シリア難民危機 日本も人道措置の適用を

 9月16日付産経新聞の主張(社説)です。
 http://www.sankei.com/column/news/150916/clm1509160002-n1.html

【主張】シリア難民危機 日本も人道措置の適用を

 中東のシリアから周辺国に逃れた難民たちの欧州への流入が顕著になっている。トルコからの密航船が沈没し、溺死して海岸に打ち寄せられた幼児の写真は欧州指導者にも衝撃を与えた。

 だが、短期間にあまりにも多くの難民を受け入れることには各国でも懸念が強い。欧州連合(EU)内の意見も割れている。

 5年に及ぶシリア紛争では400万人が難民として周辺国に逃れ、国内にも家を追われた避難民が760万人もいるという。

 この人道危機に国際社会はどう対応すべきかが問われている。

 難民の多くは紛争が解決したら故郷に戻ることを期待する人たちだ。その期待は裏切られ続け、一方ではスマホの普及により世界中から情報が入る。こうした状況が国境地域を離れ、欧州に向かう新たな流れを生み出した。

 紛争終結こそが最大の解決策なのだが、すぐには期待できない。周辺国における難民の生活環境改善と流出した人たちを受け入れ可能なかたちにする国際間の協調がまず必要だ。その中で日本もできることを考えるべきだ。

 ただし、欧州を目指す難民の何%かを日本が受け入れるといった案は現実的とはいえない。

 むしろ、日本国内にもすでに難民認定を求めるシリア人が約60人存在し、認定されたのはわずか3人という現実を直視したい。その多くは留学やビジネスで日本滞在中に紛争が起き、帰れなくなってしまった人たちだという。

 不認定の人に対しても強制送還はせず、人道的配慮による在留を認めている。

 だが、在留許可では家族を呼び寄せることができず、離ればなれの生活を余儀なくされているケースも多い。危機に鑑み、ビザ発給などの配慮で家族呼び寄せを可能にすることならできる。

 政府は15日、迫害からの保護などの観点から難民認定の適正化、迅速化を図る出入国管理行政の基本計画を打ち出した。そうした方針にも沿うことになる。

 東アジアの状況を考えれば、日本も大量の難民流入といった事態に無縁な環境にいるわけではない。困っている人に冷淡な国といった印象を持たれることは積極的平和主義の観点からも避けたい。重大な人道危機の解決には、日本も国連などを通じ積極的な貢献姿勢を示していく必要がある。