ジカ熱流行 夏に向けた備えを怠るな

 本日の産経新聞主張です。ジカ熱については、日本でもジカ熱の患者が確認されましたが、いま国内で流行が広がっていく可能性はあまり高くない。したがって、関心もあまりひかない。不安ばかりが先行的に広がるよりはマシなのかも知れません。ただし、文脈が変わると反応が一変する恐れもあります。危機感がなさ過ぎるというご指摘を受けることもあるし、いまからあおってどうすると批判されることもある。感染症の流行に過不足なく対応するというのはいつも難しい。改めてそう思います。


【主張】ジカ熱流行 夏に向けた備えを怠るな

 ブラジル旅行から帰国した男子高校生が、中南米で広がるジカ熱を発症したことが確認された。世界保健機関(WHO)が今月1日にジカ熱の流行を公衆衛生上の緊急事態と宣言して以降では国内初の確認例となる。

 ジカ熱の病原体であるジカウイルスは主にネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介して人から人へと広がる。ヒトスジシマカは国内にも広く生息しているが、冬季や早春には活動しないので、今回の確認事例から国内で流行が拡大する恐れはほとんどないという。

 ただし、8月にはブラジルのリオデジャネイロ夏季五輪が開催され、日本国内と流行地域との人の往来はこれから急激に増える。夏場に向けての対策にはいまから備えておかなければならない。

 ワクチンなどはまだ開発されていないので、当面はウイルスを保有する蚊に刺される機会を減らすことが最も大きな対策になる。

 そのための第一の方法は国内でヒトスジシマカを増やさないことだ。4~6月にはボウフラの繁殖しそうな水たまりを減らすといった発生源対策が重要になる。

 わが国は1年半前にデング熱の流行を経験したことから、自治体などでも蚊に対する意識が高まった。デング熱ヒトスジシマカで広がる。禍福はあざなえる縄のごとしと言うべきだろう。地道な発生源対策に引き続き力を入れてほしい。

 夏場には長袖の着用や虫よけスプレー、蚊取り線香、蚊帳などで蚊に備えることも大切だ。最先端ではないが、生活習慣に根ざした対策は重視したい。

 ブラジルなどの流行国がいま取り組んでいる媒介蚊の駆除対策にも、積極的な支援を惜しむべきではない。リオデジャネイロ五輪を考えれば分かるように、海外での流行規模を小さく抑えることは、国内での感染拡大を防ぐうえでも重要な意味を持っている。

 ジカ熱は感染者の8割が発症せず、発症しても2~7日程度で回復する人が多い。

 ただし、妊婦の感染と生まれてくる赤ちゃんの小頭症との関係が強く疑われるなど、看過できない影響をもたらす事例もある。

 国際社会が協力して流行の規模を小さく抑えれば、そうしたリスクも減ることになる。五輪のアスリートを心から応援できるようしっかり備えて夏を迎えたい。