目を閉じて、開く人たちへ ~ その表情のGAPを読む エイズと社会ウエブ版181

 いいお天気でしたね。鎌倉から東京遠征を敢行し、まずは代々木公園の東京レインボーフェスタ会場にあるLIVING TOGETHER計画のブースで「AIDS IS NOT OVER」のTシャツを購入。パレードコース沿いの歩道に回り、Tシャツを着てパレードを見る。

 何か、日記調は疲れますね。文体を少し変えましょう。パレードに参加しなかったのは去年のようにHIV/エイズをフィーチャーしたフロートがなかったからですが、一方で、参加した皆さんにも「AIDS IS NOT OVER」のメッセージを逆に沿道から伝えたいという少々、屈折した希望もありました。

 結果としてはどうだったかな。個人的な感想で言うと、黙殺でしょうか。ま、慣れてるけど。

 パレードに参加される皆さんには、それぞれ伝えるべきメッセージがあるからこそ参加されているのでしょうし、沿道の冴えないおじさんの着ているTシャツの、そのまたプリントされている文字にまで注意を払っている暇などは、なくて当然。メッセージの双方向性みたいなものが成立しなかったとしても、それは勝手にこちらが押しつけようとした双方向性に過ぎなかったということでもあります。

 というわけで、帰ろかな~、帰るのよそうかな~と思っていたら、なぜか入院先の病院から特別外出許可を得て、パレードの序盤部分に参加された長谷川さんと合流してしまい(偶然です)、「GAPの写真展に行くんだけど、一緒に行かない」と誘われました。

 原宿駅前のGAP原宿店で開かれている有名な『OUT IN JAPAN』の写真展ですね。とはいえ、どんな写真展なのかよく知らなかったので、会場でいただいた二つ折りのチラシから紹介文の一部を引用します。

 《「日本のLGBTをはじめとしたセクシャル・マイノリティにスポットライトを当て、市井の人々を含む多彩なポートレートを様々なフォトグラファーが撮影し、5年間で10.000人のギャラリーを目指す」という「OUT IN JAPAN」の趣旨に賛同し、創設スポンサーとしてサポートします》

 4月21日~28日にGAP原宿店イベントスペースで開かれている写真展では、その最初の分であるレスリー・キーさん撮影のポートレートがすらりと先行展示されています。長谷川さんをはじめ、ぷれいす東京の生島さん、ジャーナリストの北丸さんといった私にとっては旧知の人物も何人か含まれているのですが、皆さん、そろいもそろって「いくら写真の腕前がいいからといって、ちょっとこれはないんじゃないの」と言いたくなるほどカッコよく撮られています。

 これじゃ、本人が誤解しちゃうよ。ったく、もう・・・という不本意感はありますが、写真展そのものは視覚的表現に対する鑑賞力が著しく低い私のようなおじさん層であっても、これは素晴らしいと思うほどに感動しました。不当なまでに写真のできばえがいいポートレートとまったく同じポーズ、同じ背景で、それぞれの方が目を閉じている写真ももう一枚、壁面の一方にずらっと並べられています。これが何と言うか、目を閉じていることでひたすら内面に向かうといいますか、その内面に抱えてきたものは何だろうといったことをセクシャル・マイノリティに対する理解の低さで顰蹙を買い続けているおじさんにも深く考え込ませてしまう・・・。

 それでもって、対面の壁に展示された輝くような笑顔。目をつぶってあける・・・おそらくは一連の流れの中で撮られた一対の写真が、これほどに社会に伝える(あるいは伝えたい)メッセージを表現できるものなのか。

 

 長谷川さんには「誘ってくれてありがとう」と言い忘れていたので、ここで改めてお礼を言っておこう。ありがとうございました。短い時間でしたが、いい体験をさせていただきました。入院生活は厳しいこともたくさんあるのではないかと拝察いたしますが、応援席は大観衆であります。ここはひとつ、ピンクベア不屈の女優魂で新たなる伝説を作り上げていただくことを切に切にお願いしつつ、ささやかな応援メッセージをお送りしたいと思います。がんばってね。