4348 デング熱 流行国支援が対策助ける

 

 エイズの流行を取材する中で、ずっと言い続けてきたつもりですが、20世紀後半からのこの40年近くは新興再興感染症の時代としてとらえることができます。「できます」というより、「必要があります」といった方がいいかもしれませんね。それがすべてというわけではないし、すべてだというつもりもありません。ただし、日本で暮らしていても、グローバルな新興再興感染症の時代の中で生きているという視点を持つことは、その時々の話題のあるなしにかかわらず重要なのではないかと思います。

 ・・・ということで、あえて最近の国内における直近の話題に即していえば、エボラは新興感染症デング熱は国内感染の報告が昭和20年以来という点で再興感染症として位置づけることができます。昨日、エイズ動向委員会が今年第2四半期の報告数を発表したHIV/エイズは20世紀後半以降に発生が確認された新興感染症の中で唯一パンデミック(世界的大流行)のレベルに達し、いまなお、そのパンデミックが続いている感染症です。

 本日(30日)の産経新聞に掲載された主張(社説)です。差しでがましいようですが、上記のようなことも頭の隅に置きながらお読みいただくと、さまざまなかたちで感染症対策にかかわる人たちにも(それから、感染症対策にはあまり関心がないけれど、何だかにわかに心配になってきたという方にも)参考にしていただけるのではないかと思います。

 

 デング熱 流行国支援が対策助ける
 
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140830/scn14083003080001-n1.htm

 海外渡航歴がない男女3人のデング熱発症例を厚生労働省が発表した。東南アジアなど主に熱帯、亜熱帯地域で流行するウイルス感染症で、国内感染の報告は昭和20年以来だという。

 デング熱の病原ウイルスはネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介して人に感染する。人から人へ直接、感染することはない。

 3~7日間の潜伏期間を経て高熱や発疹、頭痛などの症状が出るが、熱を下げ、脱水症状を防ぐといった対症療法で回復することが多い。重症化することは比較的、少ないという。

 厚労省によると、国内では東南アジアなどで感染し、帰国後に発症する人が年間200人前後報告されている。今回の国内感染事例は、国外で感染した人が蚊に刺され、その血液を吸った蚊から感染したケースとみられている。

 国内感染を地球温暖化と結びつける指摘もあるが、必ずしもそうとはいえない。ネッタイシマカはともかく、ヒトスジシマカなら国内に広く分布する。むしろビジネスや観光で東南アジアなどの流行地域との人の往来が多くなっていることの影響が大きいだろう。

 デング熱は世界で年間1億人前後が発症する感染症だが、日本で感染が判明する例は少ない。昨年夏には逆に、日本を旅行したドイツ人女性が帰国後に発症し、日本での感染の可能性も否定できないとの結論になった。

 このため、厚労省は各自治体に対しデング熱情報を提供し、国内感染に対する注意喚起を行っていた。情報があれば、高熱などの患者を診たときに、海外渡航経験がない患者でもデング熱の可能性を一応、疑うことができる。

 注意喚起により、患者に適切な治療を提供し、周囲への感染を防ぐきっかけにもなる。感染症例の把握はその意味で重要だ。

 日本は第二次大戦中に国内で流行を経験しているが、その後は感染を抑えてきた。今後も散発的な感染事例は把握されるだろうが、国内で直ちに流行が拡大するような可能性は小さいという。

 病原体を媒介する蚊の繁殖を抑え、保健基盤を整えることで感染症の流行を克服する。その戦後の経験を生かし、流行国の対策を支援できれば、散発的な国内感染を防ぐことにもなる。今回の経験は、それを再認識する機会として生かしたい。