【鎌倉海びより】92 現役の土木遺産が走る

 全長約10キロの中にトンネルあり、鉄橋あり、神社の境内の踏切あり、路面軌道あり、海の見える駅もあり・・・で飽きることがありません。本日のSANKEI EXPRESS紙に掲載された連載コラム【鎌倉海びより】の92回目です。

 

【鎌倉海びより】92 現役の土木遺産が走る
 http://www.sankeibiz.jp/express/news/141209/exg1412091120001-n1.htm

  師走の風は寒いのか、熱いのか。今年は総選挙に突入してちょっと変調気味だけれど、やっぱり寒いのかなあ~。

 世の中があまりにもめまぐるしく動くので、ついつい江ノ島電鉄江ノ電)が土木学会の選奨土木遺産に選ばれたというニュースを見落としていた。10月10日に発表があり、11月19日には藤沢市内で認定書の授与式が行われている。

 

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 全長約10キロという短い区間ながら、2~4両編成の電車が海辺をゴトゴトと走り、山間を縫い、市街地も駆け抜ける。まさに土木遺産と呼ぶにふさわしい路線というべきだろう。線路はいまも単線だ=写真。

 恥ずかしながらつい先日まで、土木遺産の認定制度というものをまったく知らなかった。すいません。土木学会が「歴史的土木構造物の保存に資すること」を目的にして2000年に創設し、毎年20件程度が選ばれているという。

 今年は新潟県糸魚川市の旧親不知(おやしらず)トンネルや兵庫県香美町の旧余部(あまるべ)橋りょう(余部鉄橋)など22件で、土木学会のサイトを見ると江ノ電については「明治期の日本における鉄道黎明期(れいめいき)の雰囲気を今に伝え、地元密着型の軌道として湘南の風景の一部となっている貴重な土木遺産」としている。

 江ノ電は1902(明治35)年に藤沢-片瀬間で開業。藤沢から鎌倉まで全線が開通したのは1910(明治43)年だった。海辺の鎌倉高校前駅、山間の極楽寺駅などは映画やテレビドラマにもよく登場する人気スポットだし、腰越駅と江ノ島駅の間は商店街を走る路面電車になっている。

 土木遺産の中には現役を引退し、「旧」となっているものも多いが、江ノ電はまさに地元の生活に密着し、観光名所としても知られる現役の遺産である。それもまた、利用者には誇らしい。