TOP-HAT News97号(2016年9月)

 いままでTOP-HAT Newsはエイズソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログにに掲載し、当ブログでは見出しのみを紹介することが多かったのですが、この際だから全文掲載にしちゃおうということになりました。「この際」とは「どの際」なのか、はっきりしませんが、一つのブログのみの掲載だと、そのブログがなくなったら、後で探してももう見つからないということが往々にしてあります。それを防ぐ意味でのダブルトラックというか、デュアルプロテクションといいますか。♪東京でダメなら名古屋があるさ・・・みたいな感じですね(毎度のことですが、ちょっと違うか)。

 ということで、

asajp.at.webry.info

との同時掲載です。

 

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TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第97号(2016年9月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに GIPAとしての大規模ウェブ調査

 

2 ほぼ130億ドルの拠出を誓約 グローバルファンド第5次増資会合 

 

3日本の拠出誓約額は8億ドル、円換算なら46%増 

 

4 全国4都市で第11回UNHCR難民映画祭

 

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1 はじめに GIPAとしての大規模ウェブ調査

 国内のHIV陽性者を対象に大規模ウェブ調査を実施したFutures Japanプロジェクトの井上洋士代表(放送大学教授)と、その調査結果に基づき厚生労働省に要望書を提出した日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス(JaNP+)の高久陽介代表のお二人が

9月7日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見を行いました。

 Futures Japanプロジェクトは国内のHIV陽性者の声をエイズ政策に反映させるために活動するグループで、2013年7月から14年2月まで約8カ月にわたり、HIV陽性者を対象にした大規模ウェブ調査を実施しています。質問項目も多く、回答にはかなり時間がかかるのですが、それでも約1000人のHIV陽性者が最後まで答えています。

これほど多くの回答が得られた理由は、第一にウェブ調査なので匿名性が確保され、調査に参加しやすかったということが考えられます。そして、さらに重要な第二の理由は、自らの抱える困難やニーズ、希望などを社会に伝える回路が欲しいという当事者の強い思いがあったからでしょう。

日本国内だけでなく、世界のHIV/エイズ対策関係者の間で重視されている基本的な考え方に「GIPA原則」があります。

すでにご存じの方も多いと思いますが、改めて説明すると、GIPAは英語のGreater Involvement People with HIV/AIDS(HIV陽性者のより積極的な参加)の略で、1994年のパリ・エイズサミット共同宣言に盛り込まれ、その後も国際会議や国連総会などで繰り返し重要性が強調されてきました。『HIV対策の企画、策定、実施、評価のすべての段階で、流行の当事者のニーズや意見が反映できるようHIV陽性者の参加を保障する』という原則です。

GIPA原則の枠を広げ、「自らの生存や生活に深く関わる政策の決定が、その当事者の関与しないところでなされてはならない」という考え方はHIV/エイズ以外の分野でも次第に取り入れられるようになっています。このあたりもHIV/エイズの流行という困難な試練に直面して引き出された貴重なエイズ対策の成果というべきでしょう。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2007年に発表したGIPA解説の文書には《GIPAは個人の感染公表を迫るものではなく、「見えない=参加できない」という意味でもない》と明記されています。これも重要な指摘というべきでしょう。

先ほども述べたように、HIVに感染していることを社会的に明らかにすることが困難な事情は世界各地で、そして日本国内でも、いまなお存在しています。

ではそうした現実の中で、「見えない=参加できない」という壁をどう克服していくのか。少し回りくどい説明になりましたが、Futures Japanプロジェクトの大規模ウェブ調査はその意味でも貴重な試みでした。

HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス(JaNP+)が今年7月、他のHIV当事者団体、支援団体とともに厚労省に提出した「エイズ対策への要望書」は大規模調査の分析結果を踏まえ、要望項目を以下の4点にしぼっています。

(1) HIV陽性者のメンタルヘルス改善および相談先の充実

(2) 院内他科(エイズ拠点病院のエイズ診療以外の診療科)、一般医療機関、介護福祉施設などとの連携強化

(3) 子供を持ちたいと考えるHIV陽性者への十分な情報の提供

(4) 依存症患者への回復支援

 

 日本記者クラブの公式サイトにはその内容を簡潔にまとめた会見リポートが掲載されています。またYou tubeの会見動画録画もアップされているので、ぜひご覧下さい。

 http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2016/09/r00033812/

 

Futures Japanプロジェクトは今年12月から第2次大規模ウェブ調査を開始する予定だということです。

 

 

 

2 ほぼ130億ドルの拠出を誓約 グローバルファンド第5次増資会合

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の第5次増資会合が9月16~17日、カナダのモントリオールで開かれました。2017年から19年までの3年間のグローバルファンドの資金を確保するための会合で、各国政府および民間の基金などからあわせて129億ドルを超える拠出誓約がありました。

 グローバルファンドは低・中所得国のエイズ結核マラリア対策のプログラムに資金的な支援を行う機関で、昨年12月に東京で開かれた増資準備会合では、来年からの3年間に必要な資金の総額として130億ドルの拠出が必要との大枠が示されていました。

モントリオール会合では、ほぼその目標額に匹敵する拠出の誓約があったことになり、次の3年間に向けてまずまずの滑り出しとなっています。

 グローバルファンドによると、この誓約総額は、エイズ結核マラリアの三大感染症により、今後3年間に失われるかもしれない800万人の生命を救い、3億人の感染を防ぎ、活気にあふれる持続可能な保健システムの構築にも貢献できる額ということです。

 

 

 

3 日本の拠出誓約額は8億ドル、 円換算なら46%増

 グローバルファンドの公式サイトに掲載された第5次増資会合の報告には、主要拠出国の拠出誓約額も示されています。エイズソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログには報告の日本語仮訳が掲載されているので、参考にして下さい。

 http://asajp.at.webry.info/201609/article_3.html

 最も多いのは米国の43億ドルで、全体のほぼ3分の1に相当します。英国、フランス、ドイツが続き、日本は8億ドルで5番目の拠出国となります。日本の誓約額はドルベースだと前期(2014~16年)と同額ですが、円換算では前期比46%の増額になります。

 

 

 

4 全国4都市で第11回UNHCR難民映画祭

 難民、国内避難民、無国籍者をテーマにした世界の作品を上映する第11回UNHCR難民映画祭が仙台(9月17~18日)を皮切りに全国4都市で順次、開催中。東京での開催は10月8日(土)~10日(月・祝)、15日(土)~16日(日)です。会場、上映作品などは公式サイトをご覧下さい。

 http://unhcr.refugeefilm.org/2016/

 

『世界では今、6500万人以上というかつてないほど多くの人が家を追われています。私たちは、そうした現状について関心を持ってもらうために、継続して伝える責任があると信じております。そして日本の皆様がこのユニークな映画祭を通して、難民と共に立ち上がる勇気を抱いてくれることを願っております』

 (ダーク・ヘベカーUNHCR駐日代表あいさつから)

 家を追われることによって、エイズの原因となるHIVに感染するリスクが高まる、あるいはHIV治療の継続が困難になるといった深刻な事態に直面している人も少なくありません。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の共同スポンサー機関になっているのもこのためです。最近は直接、HIV/エイズの流行が取り上げられることはあまりなくなっているようですが、流行の背景要因や影響を理解するうえでは重要な作品がそろっています。