スーパーラグビーに日本が参戦

 

 本日のビジネスアイ紙に掲載されたコラムです。ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は、サッカー女子なでしこジャパンの佐々木監督とも懇意であるということを昨日、テレビのニュースで知りました。種目は違いますが、圧倒的な体力差をものともせず、世界と闘い続けたなでしこの健闘は大いに勇気づけになります。

 

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 スーパーラグビーに日本が参戦 進化に隠れた歴史との符合
 http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/150707/cpd1507070500001-n1.htm


 熱心なラグビーファンを除けば、「スーパーラグビー」にはまだ、なじみの薄い人の方が国内では圧倒的に多いはずだ。あまり熱心ではないが、ラグビーファン層の底辺ぐらいは担いたいと願う私も実は、ついこの間までよく知らなかった。

 ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ3カ国のおそろしく強いプロのラグビーチームによる最強クラブチームの決定戦…そんな程度の認識である。最近は日本代表クラスの選手が何人か武者修行に出ているので、少し距離が近くなった。それでも遠い南半球の話という印象が強い。

 そんなスーパーラグビーに来年は日本チームが加わる。しかもメンバーは日本代表とほぼ同じ顔ぶれにしたいという。

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 にわか勉強で恐縮だが、大慌てで調べてみた。スーパーラグビーには現在、3カ国各5チームの計15チームが所属し、国別にカンファレンスを構成している。レギュラーシーズンはカンファレンス間の対戦も含め16試合ずつ戦い、各カンファレンス1位とワイルドカード3チームの計6チームが決勝シリーズに進出する。

 今季決勝戦はニュージーランドの2チームの対決となり、ハイランダーズがハリケーンズを破って優勝した。

 来年はさらに日本、アルゼンチン、南アの各1チームが加わり計18チームになる。拡大に伴い、南アカンファレンスが4チームずつ2つに分かれ、日本は南アカンファレンス2に所属。他の3カンファレンスとの試合も含めレギュラーシーズンで計15試合を戦う予定だ。その前に今年の秋には第8回ワールドカップ(W杯)イングランド大会があるので、まずここで目標のベスト8にチャレンジして世界と戦えるという手応えをつかみ、さらにスーパーラグビーで国際的な経験値を高める。

 日本で開催する2019年の第9回W杯に向けて、その参戦戦略がシナリオ通りに進むかどうか。これは日本チームの健闘次第でもあるので、今後に期待するとして、スーパーラグビーの歴史を見ると面白いことに気が付く。冷戦後の世界の変化や日本の低迷といったものが、ラグビーの進化と不思議なほど重なっているのだ。

 スーパーラグビーの前身はニュージーランド、オーストラリアを中心にした1980年代のスーパー6(南太平洋選手権)だった。南アの国際ラグビー復帰に伴い、93年に南アチームを含めたスーパー10に拡大。96年には運営主体としてSANZAR(3カ国連合協会)が創設され、以後チーム数増加に伴い名称もスーパー12、スーパー14、そして2011年から15チームのスーパーラグビーとなった。この間にプロ解禁もあり、15人制ラグビーは戦術面でも、選手育成やコーチ技術の面でも大きく進化している。

 こうした変化は冷戦が終わり、南アフリカアパルトヘイト体制が崩壊した時期に起きている。そして、その象徴となったのが、1995年の第3回W杯南アフリカ大会だろう。南アはW杯初参加で主催国となり、なおかつ優勝も飾った。そのことが、ネルソン・マンデラ大統領の民族和解政策を広く国際社会に伝えることにもなった。

 ただし、日本にとってはニュージーランドに17-145という歴史的大敗を喫したつらい大会でもある。国内のラグビー人気はこの試合を機に急落したという説もあるほど、大敗のトラウマは大きかった。

 変化への対応が遅れ、強豪国との実力差はあまりにも大きく開いていた。その現実は、冷戦後の世界で長期的な経済の低迷にあえぎ、国際的影響力を低下させていく日本全体の縮図のようにも見えた。

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 スーパーラグビーのレギュラーシーズンは2月に始まる。日本チームの参戦が、グローバルなうねりの中で、ようやく世界に船出をする機会だとすれば、それは日本再生の貴重なメッセージにもなり得るのではないか。いや、なってほしい。

 日本の15試合のうちホームゲームはほぼ半分。うち3試合はシンガポール開催になる。アジアにおける普及の観点から必要な措置なのだろうが、そうなると国内試合は5戦程度。世界を肌で感じる貴重な機会である。日本の未来を占うぐらいの大局観をもってジャパンの健闘を注視したい。