連の課題について、管理職、従業員の両方の研修用の手引きが提供されています。これらは第4部 知っておく必要があること、第5部 スポーツとHIV、資料4 コンドームなどを参考にしながら進めてください。
第7部 コーチ、トレーナー、指導者のHIVとエイズへの対応 では、選手やスポーツ指導者に対し、HIVとエイズ教育を行うコーチやトレーナーの役割について取り上げています。数多くの研修プログラムやその資料が紹介されています。
コーチやトレーナー、役員は、選手、スポーツ指導者、ボランティアをHIV感染から守るだけでなく、自分自身の感染も防げるようにする必要があります。また、HIV陰性の人を感染から守ると同時に、HIV陽性者の権利も守らなければなりません。競技場の中であるか外であるかにかかわりなく、HIVに感染している人、HIV感染の影響を受けている人に対する差別や偏見とは、常に闘う必要があります。そうした課題はすべて、このセクションで扱われています。
年齢層ごとに異なる活動(10~12歳、13~15歳、そして15歳以上)では、それぞれの年齢に適した知識を提供し、若い人たちを助けになるよう工夫してあります。
・ 家族や友だちにも話せるよう、自分で正確な情報を得る。
・ 初体験の年齢を遅らせたり、コンドーム使用を求めたりといった性の健康に関する判断が自分でできるようになる。
・ 薬物使用とその危険について学ぶ。
・ コミュニティの中で利用できる情報源について学ぶ。たとえば、情報や助けが必要なときに相談できる人など。
・ 偏見と差別について調べ、それがHIVとエイズにどう関係しているかを考える。
・ HIVとエイズとの闘いに貢献する方法を自分たちで調べる。
(こうした活動は、第4部 知っておく必要があること、第5部 スポーツとHIV、資料4 コンドームなどを活用しながら進めてください)。
HIVとエイズに関する基礎的な知識を確認するための「HIVとエイズ・クイズ」も用意してあります。このクイズは、HIVとエイズに関する教育を行うときには、管理職や役員、従業員、コーチ、トレーナー、選手など、誰でも利用することができます。
用語集では、HIVとエイズ関連でよく使われる用語を正確かつ科学的に説明してあります。
資料は以下のようなものが添付されています。
資料1 国際オリンピック委員会のHIVとAIDSに関する政策 この資料では各国国内オリンピック委員会の役割も説明
資料3 ウエブに関する情報 各組織の公式ウエブサイトとその内容の簡単な紹介です。ウエブサイトは、HIVとエイズ、セクシャリティと人間関係、偏見と闘うためのキャンペーン、コーチのための研修資料およびその関連資料などが提供されているものを選びました。ウエブサイトの情報は、各国のエイズ協議会や国内オリンピック委員会、その他のスポーツ関連組織、HIV陽性者団体を含むエイズ関連組織、国連機関、国内の赤十字赤新月社、エイズ関連サービスの提供組織などから得られる地元の情報を補完するものとして活用してください。
資料4 コンドーム には、コンドームに関する科学的な基本情報、よくある誤解、コンドームを使用すべき理由、信頼性、コンドーム使用の交渉、男性用、女性用コンドームの使用法の図解などが含まれています。