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『スポーツを通じたHIV&AIDSの予防』 新シリーズ・五輪とエイズ対策1 

 リオデジャネイロ・オリンピックは大々的な盛り上がりのうちに閉会式を迎え、1カ月後の現在、リオではパラリンピックの熱戦が展開中です。TV放送で選手たちのプレーに声援を送りつつ、あの政治も経済も大混乱で、保健分野に関しても不安だらけだったブラジルですら、ここまで盛り上がっている。素晴らしいというか、東京はますますプレッシャーを感じちゃうというか。

 どこかのテレビ局がリオ五輪開幕直前のニュース番組で、「大丈夫、われわれは準備は苦手だが、本番で盛り上がるのは得意なんだ」というリオの人たちの声を 伝えていました。真偽はともかく、なるほど!とついつい思いたくなる説得力はあります。 ただし、その言葉が本当だったとしても、リオの「われわれ」と違って、東京の「われわれ」はそこまで楽天的にはなれないでしょうね。平均的とはいえません が、一応、日本国民の一人である高齢期おじさん層の感覚から言えば、われわれは準備しなければ安心できず、準備していても本番は不安になっちゃうタイプで あります。

 2020年のオリンピック・パラリンピックまで、すでに4年弱。いつまでも、あると思うな準備期間・・・ということで、HIV/エイズ分野でもなすべきことがどっさりありそうですね。

 またまたぁ~、オリンピックに便乗しようとして・・・などと言うなかれ。実はオリンピックとエイズ対策の間には深い関係があります。

 2004年11月には国際オリンピック委員会IOC)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)が合意文書に署名し、組織レベルでの協力を約束するとともに、世界中でスポーツを通じたエイズ対策への理解促進活動、HIV感染予防活動が推進されるようになりました。大会ごとに選手村で無料のコンドームがどっさり配られるのも、こうした背景があるからです。

 あれ? まだ、信用していただけないようですね。ホントなんだってば!。

 東京オリンピックパラリンピックに向けた準備の一助にしてもらえるかどうかは分かりませんが、五輪とエイズ対策に関連した英文文献の日本語仮訳をシリーズで少しずつ紹介していきましょう。これまで折に触れて細々と訳してきたものです。まずは、2013年11月にアップデートされているIOCのファクトシート『スポーツを通じたHIV&AIDSの予防』から。

 

    ◇

 

ファクトシート『スポーツを通じたHIV&AIDSの予防』(2013年11月更新)

 英文はこちら:

 http://www.olympic.org/Documents/Reference_documents_Factsheets/HIV_and_AIDS_prevention.pdf

 

オリンピックムーブメントの貢献

 

 基本的事実

 世界で3400万人以上がHIVに感染しており、その多くがスポーツを見たり、スポーツに参加したりしている。3400万人の三分の一が25歳以下の若者と推定されている。

  HIV感染の確率を高める性感染症(STIs)にかかっている人は15-24歳の若者ではもっと多い。性的に活発になる時期が早い若者は性行為の相手が多く、STIsにかかるリスクも高くなる傾向がある。

  若者は様々な理由から、保健サービスに助けを求めたがらない傾向が強い。

 

IOCの関与

  スポーツを人々に役立てるよう憲章が求めていることでも分かるように、IOCには道義的な義務がある。実際に草の根のプロジェクトに投資し、教育的な活動を促進することで、国連ミレニアム開発目標の目標6に盛り込まれているHIV&AIDSとの世界的な闘いに貢献してきた。エイズはスポーツ全体の将来に影響を与えており、すべての人がこの闘いの中でそれぞれの役割を担う必要がある。HIV&AIDS対策、および差別との闘いに私たちすべてが加わることを求められているのはこのためである。

  スポーツを通じたHIV&AIDSの予防に関するIOCの方針は2004年の初めに採択された。その文書にはとくに、エイズの世界的大流行に対するIOCの実施部門としての各国国内オリンピック委員会(NOCs)の役割が示されている。

  国連合同エイズ計画(UNAIDS)との間では2004年6月1日に合意文書に署名し、組織レベルでの協力を約束するとともに世界中でアドボカシープログラムが始まった。

 

スポーツとHIV&AIDS

  スポーツへの参加はHIV陽性者の利益となる。適度な運動は実際に免疫システムの強化につながり、HIVと闘えるように身体の状態を整えることになるので、エイズの発症を遅らせるであろう。スポーツはまた社会参加と支援の場を提供することになる。HIV陽性のスポーツマン、スポーツウーマンの参加は、HIVを特別視せず、偏見と闘ううえで非常に貴重である。

  スポーツマン、とりわけ優秀な運動選手はロールモデルであり、彼らの意見はコミュニティレベルで予防とケアのメッセージを届けるもう一つの方法となる。

  スポーツ組織は所属選手をHIV感染から守ることだけでなく、HIV陽性者に対する偏見や差別を持たないように指導することも大切である。また、HIV&AIDSについて、差別のない雰囲気の中で安心して話ができるような環境を整える必要もある。

 

アドボカシーとピア教育

  スポーツを通じたHIV&AIDSの予防の最初のツールキットは2005年にIOCとUNAIDSが共同で発表した。フランス語、英語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、スワヒリ語スペイン語の各版がある。スポーツコミュニティのためにとくに、以下のようなかたちをとっている。

 

1 HIV & AIDSについての情報を増やす。どうすれば予防対策の効果があがるか、どうすればスポーツがHIV陽性者に利益をもたらすことができるか、検査と相談についてなどなど。

 2 同僚や選手とともに基本的な情報を得られるセッションからスポーツ大会期間中のコミュニケーションキャンペーンやスポーツ組織自体の包括的な方針策定まで、具体的な提案も含めて多数の活動とプログラムを開発する。

 3 予防活動の重要な対象である10-15歳、あるいはそれ以上の年齢層のユース活動に対する具体的な助言

 4 手伝ってくれる人、専門的な助言と支援を提供してくれる組織に関する情報

 

ツールキットのダウンロードはこちらから。

http://data.unaids.org/Publications/IRC-pub06/IOC_Toolkit_20Dec05_en.pdf

 

 IOCはUNAIDS、IFRC、UNICEFと協力して地域別のセミナーを開催し、HIVエイズパンデミック(世界的大流行)に対する各国および域内の対策の中でのスポーツの役割、スポーツ関係者が参加することの影響力、NOCとパートナー組織との協力などについて話し合っている。

  HIVエイズに関する情報キャンペーンは五輪大会期間中も、組織委員会と協力して選手村で展開している。コンドーム配布に加え、健康で関になるライフスタイルについて選手や役員の理解を深めることが目的である。

 

以下、各国事例集(略)