【世界エイズデー】 「流行」は終わっていない

 総選挙公示直前ということで、しょうがないのかもしれないけれど、世界エイズデーでさえも社説でエイズ対策を取り上げる新聞は極めて少ない。取り上げてろくでもないことを書かれるよりはまし・・・というようなことを言ってはいけませんね。選挙と同じで、無関心が一番こわい。そんな中、手前味噌で恐縮ですが、本日の産経新聞の主張(社説)です。こうやってアピールしないと(しても?)話題にすらならないというのも少々つらい。



世界エイズデー】 「流行」は終わっていない
 http://www.sankei.com/column/news/141201/clm1412010002-n1.html


 1988年に世界エイズデーが制定された当時、病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した人は9割以上がエイズを発症し、死に至ると考えられていた。

 いまは感染した人の体内のHIV増殖を防ぐ治療薬をいくつか組み合わせて使用する抗レトロウイルス療法(ART)の進歩で、HIVに感染しても治療さえ続けていれば、平均寿命近くまで生きていくことが可能になった。

 また、早期にARTを開始すれば、感染した人の体内のHIV量が大きく減少するため、他の人に感染する恐れも低くなった。つまり、治療による感染予防効果も最近の研究で立証されている。世界のエイズ研究者が2年ほど前から「エイズ流行の終結」を議論するようになったのはこのためだ。

 12月1日の世界エイズデーに向けて、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は「ギャップを埋めよう」を今年のテーマに掲げた。これから2020年までの5年間が勝負で、この間に90-90-90を達成する必要があるという。

 HIVに感染した人の90%が検査で自分の感染を知り、その90%が治療を受け、さらにその90%が体内のHIV量を極めて低く維持できれば、現在は年間約210万人の新規HIV感染が5年後には50万人程度に減らせるという。

 ただし、世界のHIV陽性者は推定3500万人で、このうち治療を受けている人は1300万人程度だ。国際社会が途上国の治療の普及に力を入れ、この10年余りで40倍以上に増やしたのだが、それでも陽性者全体の3分の1程度にとどまっている。90-90-90など遠く及ばない。

 だからこそ、これまでに増してこのギャップを埋める努力が必要だというメッセージなのだが、現実には「もう流行は終わったのでは」という楽観ムードが流れ、対策の強化どころか、現状レベルの継続すら危ぶまれている。

 一方、日本の国内キャンペーンは「AIDS IS NOT OVER~まだ終わっていない」をテーマに掲げている。

 国内の新規HIV感染・エイズ発症報告はここ数年、年間1500件程度で推移しており、国際的には極めて低い数値だが、減少しているわけではない。社会の関心の低下が新たな感染の拡大要因になる恐れがあるからだ。