4339 【エボラ対策】 ここでも積極平和主義を

 

 本日(9日)付の産経新聞主張(社説)です。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140809/plc14080903100007-n1.htm

 

【エボラ対策】 ここでも積極平和主義を 

 エボラ出血熱の流行が西アフリカで拡大している。世界保健機関(WHO)は専門家による2日間の国際緊急委員会の検討を経て8日、国際的に懸念される公衆衛生上の非常事態を宣言した。

 今年3月以降のギニア、リベリアシエラレオネ、ナイジェリア4カ国の報告数は4日現在、患者1711人、死者は932人に達している。農村部だけでなく都市部にも広がり、直近3日間だけで新規症例108例、死亡45例が報告されている状態だ。

 年内の終息は困難とみられ、1976年にアフリカで初めてエボラの流行が確認されて以来、最悪の事態となっている。

 エボラウイルスは感染した人や動物の血液、排泄(はいせつ)物、嘔吐(おうと)物などに直接、触れることで感染する。したがって治療や看病、あるいは亡くなった患者の遺体を清める際に直接、患者の血液などと接触することが感染の原因になる。

 逆に、そうした接点がなければ感染しないので、致死率は高いが感染力は弱い。今回はそれでも流行が広がり、止まらない。

 西アフリカ地域では初のエボラの流行で住民や医療機関に予防や治療の知識がなかったこと、初期症状があっても周囲の目を気にして隠してしまうこと、亡くなった人を清めて弔う習慣から遺体に触れる機会があることなどが拡大要因となったと考えられる。

 発熱などの初期症状がマラリアと似ていることから判断が遅れてしまうケースもあるという。

 現地には欧米や日本からも医療関係者が支援に入り、実際の診療や介護、現地スタッフの研修や住民への啓発活動を続けている。

 だが、診療や看護には、ガウンやマスク、ゴーグルなどで最高度の感染防止策を取りつつあたらなければならず、医療スタッフの消耗度は激しい。流行拡大とともに人材不足が深刻化しており、流行を抑えるには世界レベルの支援体制が一段と求められている。

 ウイルスの感染経路や医療基盤の状況から見て、わが国に流行が飛び火し、国内で感染が拡大する可能性は実は低い。

 ただし、油断は禁物だ。海外で事業や援助活動に携わる邦人も多い。遠い他国の出来事として傍観することなく、専門家の派遣など可能な限りの貢献を継続して果たす姿勢は、積極的平和主義の観点からも必要だろう。