エボラ終結 リベリアの成功広げよう

 

 本日(5月13日)の産経新聞主張(社説)です。ひとつの節目だと思うけれど、あまり論説で取り上げる新聞はなかったようですね。遠い他国の話ということなのでしょうか。かりに1件であっても帰国した人がエボラウイルスに感染していましたといったような状態になれば雰囲気は一変して何が何だか分からなくなってしまう。そうならないように(きっとなるだろうけれど)、折に触れて考え方、見方を整理しておくことが必要です(注:この主張がそうした整理に資するものなのかどうかはまた別の話。一応、参考まで)。

 

エボラ終結 リベリアの成功広げよう
 http://www.sankei.com/column/news/150513/clm1505130002-n1.html

 昨年春から深刻なエボラ出血熱の流行に襲われていた西アフリカ3カ国のうち、リベリアで流行の終結が宣言された。

 世界保健機関(WHO)によると、3月27日にリベリアで最後の患者が死亡し、翌28日に埋葬された。その後、エボラウイルス潜伏期間とされる21日間の倍の42日間にわたって経過を観察し、患者と接触があった300人以上の検体を毎週調べても新たな感染はなかったので終結宣言に至った。

 WHOが西アフリカのギニアで最初のエボラ症例を確認したのは昨年3月23日で、リベリアでは1週間後の30日に2症例が報告されている。以後、国内の流行終結までに1万564人が感染し、4716人が死亡している。昨年8、9月には毎週300人以上の感染が報告されていた。

 リベリアの成功要因についてWHOは、サーリーフ大統領の指導力、町や村の長老や宗教指導者など地元有力者の協力、国際社会の支援、国内と国際支援担当者間の調整の4点をあげている。

 だが、大統領が国家非常事態を宣言したのは8月である。町や村では当初、治療センターは「死を仕掛ける罠(わな)」であると不信の目で見られていた。国際社会の支援が本格化したのは秋以降だ。WHOがあげた成功要因は実は、感染の拡大を防げなかった初動の失敗要因でもある。

 エボラウイルスは発症した人の血液などの体液や吐瀉(としゃ)物を介して主に感染する。感染者でも発症していない人からは基本的に感染しない。患者の治療に当たる医療従事者や家庭内での介護、死者の埋葬の際の遺体との接触などを除けば、感染のリスクは小さい。

 治療や介護、埋葬の際のリスク管理が行われていれば感染の拡大は防げる。その情報を十分に伝えきれなかったことが住民の不信を招いた。感染症対策は流行の影響を受ける人たちの信頼と協力がなければ成立しない。この点は成功要因の分析とあわせ、苦い教訓として共有しておくべきだろう。

 リベリアは終結を宣言したが隣国のギニア、シエラレオネではまだ、少数だが新規感染の報告が続いている。WHOは6月中に2カ国の感染の連鎖をすべて把握したいという。完全終結はさらにその先の話になる。国際社会は引き続き、気を緩めずに流行国支援を続けていく必要がある。