【鎌倉海びより】117 文化財を襲った関東大震災

 気ぜわしいと言いますか、あれこれ忙しくてアップが遅れました。11月24日のSANKEI EXPRESSに掲載されたコラム【鎌倉海びより】です。



【鎌倉海びより】117  文化財を襲った関東大震災

 鶴岡八幡宮の境内にある鎌倉国宝館は1928(昭和3)年、地元の人たちから多額の寄付を受け、当時の鎌倉町立の博物館として開館した。その5年前の関東大震災で鎌倉の社寺も大きな被害を受けている。

 「こうした不時の災害から由緒ある文化遺産を保護し、あわせて鎌倉を訪れる人々がこれらの文化財を容易に見学できるよう一堂に展示する施設」として企画され、その基本方針は現在も受け継がれている。

 国宝館ではいま、『鎌倉震災史 歴史地震と大正関東大地震』という特別展が開催されている=写真。

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 会場で購入した図録によると、関東大震災では当時の鎌倉町全4183戸中、全壊1455戸、半壊1549戸、埋没8戸、津波による流失113戸、地震直後の火災による全焼443戸。大変な被害である。

 鶴岡八幡宮建長寺円覚寺高徳院など鎌倉を代表する社寺の被害も甚大で、国宝の円覚寺舎利殿は倒壊、同じく国宝の鎌倉大仏高徳院)は前のめりというか、前方へ45センチも移動し、さらに翌年1月15日の丹沢地震で今度は約30センチ後退したという。よくぞご無事で、と改めて思いますね。

 会場では、国宝館所蔵の震災図巻も公開されている。関東大震災の惨状を目の当たりにした南画家、藤原草丘が『鎌倉における甚大な被害と人々の混乱の様子を六巻にわたって描いた絵巻』である。長谷の火災の様子、坂ノ下海岸に押し寄せる津波、材木座や由比ガ浜津波の跡…。全体が淡い色調であるせいか、紅蓮の炎や渦巻く波がひときわまがまがしい。

 特別展は12月6日まで。関東大震災で倒壊したお寺の下敷きになり、その後に修復された仏像なども公開されている。年の瀬の慌ただしい時期を迎えるが、機会があればぜひ訪ねてほしい。