『男性・少年とエイズ:議論の再構築を』 エイズと社会ウェブ版208

 ヘテロセクシャルの男性は、エイズ対策の中で積み残しみたいな感じの扱いを受けることが多い。日本の場合、HIV感染経路別にみたときの報告数が少なく、そのこと自体は流行の拡大が抑えられているであろうということが推測できるという意味で、けっこうなことではあるのですが、だからといって異性間の性感染のHIV陽性者は支援の枠組みから取り残されてもいいということにはなりません。
 国際的には、ときどき思い出したように「きちんと対応しなければいけない」といった意見が出てきます。UNAIDS公式サイトに掲載された12月9日付の特集記事の日本語仮訳をHATプロジェクトのブログに掲載しました。

『男性・少年とエイズ:議論の再構築を』
http://asajp.at.webry.info/201512/article_3.html 

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 『有害なジェンダー規範と男らしさ信仰がいかに男性の脆弱性を高めているかを示すための活動にもっと力を入れることをUNAIDSは呼びかけている。たとえば、男の「強さ」と抵抗力に対するステレオタイプが、コンドームを使用しなかったり、HIV検査のような保健サービスを避けたりすることにつながっている』

 UNAIDSが世界エイズデーのテーマに「AIDS, men make a difference」を掲げたこともありましたね。あれはいつのことだったか・・・。
 API-Netで調べたら2000年でした。15年も前ですね。この間にミレニアム開発目標MDGs)の15年間が経過し、それほどmen make a differenceのような感じではありませんでしたが、MDGs8目標の中でもエイズ対策を中心とする感染症対策(目標6)は目覚ましい成果をあげてきたという評価を受けています。

 前にも書きましたが、だからといって「もういいだろう」といった楽観ムードにひたっていられる状態ではないし、これからの対策はますます厳しいものになります。その意味でも男性、とりわけヘテロセクシャルの男性がHIV/エイズ対策の枠組みの中で積極的な役割を担うことは重要です・・・といっても、当面はなかなか関心が高まらないでしょうが、言うだけは言っておきましょう(いずれ、だから言ったじゃないのということにならないことを祈るよ)。

 振り返れば、2000年は国際社会が感染症対策に注目するきっかけとなった九州沖縄サミットが開かれ、南アフリカのダーバンでは第13回国際エイズ会議が開催された年でもありました。

 だから、どうした!? と突っ込まれると答えに窮してしまいますが、来年はMDGsの後継目標となる15年間の持続可能な開発目標(MDGs)がスタートし、日本では伊勢志摩サミット、そしてダーバンでは第21回国際エイズ会議が開かれます。
 ぐるっと一巡りして、新たなフェイズに入るのかなあという印象です。

 エイズ対策関係者の中には、差別や偏見と闘うことの重要性を十分に認識されている方が多いのですが、ことヘテロセクシャルのおじさん層に対しては、のびのびと厳しい言辞で臨まれている場面に遭遇することも比較的しばしばあります。ま、理由はあるのでしょうけど、気の弱いおじさんには結構つらいのよ、これが・・・。関係各位の皆様にはこの際、ささやかながら、おじさんも忘れないでね、というひと言を付け加えておきましょう。