確か2年ほど前だったと思いますが、国連合同エイズ計画（UNAIDS）は「このままだとミレニアム開発目標（MDGs）の次の国際目標から、エイズ対策が外されてしまうかもしれない」とかなり焦ったことがあります。
MDGsの目標6（感染症対策）にはHIV/エイズの流行の拡大に歯止めをかけようというターゲットが含まれ、MDGs全体の中でもとりわけ目覚ましい成果をあげていることが当時は明らかになりつつありました。それは素晴らしいことなのですが、そうなればなったで「エイズ対策は成果をあげたのだから、もういいんじゃないの」といった心ない指摘も耳にするようになりました。次期目標であるSDGs（持続可能な開発目標）で好位をキープしようとする他の開発分野の関係者にはかなりあからさまにそうした意識があったのかもしれません。
こうした動きに対し、UNAIDSはおそらく、かなり大きな危機感を抱き、巻き返し作戦の展開に踏み切ったようです。推測で恐縮ですが、極東の島国の外野席から傍観者的に見ているだけだった私のような者にも、その危機感は雰囲気として伝わってきました。
「毎日が開発」というブログの開設もUNAIDSのその巻き返し策のひとつだったのでしょうね。今年9月のSDGs採択でブログは一応、役割を終え、その成果を集約した書籍が発行されました。以下UNAIDS公式サイトに載っているお知らせの日本語仮訳です。
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書籍「毎日が開発」を発行
2015年10月14日 UNAIDS
http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2015/october/20151014_DD
国連合同エイズ計画（UNAIDS）は2013年、持続可能な開発目標（SDGs）の採択に向けて、誰も置き去りにならない開発への道を探るため、「毎日が開発」ブログを開設した。このブログは、保健、人権、イノベーション、アート、教育、経済、環境などなどSDGsの対象となる開発課題全般を取り上げてきた。
ブログには高位の政策担当者からも、極めて困難な現場で活動に取り組む人たちからも寄稿を募った。ノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相は少女の教育につて熱っぽく語った。ジャーナリストのエドワード・トミーさんは2014年半ばにシェラレオネの首都フリータウンから、エボラの最流行地域における体験を報告している。反奴隷制度インターナショナルのアイダン・マクエード事務局長は現代社会においてもなお、奴隷制度に反対する組織が必要なのはどうしてなのかについて書いている。これらの筆者および私たちが話をした何十人もの筆者に共通しているのは、他の人びとの生活を改善しようという意欲である。SDGsの17目標が設定される以前から、これらの目標の実現のために活動してきた人たちなのだ。
「毎日が開発」はブログだけでなく、出版のプロジェクトでもあった。SDGs が今年9月、ニューヨークで採択されたことから、ブログは終止符を打ったが、その蓄積を生かしUNAIDSは過去2年間の記録を集め、新たに書籍を発行した。
コメント
『書籍「毎日が開発」が今後15年の間、持続可能な開発目標の実現に取り組むすべての人に読みつがれ、勇気を与えられる本になることを期待しています』
（ミシェル・シディベUNAIDS事務局長）
Daily Development book is launched
14 October 2015
In 2013, UNAIDS launched the Daily Development blog to explore, in the run up to the adoption of the Sustainable Development Goals (SDGs), global development and the people behind it. The blog covered the whole range of development issues to be addressed by the SDGs—health, human rights, innovation, the arts, education, economics, the environment and more.
Both high-level policy-makers and people working on the ground in some of the world’s most difficult conditions were asked to give their stories. Erna Solberg, the Prime Minister of Norway, spoke about her passion for ensuring that girls are educated. Edward Tommy, a journalist from Freetown in Sierra Leone, describes his experience of working at the epicenter of the Ebola outbreak in mid-2014. And Aidan McQuade, Director of Anti-Slavery International, wrote about why there is still a need for an anti-slavery organization in the modern world. What unites those authors, and the dozens of other people we spoke to, is their commitment towards improving the lives of others—they were working towards achieving the 17 SDGs even before they were formulated.
Daily Development was founded as both a blog and a book project. With the adoption of the SDGs in New York in September the blog published its last post, but as the culmination of the project UNAIDS has published a book, telling the stories of all who we spoke to over the past two years.
Quotes
“We hope that the Daily Development book will serve as inspiration for all who work to achieve the Sustainable Development Goals over the next 15 years.”
Michel Sidibé, UNAIDS Executive Director
