【鎌倉海びより】106 ゆっくりと流れる時間


 昔は鎌倉にも映画館が5館ほどあったそうです。時代の変遷といいますか、観光で鎌倉を訪れる人は映画館には入らないだろうし、町としては人口規模がそれほど大きいわけではないし、人が集まらなくなっちゃったんでしょうね。その分、のんびりできるというメリットもあるので、ぜいたくは言うまい。
 でも、大船の撮影所は何とか残す手立てがなかったのでしょうか。スタジオという資産をうまく新しい産業に結びつけるとか・・・経済の素人が言っても仕方がないけれど。

 文脈は少々、異なりますが、最近は何でも壊せばいいというものではないぞ、という思いが日に日に強くなる印象です。鎌倉市の何かと戦前の建物を壊したい志向に辟易としつつの感想というか。

 世紀移行期の頃には、20世紀がスクラップ&ビルドの時代だとしたら、21世紀はメンテナンス&サステナビリティの時代になるのではないかなどと勝手な想像をしていたのだけど、現実はそういうわけにもいかず、目下、外れまくっている感じです。とほほ・・・。おっと、また脱線してしまったか。昨日のSANKEI EXPRESSに掲載された連載コラムです。


【鎌倉海びより】106  ゆっくりと流れる時間
 http://www.sankeibiz.jp/express/news/150623/exg1506231110001-n1.htm

 鎌倉には常設の映画館がないので『海街diary』は封切り翌日の14日、横浜で観(み)た。かつて松竹の撮影所が大船にあり、映画人もたくさん住んでいた。それなのにいまは、鎌倉を舞台にした映画を観るのにも隣町まで電車で行かなければならない。なんか変な感じだけど、まあいいか。

 『海街diary』は吉田秋生さんの同名人気コミックを是枝裕和監督が映画化した作品だ。14日は日曜だったこともあってか、客席は満員だった。観客の年齢の幅が広い。両親が家を出てしまい、残された3姉妹が古い民家で暮らす。そこに父親の訃報が届き、あれこれあって腹違いの妹が1人、同居するようになった。

 そこから、家族になる物語が始まる…高齢層はこの手の話に弱いんだよねえ~。主人公の姉妹は若い女優陣が演じているが、客席は高齢者割引のご夫婦も多かった。

 映画を観て「鎌倉いいなあ」と改めて思う。海も街も山もある。梅酒のようにゆっくりと家族も醸成されていくのかなあ…。一番下の妹すずもきっと、その時間の流れの中で新しい中学校に通い、こんな風に下校していったに違いない=写真。

 

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 吉田秋生さんの『海街diary』は月刊flowersで2006年から連載が始まり、いまも続いている。これまでに単行本が6巻。おおむね1年~1年半間隔で発行され、第6巻が出たのは昨年7月だった。おじさん層としては、少女コミック誌を書店で購入するのはさすがにためらいがあるので、ひたすら次の単行本の発売を待つ。第7巻、まだかなあ。

 海水浴の季節が近づいてきた。明治以来の大衆文化である海水浴場のにぎわいを失うことなく、安心して楽しめる「ひと夏」をどう実現するか。今年もまた、「海街」の試行錯誤が始まる。