夏季五輪分割論 多様化への間口広げよう

 本日(22日)付ビジネスアイ紙に掲載されたコラムです。

夏季五輪分割論 多様化への間口広げよう
 http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/150922/cpd1509220500003-n1.htm

 2020年東京オリンピックパラリンピックの追加種目の決定が大詰めを迎えている。組織委員会はすでに各競技団体からのヒアリングを終え、月末には国際オリンピック委員会(IOC)に提案する追加種目の最終決定を行うという。

 新国立競技場の建設問題をはじめ、東京五輪に関してはこのところ、どうも後ろ向きの話題が先行している印象があるが、追加種目にたくさんの競技団体が手を挙げていることを見ても、五輪開催への期待は、根っこのところでやはり大きいのではないか。少し情報を整理してみよう。

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 20年東京オリンピックは7月24日から8月9日まで開催され、閉幕16日後の8月25日からは東京パラリンピックが始まる。2つの大会の準備、運営にあたるのが公益財団法人東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会である。正式名称はかなり長い。恐縮だがここでは圧縮して五輪組織委と呼ばせていただく。

 東京オリンピックにはすでに決定している28競技の他にも、開催都市が追加種目をIOCに提案できることになった。この追加種目には26の競技団体から申請があり、今年6月22日の検討会議で以下の8競技が1次選考を通過している。

 野球・ソフトボール、空手、スカッシュ、ボウリング、サーフィン、武術、ローラースポーツ、スポーツクライミング

野球・ソフトは入るでしょう…とか、事前予想はいろいろあるが、そのあたりは五輪の専門記者にお任せしよう。

 個人的には海辺の街に住んでいるので、4年前から大型サーフボード上に立ってパドルでこぎ進むスタンドアップパドルボード(SUP)を始めた。上級者は波乗りも楽しめるのだが、当方は生来の身体能力の低さに高齢化も重なり、4年たってもいまだに初心者のままだ。それでも追加種目が話題になると「ほう、サーフィンの目もあるのか。それならSUPも含まれるかな」などとわくわく感が広がる。袖すり合うも多生の縁といいますか。

 1次選考段階の26競技には、水中スポーツ、水上スキー・ウエークボード、そしてサーフィンと海のスポーツが3つも入っていた。それ以外にも新しいスポーツ、老舗の競技、さまざまだ。それぞれに楽しめる人がいる。この多様化は大切にしたい。

 ここから先は20年ではなく、将来に向けた外野席からの単なる思いつきなのだが、これだけ多様な競技があり、しかもそれぞれにファンがいるのなら、現在の夏季五輪を夏と秋に分け、開催都市も別にして受け入れ枠を広げたらどうだろうか。



 夏は水泳、ボート、セーリング、それにサーフィンなど水のスポーツ。そして秋は陸上競技やサッカーなどフィールドと体育館を使う競技を中心にしてメリハリをつける。雪と氷の冬季五輪が1924年のシャモニー大会から始まり、五輪はすでに夏と冬の二本立てになっている。希望競技が多いのなら受け入れ枠を増やして三本立てにする方が合理的だ。

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 そもそも現状を考えれば、いくらなんでも夏にやるのはムチャでしょうという競技は多い。1964年の東京五輪が開幕したのは10月10日、さわやかな秋空がひときわ印象的だった。アスリートファーストの観点からも、観客にとっても夏季、秋季の分割は望ましい選択であるに違いない。

 テレビ局にとって五輪中継は夏のキラーコンテンツなのだが、分割しても夏がなくなるわけではない。むしろ秋にもう一つ、注目度の高いコンテンツの放映機会が増える。悪い話ではない。

 夏と秋の五輪は同じ都市で開催する必要も、同じ年に開く必要もないので、開催側は多少なりとも負担が軽減され、それぞれの立地条件に合った大会に立候補しやすくなる。冷房抜きで100億円節約して…などとチマチマしたことを考えなくても、観客は快適な気候条件のもとで大観衆であることを楽しめる。

 とはいえ、イノベーションへの動機付けはよほどのことがなければ生まれない。熱中症で選手も観客も次々に倒れるなどということがあれば、話は変わってくるかもしれないが、それもまた困るしなあ。