【鎌倉海びより】100 「めかぶ0円」春の浜

 このゆるさが春を呼び込みます。【鎌倉海びより】、とうとう100回に到達してしまいました。引き続きよろしく。

 

【鎌倉海びより】100 「めかぶ0円」春の浜
 http://www.sankeibiz.jp/express/news/150331/exg1503311025001-n1.htm

 日照時間が少しずつ長くなり、それでもまだ風は冷たい。2月の初めの海岸は、正直に言ってお散歩を楽しむのはまだ、かなり厳しい。材木座海岸の真ん中あたりと由比ガ浜西端の坂ノ下海岸でワカメ干しが始まるのは、そんな時期からだ。

 夜明け前から沖に出ていた小さな漁船が午前中に戻ってくる。浜で待ち受けた人たちが、どっさりと積まれたワカメを大きな釜で湯がき、水にさらした後、洗濯ばさみがずらりとぶら下げられた物干し台のような場所で干していく。

 春の予告編のようなワカメ干しの光景は3月半ばまで続く。

 今年は寒かったので、砂浜をゆっくり歩く機会が少なかった。春分の日の翌22日になって、見逃しちゃったかなあと思いながらも坂ノ下海岸をぶらぶらと歩いてみると…。おお、まだやっているではないか。

 傍らには、板きれに「めかぶ100円」と書かれた看板=写真。

 

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 「買おうかなあ、どうしようかなあ」と迷っていたら、ワカメ干しの作業をしていたおじさんがやってきて「売れないなあ。もう、しようがないか」といいながら、その板きれをくるっとひっくり返す。

 裏にはなんと「タダです。メカブ0円」の文字。えっ、タダでいいの? でも、悪いから100円払うよ。

 何と言うか、気合でついつい買ってしまう。そのかわりというわけでもないが、いくらでも持っていっていいよというお言葉に甘え目一杯、ポリ袋に詰めた。

 参考までに付け加えれば、看板はしばらくすると再び「メカブ100円」に戻っていた。連載は今回で100回の節目。ご愛読ありがとうございます。海辺のこの「ゆるさ」も捨てがたく、いましばらく続けていくことにしたい。