どうなるポスト2015 国連事務総長が統合報告書

 

 21世紀初頭の国際的な開発政策の大きな指針となった国連ミレニアム開発目標MDGs)は来年2015年に最終年を迎えます。8項目の目標の中には、目標6(エイズマラリアなどの感染症対策)のようにかなり大きな成果をあげた目標もあれば、善戦健闘はしたけれど成果はもうひとつだったなあという目標もあり、あと1年を残した段階での進捗状況はさまざまです。ただし、途上国の開発や貧困をめぐる課題の解決に向けて、国際社会が協力して取り組めば、困難ではあってもなんとか状況を変えていくことはできる。そんな手応えはつかめたのではないでしょうか。

 

 国連ではいま、MDGsが終わった後、つまりポスト2015の持続的な開発に向けて、どんな枠組みが必要なのか、その議論が大詰めを迎えようとしています。残念ながらHIV/エイズ対策は初動の10年のパフォーマンスが目覚ましかったせいか、「もう、いいんじゃないの」といった他分野からの攻勢もあり、やや立ち後れ気味でした。最近は巻き返しているというか、地球規模の感染症の流行に対応することの重要性が改めて認識される流れも生まれてきているようです。西アフリカのエボラ出血熱の流行が、グローバル感染症全体に対し、「これはいま手を抜いてすませられる問題じゃないぞ」という警鐘をならす役割を果たしているのかもしれません。

 

 国連潘基文事務総長が12月4日、そのポスト2015の枠組みづくりに大きく関与する新たな報告書を発表しました。『The Road to Dignity by 2030: Ending Poverty, Transforming All Lives and Protecting the Planet』。日本語だと『2030年に向けた尊厳への道:貧困に終止符を打ち、すべての人の生活を改善し、地球をまもる』といったところでしょうか。『ポスト2015の課題に関する統合報告書』という副題があります。英文で47ページもある報告書を読んでいたら2015年など、あっという間に過ぎちゃうよと思っていたら、ありがたいプレスリリースの日本語訳が国連広報センターの公式サイトに掲載されていました。最近はなかなかフットワークがいいですね。こちらのお世話になりましょう。

 

 《国連事務総長、持続可能な開発に向けて統合報告書を発表 - The Road to Dignity by 2030 -》

 http://www.unic.or.jp/news_press/info/11173/

 

 報告書は193の加盟国が出席する総会への非公式ブリーフィングで発表されたようです。《2015年9月のサミットでの新たな枠組みに関する合意に向け、たたき台となる統合報告書》ということですね。

 

 《事務総長は統合報告書の結論で次のように述べ、加盟国に強く働きかけています。「私たちは国連の創設以来、最も重要な開発の年を迎えようとしている。私たちは『人間の尊厳および価値に関する信念を改めて確認』し、世界を持続可能な未来へ導くという国連の誓約に意味を持たせなければならない…。[私たちには]誰も置き去りにすることなく、すべての人にとって尊厳ある生活を現実のものとするため、大胆に、力強く、迅速に行動を起こす歴史的な機会と義務がある」》

 

 これまでの検討プロセスの中では、「貧困を終わらせ、繁栄の共有を達成し、地球を守り、誰も置き去りにしないこと」をねらいとする「17項目の持続可能な開発目標と169項目のターゲット」が提案されているようです。その17の目標は以下の通りです。

 

《持続可能な開発目標》

 

目標1

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

目標2

飢餓をなくし、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

目標3

すべての年齢の人の健康な生活を確保し、福祉を推進する

目標4

すべての人の包摂的で公平な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を推進する

目標5

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

目標6

すべての人に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保する

目標7

すべての人に安価で信頼でき、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

目標8

すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する

目標9

強靭で復元力のあるインフラを整備し、包摂的で持続可能な工業化を推進するとともに、イノベーションを促進する

目標10

国内と国家間の不平等を削減する

目標11

都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする

目標12

持続可能な消費と生産のパターンを確保する

目標13

気候変動とその影響に取り組むため、緊急の措置を講じる*

目標14

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

目標15

陸上生態系を保護、回復し、その持続可能な利用を推進すること、また、森林を持続可能な形で管理し、砂漠化に取り組み、土地の劣化を食い止め、逆転させるとともに、生物多様性の損失に歯止めをかける

目標16

持続可能な開発に向けて安全で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

目標17

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化させる

 

 ちょっと長くなったので、続きは後ほど。