4365 エボラ対策 理性をもって判断したい

 

 本日の産経新聞主張(社説)です。ごくごく常識的なことしか書いてありませんが、こうした常識的なことをあえて書かなければいけない時期にまた、なっちゃったのかという感じもします。

 

【エボラ対策】 理性をもって判断したい

http://www.sankei.com/column/news/141102/clm1411020001-n1.html

 国内の空港でエボラ出血熱の感染が疑われる事例が把握された場合、搭乗機の便名を公表する方針を太田昭宏国土交通相が明らかにした。国民に不安が広がっていることがその理由だという。

 エボラ流行国に滞在していた人が入国時に発熱していれば、直ちに設備の整った病院に搬送し、エボラウイルスの感染の有無を検査する。西アフリカの流行が止まらない現状では、こうした水際の対策は必要だろう。

 ただし、「不安解消」が便名公表などの合理的な理由になるとは思えない。そもそも発熱レベルでの病院搬送事例を公表すること自体、対策として有効かどうか大いに疑問がある。

 米国のニューヨークでは、ギニアでエボラ治療にあたり帰国した国境なき医師団の医師が発熱を認めた段階で、直ちに届け出た事例がある。医師は入院して治療を受けているが、その前日に地下鉄に乗っていたことから地元では一時、大きな不安が広がった。

 だが、エボラウイルスは発症以前なら他の人には感染しない。熱が出ても初期段階なら激しい下痢や嘔吐(おうと)はなく、感染の可能性は極めて低い。医師の行動は非難されるようなものではなかった。

 国境なき医師団も医療支援からの帰国者について「エボラは発症しない限りは感染せず、通常の生活が可能。エボラの疑いがない場合にまで隔離することは適切ではない」との見解を示している。

 新興感染症とはいえ、エボラはすでに病原ウイルスも、感染経路も明らかになっている。アフリカでは過去38年に25回の流行を経験しており、感染を防ぐには何をすべきなのかも分かっている。

 それでも医療基盤が極端に脆弱(ぜいじゃく)化していたり、初期の対応が遅れたりすると、今回のようなアウトブレークを招くことになる。

 ただし日本や米国は西アフリカとは条件が違う。封じ込めは完全に可能だ。それなのに社会が恐怖や不安に過剰に反応すれば、熱が出た人は非難を恐れて医療機関を避け、医療関係者は、帰国してこんな目に遭いたくないと支援を希望しなくなるのではないか。これでは逆効果だろう。

 医療支援を妨げ西アフリカの流行を長引かせるのでは、逆に国内の感染リスクを高めてしまう。どこに力を入れて対策をとるのか。理性をもって判断したい。