4361 【エボラ対策】不安や恐怖の増幅防ごう

 

 本日(10月20日)の産経新聞に掲載された主張(社説)です。ご関心がおありの方はお読みください。あまり関心がない方もできれば、ぜひお読みください。

 (「できれば、ぜひ」はちょっとおかしいかなあ。控えめに、でも強く押したいということで、よろしくお願いします)

 

【エボラ対策】不安や恐怖の増幅防ごう

 http://www.sankei.com/column/news/141020/clm1410200002-n1.html

 

 安全保障にもかかわる危機としてエボラ出血熱流行に対する国際的な懸念が広がっている。流行国への支援とともに、恐怖や不安への社会的対応が対策の大きな課題となることも、改めて認識しておきたい。

 エボラの流行にはいま、2つの懸念がある。一つは西アフリカのギニア、リベリアシエラレオネ3国の流行拡大がとまらないことだ。世界保健機関(WHO)は死者が4000人を超え、対応策をとらなければ12月には週に5000~1万人のペースで患者が増える可能性があると警告する。

 もう一つは米テキサス州の病院でリベリアから入国後に発症した患者の治療の際、看護師2人が感染したことだ。初の国内感染症例に米国社会は動揺した。

 この2つの懸念は状況を切り分けて考える必要がある。

 国境を越えた人の移動により、米国だけでなく西アフリカ3カ国の近隣国であるナイジェリアやウガンダセネガルなどでもエボラの発症が報告されているが、いずれも少数の散発的感染事例で封じ込めに成功している。

 流行国では紛争後で保健基盤が崩壊していたが、周辺国は曲がりなりにも保健基盤が維持され、機能していた。国際保健の専門家はこう指摘する。エボラは新興感染症とはいえ、病原ウイルスも感染経路も分かっている。一定の保健基盤が維持されていれば、流行の拡大は抑えられるのだ。

 米国の事例は逆に、高度に医療基盤が整った先進国でも散発的な感染が起きうることを示した。それでも、患者と接触した人をさかのぼって調べ、発症を確認したら隔離して必要な医療を提供する。そうした事後対策を丹念に積み重ねれば、流行には至らない。この点も重視しておくべきだろう。

 むしろ避けるべきは、社会不安や恐怖をいたずらに増幅させ、感染防止策がとりにくくなるような状態ではないか。致死率の高い困難な病気と最前線で闘っているのは患者であり、患者の治療や看護にあたる医療従事者である。

 病気を心配する人が安心して医療を受け、同時に医療を提供する人が感染から守られる。そのためにはどうしたらいいのか。日本国内でも、この点を基本にして医療機関の感染防護策を一層、充実させ、その延長線上で流行国支援への関心も持続させていきたい。