科学と政治の間のエイズ・・・から エイズと社会ウェブ版210

 ピーター・ピオット博士の『AIDS BETWEEN SCIENCE AND POLITICS』の翻訳を進めていたら、こんな一節がありました。原文は何年か前に書かれていますが、ますます時宜にかなった指摘といいますか・・・。

 『最近は抗レトロウイルス治療を唯一ではないにしても、エイズ対策の中心に据えようとする動きが強まっており、それにつれて、すべてのエイズプログラムに人権尊重と差別反対の考え方を反映させるという大原則を公然と軽視するかのような傾向も見られるようになった。こうしたことが続けば、エイズ対策は大きな打撃を受けることになるだろう』
 

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 国際的にも、日本国内でも共有すべき懸念なのかもしれません。あまりにも当然過ぎること思うようなことでも、必要だと思ったら、こまめに指摘しておかなければいけないということでしょうか。

 誤解のないように付け加えておけば、国内で抗レトロウイルス治療に取り組む医療従事者のほとんどは『すべてのエイズプログラムに人権尊重と差別反対の考え方を反映させるという大原則』の重要性をしっかりと認識し、日々の医療に取り組んでいるのではないでしょうか。私と医療従事者との接点はかなり乏しいものではありますが、この点はたぶん、それなりに自信をもって言えるのではないかなあと秘かに思っています(かえって誤解されるか)。

 『NO TIME TO LOSE』に続いて、この本も日本語版が出版できるといいのだけど・・・。英文で確認したい方は158ページに囲みで強調されて出てくるのでよろしく。